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石原 広恵

(いしはら ひろえ/准教授)

サステイナブル社会デザインセンター/社会理論、制度派経済学、クリティカル・リアリズム、共有資源、生態系サービス評価

略歴

1998年 東京外国語大学外国語学部、卒業
2001年 一橋大学大学院社会学研究科地球社会専攻修士課程修了
2003年 国連環境計画(UNDP) イエメン事務所環境部 勤務
2007年 ケンブリッジ大学土地経済学部環境政策専攻修士課程修了
2007年 ケンブリッジ大学土地経済学部博士課程入学
2008年 国連大学高等研究所・Ph.D. Fellow
2012年 総合地球環境学研究所・研究員
2016年 ケンブリッジ大学土地経済学部博士号取得
2016年 東京大学大学院農学生命科学研究科・特任研究員
2018年 東京大学大学院農学生命科学研究科・助教
2021年5月より 現職

教育活動

新領域創成科学研究科:日本から考えるサステナビリティ学、サステナビリティのマネジメント・政策学 農学生命科学研究科:農学国際特論、国際水産開発学特論

研究活動

1. 生態系サービス評価
近年、生態系サービスの評価の枠組みは、文化がどのように人間社会と生態系(自然)との関係を規定してきたかを十分に把握できていないと批判されるようになってきた。従来のミレニアム生態系評価などでは、経済的な評価がしやすいサービス(例えば、レクリエーションやエコツーリズムなどの価値)のみが評価されてきた。このような批判に答える形で、生態系サービスを「自然がもたらす人間社会への恵み(Nature’s Contribution to People)」と捉え直す動きが国際的に広まっており、それに貢献する活動を行なっている。

2. コモンズ研究
共有資源とはコモンズとも呼ばれ、一人が使用するとその資源が減るものの、他人の使用の排除が難しいような資源を指している。このような資源においては、個人の所有権の確立が難しいため、個々に資源を最大限利用しようとするインセンティブが働き、その結果、「コモンズの悲劇」を招くと論じられてきた。しかし、実際には多くの事例では、それぞれの共同体が自主的に管理を実施することで、持続的に資源を利用してきた。本研究では、社会学の理論を応用しつつ、どのようにこのような管理が可能であるのかを明らかにしている。

3.水産物の認証制度や持続可能なサプライチェーンに関する研究
認証制度は、市場を通じて持続性を担保する仕組み(Market-based Approach)と言われ、消費者が、持続性が担保された認証水産物を通常の水産物よりも高い価格(プレミア価格)で購入するエシカル消費を行うことによって成り立っていると、新古典派の経済学理論からは論じられてきた。しかし、日本やインドネシアの水産物市場においては、認証を取得してもプレミア価格がつかない。そこで、本研究では、このようにプレミア価格がつかない市場においても認証制度が徐々にではあるが広がっていることに注目し、ステークホルダーの視点から実態解明を行なっている。

文献

(1) Ishihara H., Tokunaga K. and Uchida H. (2021) Achieving multiple socio-ecological institutional fits: the case of spiny lobster co-management in Wagu, Japan. Ecological Economics 181, https://doi.org/10.1016/j.ecolecon.2020.106911
(2) Blandon A. and Ishihara H. (2021) Seafood Certification Schemes in Japan: Examples of Challenges and Opportunities from Three Marine Stewardship Council (MSC) Applicants. Marine Policy 123, https://doi.org/10.1016/j.marpol.2020.104279
(3) 石原広恵(2020)「5章、日本の伝統的な漁業管理を国際的な視点で評価する:オストロムの設計原理の視点から」、八木信行編『水産改革と魚食の未来』、p.63-80、恒星社厚生閣
(4) Ishihara H. (2018) Relational values from a cultural valuation perspective: how can sociology contribute to the evaluation of ecosystem services?. Current Opinion on Environmental Sustainability. 35, p.61-68
(5) 石原広恵(2018)『水産物の認証制度とその政治性』、水産振興、第607号、p.1-50
(6) Ishihara H. and Pascual U. (2012) Capital and Collective Action in Environmental Governance: What are the missing links?. in E. Broussaeu, T. Dedeurwaedere, P. Jouvet, and Marc Willinger eds. Global Environmental Commons:Analytical and Political Challenges in Building Governance Mechanisms. p.199-222, Oxford University Press
(7) Ishihara H. and Pascual U. (2009) Social Capital in Community Level Environmental Governance: A Critique. Ecological Economics 68, p.1549-1562

その他

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)のValue Assessment TeamにおけるCollaborative Author
グレナダ生態系サービス評価(NEA)におけるLead Author

教員からのメッセージ

学生には学際的なサステナビリティー研究を行なっていってほしいと思っています。これは、どの学問も中途半端という意味の安易な学際性ではなく、1つあるいは複数の学問領域に深く根づきつつ、他の学問に対して開かれている学際性であることを望みます。また、同時にステークホルダー(必ずしも研究者とは限らない)にも開かれた学際性であることも望みます。これは容易なことではありませんが、このような道を探る以外にサステナビリティーを社会実装させる方法はないと考えます。