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鈴木 宏二郎

(すずき こうじろう/教授/基盤科学研究系)

先端エネルギー工学専攻/エネルギー変換システム講座/極超音速高エンタルピー気体力学, 宇宙輸送システム, 宇宙探査工学

略歴

1985年3月 東京大学工学部航空宇宙工学科卒業
1990年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)
1990年6月 文部省宇宙科学研究所宇宙輸送研究系助手
1993年7月-1994年3月 NASAジェット推進研究所客員研究員
1995年4月 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻助教授
1998年4月-2000年3月 文部省宇宙科学研究所宇宙探査工学研究系客員助教授
1999年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻助教授
2008年9月 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授

教育活動

大学院(新領域創成科学研究科):流体科学基礎論、高エンタルピー流体科学論
大学院(工学系研究科):極超音速熱空気力学、数値流体力学II
工学部航空宇宙工学科:空気力学第二A、空気力学第二B、空気力学第五

研究活動

主に宇宙輸送システムや宇宙探査に関する極超音速高エンタルピー(超高速超高温)流体(文献1)および飛行体システムの研究を行っています。

1)膜面を利用した“やわらかな”宇宙飛行体について:
 飛行体は“剛”なものであると言う常識を捨てると、新しい可能性が見えてきます。巨大な膜状の傘を展開し、ふわりと大気中を飛行できれば、空力加熱を大幅に低減し、安全かつ低コストの宇宙輸送機や惑星探査機ができるはずです。このような夢を抱きながら研究を進めています。(文献2)



膜面エアロシェルを持つロケット構想(左)とJAXA大気球を用いた落下飛行実験(右)(太平洋に向かって落下中の写真)

2)将来型太陽系探査機に関する研究:
 将来の革新的太陽系探査衛星技術の創造に向け、気体力学を利用した新しい探査機システムに関する研究を行っています。エアロキャプチャ(惑星大気圏での空気抵抗を利用した軌道変換)技術、ソーラープローブ(太陽コロナに突入する探査機)(文献3)、ソーラーセイルや磁気セイル(太陽光や太陽風を利用した宇宙帆船)、惑星大気圏突入時の熱防御システムなど様々なアイデアについて研究しています。



ウェイブライダー(衝撃波の波乗り)を用いた極超音速旅客機の流体シミュレーション

3)非平衡気体力学に関する研究:
 流体が見せる様々な現象は、熱力学的平衡(ボルツマン分布)からの“ずれ”が引き起こしているとも言えます。分子の速度分布関数レベルでの熱化学非平衡気体力学モデル構築を目指した並列型スーパーコンピュータによる数値解析や、相対論的速度の分子気体流れシミュレーション(文献4)、ICP(誘導結合プラズマ)による希薄高速プラズマ風洞を用いた実験(文献5)などを行っています。
4)極超音速旅客機に関する研究:
 マッハ5を超える超高速で飛行する極超音速旅客機の実現を夢見て、飛行体まわりの高速流に関する研究を流体計算機シミュレーション(CFD)と風洞実験の双方から進めています。

文献

1) 久保田, 鈴木, 綿貫, "宇宙飛行体の熱気体力学", 東京大学出版会 (2002年10月).
2) 山田, 鈴木: 柔構造周りの超音速流れと膜面エアロシェル宇宙輸送機, ながれ, 24, pp. 265-272 (2005年).
3) Suzuki, K.: Numerical Study of Behavior of Outgas from Heat Shield of Solar Probe, J. Spacecraft and Rockets, 43, pp.973-981 (2006年).
4) Yano, R., Suzuki, K. and Kuroda, H.: Numerical Analysis of Relativistic Shock Layer Problem by Using Relativistic Boltzmann-kinetic Equations, Physica A, 381, pp. 8-21 (2007年).
5) Takama, Y. and Suzuki, K.: Spectroscopic Diagnostics of Thermochemical Nonequilibrium Hydrogen Plasma Flow, J. Thermophysics and Heat Transfer, 21, pp. 630-637 (2007年).

その他

日本航空宇宙学会、AIAA(米国航空宇宙学会)各会員。
日本航空宇宙学会空気力学部門委員(1995-1996年度、2001-2002年度)、日本航空宇宙学会評議員(1997-1999年度)、日本航空宇宙学会論文集編集委員(1999-2000、2005-2007年度)、日本航空宇宙学会理事(2002-2003年度)、宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)組織委員会各種委員幹事等(1995年より隔年)等。

将来計画

今後も、"宇宙"と"流れ"をキーワードに、遠い将来を見つめつつ、新しい提案ができるような研究をやっていきたいと考えています。その際に、2007年から柏キャンパスにて運用を開始した極超音速高エンタルピー風洞(マッハ数7,8)は強力な研究ツールとなるでしょう。





柏風洞マッハ7気流中でロケット模型に生じた衝撃波の様子(シュリーレン法)

教員からのメッセージ

研究とは楽しいものです。まずは、自分の打ち込めるテーマを見つけること。そして研究の過程で「わからなかったことがわかる」という喜びを知って下さい。また、なじみの専門分野に固執しない勇気も必要でしょう。一見関係なさそうな現象であっても、実は見えない糸で繋がっており、そこから研究テーマを見つめなおすことの大切さを私自身、最近になって痛感しています。“学融合”の新領域創成科学研究科において、自由な発想によるチャレンジで自分の力と運を試してみるアプローチを大いに歓迎します。

ホームページのURL

https://daedalus.k.u-tokyo.ac.jp/laboratory/index.html