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【インタビュー】鈴木宏二郎教授 「〜飛行機から宇宙へ。風洞がつなぐ僕の夢〜」
創成39号特集「柏から手の届く宇宙」監修者インタビュー

投稿日:2022/07/22 更新日:2022/10/24
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柏キャンパスにある、極超音速高エンタルピー風洞
極超音速風洞とそれに併設された高エンタルピー風洞から成り、秒速1,500mに達する超高速の流れと最高1500℃にもなる超高温流れを実験室で作り出す

創成39号の特集は「柏から手の届く宇宙」。新領域創成科学研究科の本拠地、東京大学柏キャンパスで行われている宇宙科学開発の研究と人材育成について特集しています。

 39号特集の監修を務めた先端エネルギー工学専攻の鈴木宏二郎教授は、最先端の宇宙開発技術の研究を行っています。極超音速高エンタルピー気体力学、宇宙輸送システム、宇宙探査工学を専門とし、近年では、展開型エアロシェル実験超小型衛星(EGG)の開発(2017年打ち上げ)や、その後継機の超小型衛星BEAKミッション用SMAエアロシェルの開発(2023年打ち上げ予定)に携わってきました。

今回は、研究者になるずっと前、幼少期から学生時代にフォーカスしてお聞きしました。

 

――鈴木先生は現在、宇宙探査に関する流体科学、飛行体システムなどの研究を行っていますが、宇宙に興味を持ったのはいつからですか。

 小学生1年生の時にアポロ11号が月面着陸に成功して大きなニュースになったんです。今思えば、それが宇宙を強く意識した最初のきっかけかもしれません。もうひとつは、アメリカのテレビシリーズ「スタートレック」が日本でも放送されていて、幼いながら一気にハマりました。白黒のテレビ画面から流れる映像を夢中で観ていたことを覚えています。その後、大学生時代には有人宇宙船スペースシャトル「コロンビア」の初飛行がありました。

そんなビックイベントを目の当たりにしてきた世代なので、宇宙好きにならざるを得ない、とても自然な流れだったと思います。

 

――子どものころから宇宙に関連する仕事につきたいと思っていたのですか。

 私が子どものころは、宇宙はまだ今みたいに身近な存在ではありませんでした。アポロ11号は大きなニュースになりましたが、アメリカの話だし、それこそSFに近いような存在に感じていました。それに比べてジェット機などの航空機は、当時雑誌などでも華やかに取り上げられていましたし、業界自体も盛り上がっていたんです。

ですので、高校時代には自然と航空関係の研究者になりたいと思うようになりました。それで航空関係を学べる大学を調べたのですが、自宅から通える範囲だと東大しかなかった。「やるしかない」と、腹を括ってがんばりました。

 

――東大時代は、どんな研究をしていましたか。

 無事、東大理科一類に合格し、工学部航空学科(現 航空宇宙工学科)に進学しました。幼いころから航空機が好きだった話を先ほどしましたが、どこが好きかと言うと「形」なんですよね。なぜこういう形になっているのかを調べていたら「空気力学」という学問分野があることを知って。

大学時代は、本郷キャンパスの低速風洞という設備で、空気抵抗を測定する実験をしていました。その後、卒業しても研究を続けたいと思い、大学院へ進みました。院生のころはちょうど国産のスーパーコンピューターが急成長して、それまで2次元が限界だった「渦」のシミュレーションが3次元でも可能になったんです。私も足繁く大型計算機センターに通い、シミュレーションに明け暮れました。毎回増えていく計算機の使用料にヒヤヒヤしながら...(笑)。

実は、今でも本郷キャンパスの低速風洞の手入れをしています。築80年の高齢施設ですが、このような実験施設が大学内にあることは珍しいので、とても恵まれていたと思います。現在、私は柏キャンパスにある極超音速高エンタルピー風洞で流体力学の研究をしていますが、振り返ってみると、私の研究はずっと風洞と共にありますね。

 

 ――航空機の研究が、現在の研究分野である宇宙につながったきっかけはありますか。

スペースシャトルの形を見て「空気力学の研究で、航空機と宇宙の両方に関わる仕事ができるかもしれない」と思いました。地球と宇宙の環境は大きく違いますが、飛行体としては考え方は同じで、あの「形」は空気力学(流体力学)が大きく影響しているんです。幼いころに憧れたあの世界が、自分の研究とつながっていると思うとワクワクしました。

 

――そこからJAXAやNASAなどで宇宙ともつながりながら研究を続けてきたのですね。現在は新領域にある鈴木研究室で学生のみなさんと一緒に研究をしていますが、研究室ではどのように研究を進めているのでしょうか。

研究室では、流体力学および気体力学、その中でも特に、太陽系探査、宇宙航行、将来型航空機に関する研究を行っています。メンバーは25名で、留学生も数人います。研究室に入ると、まずは一人ひとり自分の研究テーマを考えるところからスタートします。自分が何に興味があって何を研究したいのか、自分自身と向き合うことが大切だと思っています。それともうひとつ私が大切にしていることがあって、それは「自由な発想」です。

「1000のアイデアを出そう。990は一笑に付されても、残りの10は一考に値し、そのうち1つから芽が出ればよい。それには、自由な発想とバラエティに富む土壌を常に整備しておくこと」

これは、大学3年生の講義で学生のみなさんにいつもお伝えする言葉です。常識や固定観念から本当に自由になることはとても難しいのです。私自身も常に自分に問いかけて、トレーニングするようにしています。

 

――最後に、研究する中で一番の楽しみは何ですか。

計算のアルゴリズムを考えているときや、風洞の模型工作を頭の中でシミュレーションしているときでしょうか。アイデアを考えるのも好きで、「いいこと思いついた!」という瞬間は最高です。実際やってみるとほとんどは空振りなのですが(笑)。「そんなもの初めて見た」と言われるのは、私にとって最大の褒め言葉です。あと、やはり「形」が好きですね。いつか「究極のお気に入りの形を見つけたい」と思っています。それは新しい宇宙船の形かもしれませんし、空間に浮かんだ渦の形かもしれませんが...。幼いころから今に続く、生涯の夢です。

(インタビュー・執筆:蘭 真由子)

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鈴木宏二郎
東京大学大学院新領域創成科学研究科
先端エネルギー工学専攻 教授

東京大学工学部航空学科(現 航空宇宙学科)卒業、大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)。文部省宇宙科学研究所宇宙輸送研究系、NASAジェット推進研究所、東京大学大学院工学系研究科、文部省宇宙科学研究所宇宙探査工学研究系などを経て、現職。

趣味は美術館巡り。柏キャンパスの推しは、新領域基盤棟2階の大講義室の外観

関連イベント

新領域創成科学研究科公開シンポジウムシリーズ第3回

「Frontier Star 柏から宇宙へ ー 第11回深宇宙探査学シンポジウム ー」

2022年8月2日(火)10:20~17:00 オンライン開催

詳細は以下のページをご覧ください。

https://sympo.edu.k.u-tokyo.ac.jp/

関連ページ

新領域創成科学研究科広報誌 『創成』39号

【特集】柏から手の届く宇宙

本研究科で行っている、宇宙科学技術の研究開発と人材育成について紹介しています。ぜひご覧ください。

https://www.k.u-tokyo.ac.jp/assets/files/sousei_d/39/html5.html#page=1

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