記者発表

東京大学と核融合開発に関わる民間企業8社が社会連携講座を開設―フュージョンエネルギーの早期実現に向けて、学術・技術体系の構築と人材育成を産学連携で推進―

投稿日:2025/04/25 更新日:2025/04/25
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東京大学大学院新領域創成科学研究科
Starlight Engine株式会社
京都フュージョニアリング株式会社
電源開発株式会社
日揮株式会社
株式会社フジクラ
古河電気工業株式会社
丸紅株式会社

国立大学法人東京大学(総長 藤井 輝夫)、およびStarlight Engine株式会社(代表取締役社長 世古 圭)、京都フュージョニアリング株式会社(代表取締役社長 小西 哲之)、電源開発株式会社(代表取締役社長 社長執行役員 菅野 等)、日揮株式会社(代表取締役社長執行役員 山口 康春)、株式会社フジクラ(取締役社長CEO 岡田 直樹)、古河電気工業株式会社(代表取締役社長 森平 英也)、丸紅株式会社(社長 大本 晶之)と他1社(以下、民間企業8社)は、「フュージョンシステム設計学」社会連携講座を2025年5月1日(木)に開設します。

◆社会背景・課題
近年、フュージョンエネルギー(※1)の早期実現を目指し、世界中で発電実証に向けた競争が激化しています。

日本も内閣府の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づく取り組みを加速することで、世界に先駆けて2030年代の発電実証の達成を目指しており、民間でもStarlight Engine株式会社等が推進するフュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」(※2)などが始動しています。
一方で、発電実証やその先のフュージョンエネルギーの実現にはプラントの総合設計と設計学が必要不可欠です。フュージョンプラントの構成は、閉じ込め方式、用途(試験、商用発電、RI製造、工業用熱源など)、規制法・規格に大きく左右されますが、現在これらの設計を支える学術体系、技術体系はいまだ構築段階にあります。また、技術開発のスピードを維持・加速させるためにも、フュージョンエネルギーに携わる次世代人材の戦略的な育成が喫緊の課題となっています。

◆「フュージョンシステム設計学」社会連携講座について
社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について、大学と民間企業または研究機関などの学外機関が、それぞれの技術・知見を活かして共同で研究を実施する制度です。
「フュージョンシステム設計学」社会連携講座では、核融合研究の第一人者である東京大学大学院新領域創成科学研究科の江尻晶教授を担当教員とし、2025年4月1日に新設した同研究科附属フュージョンエネルギー学際研究センターとともに、フュージョンプラントの設計について学術としての基礎を築くとともに、フュージョンプラントを構成する以下の要素などについて、産学連携で取り組みます。

・フュージョンシステムの高度化に向けた革新技術の研究
・フュージョンエネルギーの多様な応用可能性の検討
・法規制・規格基準の整備状況を踏まえた施設・機器の要件とその確立に関する検討
・その他、フュージョンエネルギーの実用化、社会実装にかかわる課題

◆今後の展望
東京大学と民間企業8社は、産学連携による社会連携講座を開設し、それぞれの専門領域を集結します。そして、現在フュージョンに関連する勉学を志している学生とともにフュージョンシステム設計に関する研究を推進し、これらの設計を支える学術体系および技術体系の整備と、フュージョンエネルギーの早期実現を目指します。同時に、フュージョンネルギー人材を育成し、産業界の発展に貢献していきます。

(※1)フュージョンエネルギー
水素などの軽い原子核同士が高温・高圧下で融合して別の重い原子核に変わる際に発生する「核融合エネルギー」のことであり、カーボンフリーでかつ燃料が偏在しないため、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障の観点で期待されている大規模集中型エネルギー源です。連鎖反応や爆発のリスク、高レベル放射性廃棄物がなく安全性が高いとされています。

(※2)フュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」
FASTプロジェクト(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)は、燃焼プラズマからフュージョンエネルギーを取り出し、そのプラズマ維持と工学的な課題を統合的に実証する、世界で初めてのプロジェクトです。D-T核融合反応(重水素(D)と三重水素(T)の原子核が融合する反応)で5万〜10万kWの出力、1000秒の放電時間を目指しています。

◆東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 江尻晶からのコメント
このたび、Starlight Engine社をはじめとする民間企業8社とともに、社会連携講座を開設することを嬉しく思います。フュージョンエネルギーは脱炭素の切り札であり、次世代の持続的な社会活動に大きく貢献することが期待されています。日本の研究者が長年にわたり研究に携わってきた核融合研究が、いよいよ社会実装されていくフェーズとなったことに喜びを覚えるとともに、これを後押しする本取り組みが意義のあるものとなるよう尽力してまいります。

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