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省力・低コストで電子顕微鏡画像からオルガネラを検出する方法を開発

投稿日:2015/01/15
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発表者

馳澤 盛一郎(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 教授)
朽名 夏麿(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 助教)
桧垣 匠(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 特任助教)
秋田 佳恵(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 特任研究員)

 

発表内容
細胞内のオルガネラの形や分布を正確に知るためには透過型電子顕微鏡による観察が不可欠です.近年の電子顕微鏡装置や画像処理技術の発達により,組織レベルの広域に渡って高解像度の電子顕微鏡画像を取得できるようになってきました.このように膨大な情報を含む画像データは新知見をもたらす一方で,あまりに画像が巨大なために,例えばオルガネラの数や分布を調べる,といった研究者が目視で行う作業にかかるコストが大幅に増大していることが研究現場で問題になっていました.

この問題を解決するために,東京大学大学院新領域創成科学研究科の桧垣匠特任助教,朽名夏麿助教,秋田佳恵特任研究員,馳澤盛一郎教授は,理化学研究所環境資源科学研究センターの豊岡公徳上級研究員らのグループ,日本女子大学理学部の永田典子教授らのグループとの協同で,透過型電子顕微鏡画像からオルガネラを半自動的に検出する新しい画像解析手法を開発しました.本手法は画像情報を縮約したマップを研究者に提示することで,目視でのオルガネラの指定にかかる労力を軽減しつつ,目的のオルガネラを正確かつ広範囲に渡って検出することができます(図1).本手法の有用性はミトコンドリア,葉緑体,ゴルジ体など複数種のオルガネラで実証されました(図2).

本手法により,さまざまな研究分野において電子顕微鏡画像が省力・低コストで解析され,データの解釈が飛躍的に加速することが期待されます.この成果は2015年1月15日に英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました.

 

発表雑誌
雑誌名:「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)
論文タイトル:「Semi-automatic organelle detection on transmission electroln microscopic images」
著者: T. Higaki*, N. Kutsuna, K. Akita, M. Sato, F. Sawaki, M. Kobayashi, N. Nagata, K. Toyooka, S. Hasezawa
DOI番号: 10.1038/srep07794
論文のリンク:http://www.nature.com/srep/2015/150115/srep07794/full/srep07794.html

 

問い合わせ先
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻
特任助教 桧垣 匠
Tel: 04-7136-3708
E-mail: higaki@k.u-tokyo.ac.jp

 

図1.開発手法の模式図.解析対象の画像から類似の部分をまとめたマップを研究者に提示する.研究者は画像をくまなく見ることなく,マップに対してオルガネラを指定するだけで,迅速かつ正確にオルガネラを元々の画像から自動検出することができる.

 

図2.植物組織画像における葉緑体の検出例.(左)解析対象とした透過型電子顕微鏡画像.左上は葉緑体の拡大図.(右)検出結果.緑色で研究者による目視での検出結果,赤枠で本開発手法による検出結果を示した.