研究成果

国際バイオバンク横断解析でゲノムと環境の相互作用を解明 ――相互作用のメカニズム解明・個別化医療・創薬に貢献――

投稿日:2026/01/29
  • 研究成果

東京大学
大阪大学
理化学研究所
愛知県がんセンター
国立がん研究センター

概要

東京大学大学院医学系研究科遺伝情報学の難波真一助教、岡田随象教授(兼:大阪大学ワクチン開発拠点先端モダリティ・DDS研究センター 教授、大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学 教授(研究当時)、理化学研究所生命医科学研究センター チームディレクター)、東京大学医科学研究所 附属ヒトゲノム解析センター シークエンス技術開発分野の松田浩一特任教授(兼:同大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻クリニカルシークエンス分野 教授)、愛知県がんセンター研究所がん予防研究分野の小柳友理子主任研究員、松尾恵太郎分野長、国立がん研究センターがん対策研究所の山地太樹室長、岩崎基部長、澤田典絵部長らによる研究グループは、日本人集団および欧米人集団440,210人を用いて、ゲノム全体に存在する数百万箇所の遺伝子多型(注1)に対して遺伝子–環境交互作用(G×E)を網羅的に調べました。その結果、ヒト疾患形質(注2)の個人差に関連する94個のG×E効果を同定し、多様な集団からなる539,794人を用いてG×E効果の再現性および集団間での共通性を評価しました。

個々のG×E効果を調べることで、従来のゲノムワイド関連解析(GWAS、注3)では見逃されてきた遺伝的効果が明らかになりました。また、疾患による食生活の変化がG×E効果をもたらすという予期しない例がみられ、G×E効果は注意深く解釈する必要があることがわかりました。ゲノム全体のG×E効果はヒト疾患形質の個人差の一部を形作っており、G×Eを考慮することでヒト疾患形質の予測精度が改善しました。さらに、G×E効果は遺伝的効果の変動に潜む生物学的メカニズムを捉えていました。最後に、代謝物(メタボローム、注4)に対するG×E解析を実施し、脂質代謝において遺伝的効果の正負が男女で異なる例を複数同定しました。

本成果は、ゲノムと環境の相互作用がヒトの個人差の形成に関わることを示すものであり、疾患の分子メカニズム理解やゲノム個別化医療(注5)・創薬につながると期待されます。

本研究は2026年1月28日午前11時(米国東部標準時)に国際科学誌Natureに掲載されました。

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大規模解析によりG×E効果の全体像を解明
ワイン、食事、運動、性別のアイコンの出典:https://phosphoricons.com/; MIT license

(注1)遺伝子多型
ヒトゲノム上に存在する塩基配列の個人差のうち、特にヒト集団中に普遍的に存在する(概ね1%以上)個人差を指す。

(注2)ヒト疾患形質
疾患罹患の有無および、身長・体重・血圧・採血結果などを含む、様々な個々人の性質や特徴。

(注3)ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study: GWAS)
遺伝子多型と形質との関連を、ゲノム全域にわたって網羅的に探索する解析。現在の一般的なGWASでは、ゲノム全域で数百~数千万に及ぶ遺伝子多型が解析に用いられる。

(注4)メタボローム
生体内に含まれる様々な代謝物質の総称。

(注5)ゲノム個別化医療
ゲノムの個人差に基づいて個々人の疾患リスクを予測し、最適な医療を提供することで疾患の予防や早期発見を行う試み。

論文情報                                          

雑誌名: Nature

題 名:A Cross-population Compendium of Gene–Environment Interactions

著者名: Shinichi Namba*, Kyuto Sonehara, Yuriko N Koyanagi, Takezo Kikuchi, Takafumi Ojima, Ryuya Edahiro, Go Sato, Taiki Yamaji, Yoshihiko Tomofuji, Hiroyuki Ueda, Kenichi Yamamoto, Yosuke Ogawa, Ken Suzuki, Akinori Kanai, Shinichi Higashiue, Shuzo Kobayashi, Hiroki Yamaguchi, Yasunobu Nagata, Yasushi Okazaki, Naoyuki Matsumoto, Kenta Motomura, Hidenobu Koga, Asahi Hishida, Hiroaki Ikezaki, Megumi Hara, Mako Nagayoshi, Isao Oze, Shiori Nakano, the BioBank Japan Project, Yoshiya Oda, Yutaka Suzuki, Motoki Iwasaki, Norie Sawada, Keitaro Matsuo, Takayuki Morisaki, Toshimasa Yamauchi, Takashi Kadowaki, Koichi Matsuda, and Yukinori Okada*
*責任著者

DOI: 10.1038/s41586-025-10054-6

URL: https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00374.html

詳しくは、東京大学医科学研究所ウェブサイトをご覧ください。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00360.html

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