次世代耐熱合金の酸化損傷メカニズムを解明 ――ニオブ合金の酸化を左右する酸化物構造と元素の役割――
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東京大学
発表のポイント
◆次世代の航空機エンジンや発電用ガスタービンへの応用が期待されるニオブシリサイド基合金について、750℃および1100℃における酸化挙動を調べました。
◆酸化によって生成するニオブ酸化物の結晶構造が、温度や添加元素によって大きく変化し、酸化速度や酸化膜の割れ・剥離、さらに酸素拡散を抑えるバリアの形成に影響することを明らかにしました。
◆ニオブ合金の酸化メカニズムについての理解を深め、将来の耐熱合金の最適化に応用することが期待されます。
本研究の概要(GPT-5.5、2026年5月13日作成)
概要
東京大学大学院新領域創成科学研究科の松永紗英助教、阿品朱弥学部学生(研究当時)、御手洗容子教授は、ニオブ合金が高温環境下で急速に損傷する酸化メカニズムを解明しました。
本研究チームは、酸素から合金を保護するように働く酸化物と、劣化につながる酸化物の両方を生成することが知られているニオブシリサイド基合金をモデル材料として用い、中温および高温で酸化試験を行いました。酸化による質量変化、酸化膜の組織、生成する酸化物の結晶構造、添加元素の分布を詳しく解析した結果、酸化によって生じるニオブ酸化物の結晶構造が温度や添加元素の種類によって変化し、酸化速度や酸化膜の割れ・剥離、さらに合金を酸素から保護する保護酸化膜の形成に深く関係することが分かりました。
本成果は、ニオブ合金の酸化劣化メカニズムを理解し、より酸化に強い高温材料を設計するための指針となることが期待されます。
発表内容
研究背景
航空機エンジンや発電用ガスタービンをより高温で動かすことができれば、燃料をより効率よく使うことができます。そのため、現在使われているニッケル基合金を超える次世代の耐熱材料として、ニオブ合金が注目されています。一方で、ニオブ合金は酸素と非常に反応しやすく、酸化によって表面が割れたり、はがれたり、場合によっては粉々に崩れたりするという大きな課題があります。これまでにも酸化を抑えるためにさまざまな元素を加える研究が行われてきましたが、添加した元素が効果を示す場合と示さない場合の違いについては分かっていませんでした。
研究の内容
本研究チームは、ニオブ酸化物の結晶構造の違いが材料特性に影響することを示した異分野の研究に着想を得て、酸化によって生じるニオブ酸化物の構造が、ニオブ合金の酸化劣化にも関係するのではないかと考えました。
そこで、ニオブ合金の酸化メカニズムを調べるためのモデル合金として、ニオブ、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、スズを含む合金を作製し、中温(750℃)と高温(1100℃)で酸化試験を行いました。その結果、酸化によって生じるニオブ酸化物の結晶構造が温度や添加元素によって変化し、それが酸化膜の割れや剥離、酸化の進行具合に深く関係することが分かかりました(図1)。また、アルミニウムを添加することで、酸素の侵入を防ぐ保護膜であるシリカ層の形成を促進すること、さらにスズは酸化膜と内部の境界付近に偏析して、酸素の侵入を妨げるバリアとして働くことも示されました。 
図1 添加元素と酸化による劣化、生成した酸化物、スズの偏析の関係
今後の展望
本成果により、ニオブ合金の酸化劣化は、単に「酸化物ができる」ことで進むのではなく、酸化物の結晶構造、添加元素の分布、酸化膜の密着性が複雑に関係して生じることが分かりました。これは、より酸化に強い高温材料を設計するための重要な指針となります。今後、航空機エンジンや発電用ガスタービンなどの過酷な高温環境で使用できる新しい耐熱合金の開発につながることが期待されます。
発表者・研究者等情報
東京大学
大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻
松永 紗英 助教
御手洗 容子 教授
工学部 マテリアル工学科
阿品 朱弥 研究当時:学部学生
論文情報
雑誌名:Corrosion Science
題 名:The roles of Nb2O5 phase evolution and solute interactions in temperature-dependent oxidation degradation mechanisms of Nb-based alloys (5月8日付掲載)
著者名:Sae Matsunaga*, Aya Ajina, Yoko Yamabe-Mitarai
DOI: 10.1016/j.corsci.2026.113898
URL: https://doi.org/10.1016/j.corsci.2026.113898

