記者発表

金星大気客観解析データセット「ALERA-V」を一般公開 ―金星探査機「あかつき」の観測を世界初の「標準データ」として公開へ。地球並みの詳細な気象解析を可能に―

投稿日:2026/05/20
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慶應義塾大学
京都産業大学
東京大学大学院新領域創成科学研究科
神戸大学
京都大学
国立研究開発法人理化学研究所

慶應義塾大学自然科学研究教育センターの藤澤由貴子研究員、同大学法学部の杉本憲彦教授、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の村上真也主任研究開発員、京都産業大学理学部の高木征弘教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の今村剛教授、神戸大学大学院理学研究科のはしもとじょーじ教授、樫村博基准教授、林祥介名誉教授、国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センターの三好建正チームプリンシパルらの研究チームは、金星探査機「あかつき」(※1)の観測データとスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」(※2)を用いた数値シミュレーションを融合させた、金星大気客観解析データセット(気象データセット)(※3)「ALERA-V version 1.0」を構築・公開しました。
本研究チームは2022年に、地球の気象予報や気象学研究で用いられているデータ同化手法(※4)を金星大気大循環モデル(※5)に導入し、「あかつき」による高解像度・高頻度の水平風速データを数値モデルに取り込むことに成功しています。今回の論文では、本データセットの作成手法、品質評価、データ形式および利用方法を詳細に記述し、世界中の研究者が即座に高度な解析を行える「オープンな標準データセット」として構築しました。地球や火星以外の惑星において、全球規模の客観解析データセットが一般公開されるのは世界初の試みです。
本データの公開により、地球大気に対して行われてきた詳細な気象構造の解析手法が、金星においても可能となり、金星大気の力学的な仕組みの解明が大きく進展することが期待されます。本研究成果は、データ論文として国際学術雑誌『Geoscience Data Journal』に2026年5月12日付でオンライン掲載されました。なお、データセット本体はJAXAのデータ公開サイト「DARTS」から参照できます。

0029944_a ▲あかつきの観測データ (observation) と AFES-Venus による数値シミュレーションの予報データ (forecast) を、データ同化手法 LETKF により統合するしくみ。金星大気のより「確からしい」状態 (analysis) を時空間的に再構成した客観解析データALERA-Vの公開は、世界初の金星大気のオープンデータ化である。

原論文情報

“ALERA-V version 1.0: an objective analysis dataset of the Venus atmosphere”,
Yukiko Fujisawa, Shin-ya Murakami, Norihiko Sugimoto, Nobumasa Komori, Masahiro Takagi, Takeshi Imamura, Takeshi Horinouchi, George L. Hashimoto, Masaki Ishiwatari, Takeshi Enomoto, Takemasa Miyoshi, Hiroki Kashimura, Toshiki Matsushima, Yoshi-Yuki Hayashi, 
Geoscience Data Journal
doi; 10.1002/gdj3.70080

用語説明

※1 あかつき
日本の金星探査機。金星大気の謎を解明することを目的として開発され、日本の惑星探査機として初めて地球以外の惑星の周回軌道への投入に成功した。2010年5月21日に打ち上げられたが、同年12月7日の金星周回軌道投入には失敗し、その後は太陽周回軌道で運用された。2015年12月7日に2度目の試みで金星周回軌道投入を成功させ、2024年まで観測を実施した。。複数の波長帯で観測可能なカメラを搭載し、金星大気の三次元構造や時間変動の観測を行っている。長期にわたり観測を継続し、金星大気の理解に大きく貢献してきた。

※2 地球シミュレータ
海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用するスーパーコンピュータ。地球全体の気候変動や大気・海洋循環などを高精度にシミュレーションするために開発され、地球科学分野における大規模数値計算の基盤として広く利用されている。

※3 客観解析データ
データ同化により、数値シミュレーションモデルと観測データを統合して得られるデータセット。地球においては「再解析データ」とも呼ばれ、気象機関などによって全球規模の気候・大気状態の推定データとして公開・提供されている。

※4 データ同化
数値シミュレーションモデルに観測データを統合し、より現実に近い状態を推定する手法。地球では主に天気予報や季節予報の初期値作成に用いられ、予測精度の向上に貢献している。本研究では、観測によってしか得られない金星大気の情報をモデルに組み込むことで、観測が困難な領域(高度・緯度経度・時間)における大気状態の推定や未知現象の解明を目指している。このために、海洋研究開発機構の地球大気大循環モデルAFES(Atmospheric general circulation model for Earth Simulator)および同化手法LETKF(Local Ensemble Transform Kalman Filter)を金星に適用し、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」上で実行する金星大気大循環モデルAFES-Venusと金星データ同化システムALEDAS-Vを開発した。

※5 大気大循環モデル
流体力学や熱力学の方程式に基づき、大気の流れや温度・湿度の変化を数値的に計算するためのコンピュータモデル。数日から年々変動といった時間スケールの大気現象をシミュレーションし、そのメカニズムの理解や予測可能性の評価に用いられる。

詳細は、慶應義塾大学ウェブサイトをご覧ください。
URL:https://www.keio.ac.jp/ja/press-release/20260520-press-01/

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