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早稲田 卓爾 わせだ たくじ/教授/環境学研究系
海洋技術環境学専攻/応用海洋物理学講座/海流・波浪機構解明及び工学的応用
http://www.orca.k.u-tokyo.ac.jp/WasedaLab/

略歴
1991年7月1日-1996年9月30日 カリフォルニア大学サンタバーバラ校機械環境工学科 Research Assistant
1996年10月1日-1997年9月30日 カリフォルニア大学サンタバーバラ校機械環境工学科 Post Graduate Researcher
1997年10月1日-1998年3月31日 海洋科学技術センター 地球フロンティア研究システム研究員
1998年4月1日-2004年3月31日 海洋科学技術センター 地球フロンティア研究システム研究員
ハワイ大学国際太平洋研究センター(IPRC)研究員兼務
2004年4月1日-2007年3月31日 東京大学 大学院工学系研究科 環境海洋工学専攻 助教授
2007年4月1日-2008年3月31日 東京大学 大学院工学系研究科 環境海洋工学専攻 准教授
2008年4月1日-2015年5月31日 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 准教授
2004年5月1日-現在 海洋研究開発機構 招聘主任研究員兼務
2015年6月1日-現在 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 教授
教育活動
大学院:海面過程の力学,海洋情報学演習,海洋環境モデリング
工学部システム創成学科:地球科学2,Fundamental Mechanics,数理演習,力学演習
教養学部(海洋アライアンス):海で学ぶ,海研究のフロンティア
研究活動
(1)フリーク波の発生機構と予測,船体応答に関する研究
 外洋で突発的に起きるフリーク波の発生確率が、波浪スペクトルの方向分散性に依存することを東京大学での水槽実験結果と理論から明らかにした(Waseda 2006会議録、Waseda et al. 2009)。この実験は、その後、ノルウェイ、オランダ、中国、オーストラリアなどでの別の研究グループによる独立した実験で再現され、その結果の頑強さが証明されている。ノルウェイでの実験結果との比較はPhysical Review Letters(Onorato et al. 2009)に掲載され、非線形光学などの分野にも影響を与えている。そして、外洋における観測データ解析と波浪推算により、方向分散性とフリーク波の発生確率の関係を実証した(Waseda et al. 2011)。この論文はGeophysical Research LettersのEditors Highlightに選ばれ、代表的な図が表紙に使われた。このような波動力学的な成果と海洋物理学的な成果に基づき、波浪スペクトルの周波数バンド幅と方向分散性を指標とするFreakish Indexを提唱し、日本近海で起きる数々の海難事故が、この指標で示されるフリーク波が発生しやすい時に起きていることを、日本船舶海洋工学会の英文誌で発表した(Waseda et al. 2012)。一方、フリーク波の発生機構を解明するための独自の観測を、科学研究費補助金若手研究S(2008-2012)にて実施した。その結果から、フリーク波の多くは砕波していないにも関わらず、流体粒子の速度が、弱い非線形性で推定される粒子速度を大幅に上回ることを示した(Waseda et al. 2014)。このような強い非線形性を考慮した波浪が、どのように航行する船舶に影響を与えるかを解析するための海難事故解析システムを開発している。気象学的な波浪スペクトル予測から、船体応答を解析できる位相解像モデルまで力学的にダウンスケールし、数値的に再現した危険波を、新しい造波法(HOSM造波)により実験水槽で再現する(科学研究費補助金基盤研究A、2013-2015)。
 さらに,海洋における波群の形成過程の解明と波群中の船体応答の研究に取り組んでいる(科学研究費補助金基盤研究A、2016-2018)。東京大学平塚観測塔にステレオカメラを設置し,海面水位の面的な分布を推定し,波群のデータベースを構築する.そして,代表的な波群を造波水槽で再現し,弾性模型船による応答実験を行う予定である.
 
(2)日本近海の海流とその応用に関する研究
 日本近海を流れる黒潮の流路変動が中規模渦との相互作用に起因することを、現実的な数値シミュレーションと衛星海面高度データの同化により示した(Waseda et al. 2003)。このような知見は海流エネルギー資源量の推定精度の向上と、自然変動に起因する資源量推定の不確かさの定量化に資する.資源量推定に資する海流・波浪の長期ハインドキャスト、規準の策定などに貢献し、我が国における海洋エネルギーポテンシャルの推定に関するプロジェクトをリードしている(NEDO海洋エネルギー発電技術共通基盤研究(ポテンシャル推定)、2014-2015)。その一環として、伊豆諸島における合成開口レーダー画像に現れる特異なU字パターンが、黒潮と島の影響で、島の上流側に形成された内部重力波であることを、数値計算により示した(Kodaira et al. 2014)。海洋と宇宙との連携の意義を示す重要な研究成果である。
[文献]
1) 早稲田卓爾, Adrean Webb, 清松啓司, 藤本航, 宮澤泰正, Sergey Varlamov, 堀内一敏, 藤原敏文, 谷口友基, 松田和宏, 吉川潤. (2016). 初期検討・FS に資する海洋再生可能エネルギー資源量推定 −波浪・海流・潮流・温度差発電エネルギーポテンシャル−、日本船舶海洋工学会論文集、23、189-198
2) Waseda, T., Sinchi, M., Kiyomatsu, K., Nishida, T., Takahashi, S., Asaumi, S., Kawai, Y., Tamura, H., & Miyazawa, Y. (2014). Deep water observations of extreme waves with moored and free GPS buoys. Ocean Dynamics, 1-12., DOI:10.1007/s10236-014-0751-4
3) Kodaira, T., Waseda T., & Y. Miyazawa (2014). Nonlinear internal waves generated and trapped upstream of islands in the Kuroshio. Geophysical Research Letters, DOI: 10.1002/2014GL060113
4) Waseda, T., Tamura, H., & Kinoshita, T. (2012). Freakish sea index and sea states during ship accidents. Journal of Marine Science and Technology, 17, 305-314.
5) Waseda, T., Hallerstig, M., Ozaki, K., & Tomita, H. (2011). Enhanced freak wave occurrence with narrow directional spectrum in the North Sea. Geophysical Research Letters, 38, 10.1029/2011GL047779
6) Onorato, M., Waseda, T., Toffoli, A., Cavaleri, L., Gramstad, O., Janssen, P. A. E. M., Kinoshita, T., Monbaliu,J., Mori, N., Osborn, A.R., Serio, M., Stansberg, C. T., Tamura, H., & Trulsen, K. (2009). Statistical properties of directional ocean waves: the role of the modulational instability in the formation of extreme events. Physical Review Letters, 102, 114502.
7) Waseda, T., Kinoshita, T., & Tamura, H. (2009). Evolution of a random directional wave and freak wave occurrence. Journal of Physical Oceanography, 39, 621-639
8) Waseda, T. (2006). Impact of Directionality on the Extreme Wave Occurrence in a Discrete Random Wave System, 9th International workshop on wave hindcasting and forecasting,In CD, Victoria, Canada, September 24-29, 2006
9) Waseda, T., Mitsudera, H., Taguchi, B., & Yoshikawa, Y. (2003). On the eddy‐Kuroshio interaction: Meander formation process. Journal of Geophysical Research: Oceans, 108, 10.1029/2002JC001583
その他
日本船舶海洋工学会、日本海洋学会、日本気象学会、American Geophysical Union、海洋調査技術学会、日本海洋政策学会各会員
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将来計画
本研究室では,得られた科学的知見を元に再解析や予報を行い,その結果をデータベースとし,ユーザーフレンドリーなウェブインターフェースなどを介して提供することを目標としている.以下に現在開発中のサーバー例を示す.
 波力や海流発電事業の初期検討やFSに資するエネルギーポテンシャル情報を提供するために,21年間の波浪シミュレーション(TodaiWW3)と10年間の海流・潮流シミュレーションを行った(NEDO事業2015-2016).推定されたエネルギーポテンシャルや,波浪・海流情報は,簡便なウェブGISにより配信している(http://www.todaiww3.k.u-tokyo.ac.jp/nedo_p/jp/webgis/).将来はサバイバルコンディション(極大波など)の提供も検討している.
 ウィンドチャレンジャー計画では,帆主機従船の実用化を目指し,風と波浪の予測データを用いた航路選択システム(Wind Challenger Navi)を構築している.16日間の風予報データ(NCEP-GFS)を用い,波浪シミュレーションを行う(TodaiWW3-WCP).データベースを運行シミュレーター(WCSS:Wind Challenger Sailing Simulator)と組み合わせる.
 海難事故解析システムは,波浪スペクトル予測をもとに,一波一波の形状を解像することで,海難事故時の波況の詳細を推定する.そして,その情報をもとに造波水槽で危険波の再現を行う.観測データがある場合は,データ同化手法を用いて,予測シミュレーション結果を補正する.

海難事故解析システム
データサーバー各種

教員からのメッセージ
大きな夢を持って研究に没頭してください。卒業後も揺るがない、しっかりとした柱を一本たてることを目標に、学生時代は自分自身を磨くことに専念してください。
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