東京大学大学院新領域創成科学研究科

PROSPECTUS

教員紹介

小野 亮 (おの りょう/教授/基盤科学研究系)

先端エネルギー工学専攻/システム電磁エネルギー講座/プラズマ応用工学

略歴

1995年3月東京大学工学部電気工学科卒業
2000年3月東京大学大学院工学系研究科電気工学博士課程修了(工学博士)
2000年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科助手
2003年10月産業技術総合研究所(爆発安全研究センター)
2005年4月東京大学高温プラズマ研究センター助教授
2008年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授
2019年4月より現職

教育活動

大学院:プラズマ計測法、プラズマ応用工学
工学部電気電子工学科:電気磁気学、電磁界応用工学、電離気体論

研究活動

 活性種、励起種、イオンなど様々な反応種を含むプラズマは、その高い反応性を生かして、マテリアルプロセシング、環境、バイオ医療、エネルギー、光源など、身近なところから最先端技術まで広く利用されている。本研究室では、大気圧環境下で発生させる大気圧プラズマの応用と基礎研究に取り組んでいる。

1) プラズマ反応の基礎研究(プラズマ計測とシミュレーション)
 プラズマで起きている反応を調べる基礎研究を行っている。プラズマ中の様々な活性種や電子密度のレーザー計測および、計測結果を再現できるプラズマシミュレーションの開発を行っている(文献1-4)。活性種の生成消滅反応を理解し、プラズマの物理化学過程の全貌を理解するのが最終的な目的である。

2) プラズマ医療(がんの免疫治療)
 プラズマには、癌や創傷を治療する効果がある。 我々はマウスを使った動物実験で、プラズマをがんの免疫治療に使える可能性を世界で初めて示した(文献5, 6)。プラズマをマウスの腫瘍に照射すると、マウスのがんに対する免疫が高まり、プラズマを照射していない別の腫瘍にも免疫による抗腫瘍効果が生じる。この研究を進めるとともに、免疫の専門家との共同研究で機序の解明にも取り組んでいる。

3) プラズマ航空宇宙工学応用
 プラズマを航空機の翼につけると、電離や解離などの反応に伴い翼周りの気流を制御できる。プラズマを用いた流体制御技術は電気制御であるため制御性が良く、装置が簡便で重量が少なくて済むといった特徴がある。小型風洞で実験を進めるとともに、将来はドローンや火星探査機への応用も見据えている。もう一つ、将来の火星有人探査を見据えて、火星大気のCO2をプラズマで分解して、酸素と帰還燃料用COを生成する研究も行っている。

4) プラズマ表面処理
 プラズマによる表面処理や医療応用における、OHやOなどの特定の活性種の表面処理効果を調べるため、多くの種類の活性種が同時に生成されるプラズマではなく、真空紫外光を用いた光解離反応で特定の活性種のみを生成し、これを表面に照射してその活性種の処理効果を調べる研究を行っている(文献7)。この手法を利用して、活性種表面反応のモデリングとシミュレーションも行っている。

5) その他の応用研究
 上記以外にも、これまでプラズマを用いた多くの研究に取り組んできた。環境汚染ガス処理、水処理、プラズマ支援燃焼、プラズマ着火、色素増感太陽電池の表面処理、半導体プロセスなどがあげられる。今後も、プラズマや活性種を用いた様々な応用研究に取り組んでいく。

文献

1) R. Ono: Optical diagnostics of reactive species in atmospheric-pressure nonthermal plasma, J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 49, No. 8, 083001 (2016) (invited Topical Review; Highlights of 2016 in J. Phys. D).
2) S. Yonemori and R. Ono: Flux of OH and O radicals onto a surface by an atmospheric-pressure helium plasma jet measured by laser-induced fluorescence, J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 47, No. 12, 125401 (2014) (Highlights of 2014 in J. Phys. D).
3) A. Komuro and R. Ono: Two-dimensional simulation of fast gas heating in an atmospheric pressure streamer discharge and humidity effects, Vol. 47, No. 15, 155202 (2014) (Highlights of 2014 in J. Phys. D).
4) Y. Inada, K. Aono, R. Ono, A. Kumada, K. Hidaka and M. Maeyama: Two-dimensional electron density measurement of pulsed positive primary streamer discharge in atmospheric-pressure air, J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 50, No. 17, 174005 (2017).
5) K. Mizuno, K. Yonetamari, Y. Shirakawa, T. Akiyama, and R. Ono: Anti-tumor immune response induced by nanosecond pulsed streamer discharge in mice, J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 50, No. 12, 12LT01 (2017) (invited; Highlights of 2017 in J. Phys. D).
6) K. Mizuno, Y. Shirakawa, T. Sakamoto, H. Ishizaki, Y. Nishijima, and R. Ono: Plasma-induced suppression of recurrent and re-inoculated melanoma tumors in mice, IEEE Trans. Radiat. Plasma Med. Sci., Vol. 2, No. 4, pp. 353-359 (2018).
7) R. Ono and S. Murakami: Quantitative measurement of the effect of OH radicals on the surface treatment of polypropylene, Plasma Process. Polym., Vol. 17, No. 7, e2000024 (2020).

その他

静電気学会、電気学会、応用物理学会、プラズマ・核融合学会、日本燃焼学会、日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会、IEEE各会員。 静電気学会理事 (2009~)等。

将来計画

本研究室では、プラズマの高い反応性を使った応用技術の開発をめざし、計測とシミュレーションに基づくプラズマ反応の基礎研究をベースとした幅広い応用技術開発を展開していきます。この他、新しい研究テーマにも意欲的に取り組んでいきます。

教員からのメッセージ

プラズマは、ここで紹介した他にも様々な応用が考えられます。プラズマはエネルギー・環境・バイオ医療・材料など多くの技術に関連したキーテクノロジーです。このような異分野も含めた新しいテーマの探求が好きな人、あるいは高電圧工学、レーザー分光計測、荷電粒子や化学種の反応、流体力学を駆使したプラズマ反応の基礎研究等に興味のある人、お待ちしています。