アゲハ蝶型極小機「Ageha Petit」宇宙へ―月面ベースキャンプの構築へのさらなる一歩―
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東京大学大学院新領域創成科学研究科
発表概要
東京大学大学院新領域創成科学研究科の佐藤淳准教授らの研究チームが制作した、アゲハ蝶の形を模した極小の作品「Ageha Petit(アゲハ・プティ)」が、日本時間2025年6月21日にSpaceXのFalcon 9 Transporter 14ロケットにより打ち上げられる予定です。
ヨーロッパのSpace Renaissanceが主催する、宇宙をアートギャラリーと見立て、1cmのアート作品群を打ち上げる企画「Space Renaissance 4 All Gallery」の一つとして、The Exploration Companyの再利用型コンテナ「Nyx」の試験飛行「Mission Possible」に搭載されます。
今回打ち上げられるAgeha Petitは、わずか1cm、質量0.10gという驚異的な小型・軽量な設計で、アゲハ蝶のような折り畳み式の羽根を備えた多面体のボディを持ちます。このボディには、現在佐藤淳研究室が九州大学や建設系企業と取り組んでいる月面ベースキャンプ開発(注1)の構造物である折りたたみ式ソーラーパネルや居住モジュール、建設系の技術を駆使して薄型太陽電池をタープのように広げる形態、といった技術が盛り込まれています。
Ageha Petitは、透明なポリカーボネイト製の多面体ボディと、太陽電池に使用されるペロブスカイトを塗布したガラス、カプトン、ポリカーボネイトからなる5枚の折り畳み式羽根で構成されています。特徴として、世界最小クラスの青色LED点灯機能と、ハサミムシの羽根のメカニズムをアゲハ蝶型に応用した展開可能な羽根が挙げられます。今回の取り組みは、宇宙の過酷な環境下で、機体に使用された素材や機構の耐久性を検証すること、宇宙を数周回って地球へ帰還後、機体の損傷度合い、羽根の再折り畳み機能、LEDの点灯状況を確認することによって、将来的に月面に建設される居住拠点や発電施設のための基礎技術を検証する、極めて重要なステップとなります。
左:「Ageha Petit(アゲハ・プティ)」(写真:佐藤淳)
右:世界最小クラスの青色LEDを点灯させたAgeha Petit(写真:佐藤淳)
左:右上端のスロットに格納されたAgeha Petit(写真:https://www.sr4allgallery.com/)
右:作品を収める手のひらサイズのアートギャラリー(写真:佐藤淳)
(注1)「月面に構築するベースキャンプの開発」(2024/2/20)
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/science/10805.html
発表者・研究者等情報
東京大学大学院新領域創成科学研究科
佐藤 淳 准教授
研究助成
本研究は、国土交通省および文部科学省の委託事業である「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」(STARDUST PROGRAM)の一環として実施されました。
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