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吉信 淳

(よしのぶ じゅん/教授/基盤科学研究系)

物質系専攻/物質科学協力講座

略歴

1984年3月 京都大学理学部卒業
1989年3月 京都大学大学院理学研究科化学専攻博士課程修了(理学博士)
1989年4月 米国ピッツバーグ大学化学科博士研究員
1991年4月 理化学研究所基礎特別研究員
1992年4月 理化学研究所研究員
1996年8月 理化学研究所副主任研究員
1997年7月 東京大学物性研究所助教授
2007年4月 東京大学物性研究所教授(現職)

教育活動

新領域創成科学研究科:低次元物性化学特論
理学系研究科:物理化学特論1
教養学部:物性化学

研究活動

表面界面が面白いのは,バルクの対称性が破れ表面特有の構造や物性が現れることだけではありません.外部から原子・分子を自由自在に供給し,反応を誘起させ,新しいマテリアルを構築できる「反応場」として利用できるのです.原子・分子レベルで制御された,すなわちナノスケールの表面新物質(例えば,サイズの整ったクラスター,異方性の強い低次元化合物,配向の特定された分子の凝集系など)を作成するためには,表面場における原子分子の動的挙動,吸着粒子間相互作用,表面反応をよく理解することが不可欠です.
 吉信研究室では,金属,半導体,分子凝集体などの表面や界面における原子・分子の動的挙動,表面ナノ物質の構築,および表面物性などを,表面振動分光(赤外反射吸収分光,高分解能電子エネルギー損失分光など),光電子分光などの表面分光法と,走査型トンネル顕微鏡に代表される局所プローブ法などを駆使して研究しています.また,必要に応じて放射光(分子研,高エネ研)を用いた実験も行います.
 これらの表面界面の化学物理に関する研究は,触媒反応や分子エレクトロニクスの基礎と密接に関連しています.さらに,宇宙における分子進化について手がかりを与えてくれます.現在進行中の研究テーマは以下の通りです.

・有機分子=半導体表面ハイブリッド系の構築と物性:Siなどの半導体表面に分子を結合させ,表面に吸着した単一分子のや吸着分子集合体の反応性・物性を,走査型トンネル顕微鏡,高分解能電子エネルギー損失分光,光電子分光などの手段で調べています.ナノスケールのデバイスやセンサーなどの基盤技術の確立と基礎原理の構築のために重要な研究です.
・表面における原子分子のダイナミクス(吸着,拡散,反応などの素過程):極低温では物質の熱励起が抑制されるため,分子と表面との相互作用の本質が見えてきます.たとえば,気相から入射した分子は表面と結合を形成するまでの間,吸着エネルギーを散逸する過程で過渡的に表面を拡散します.極低温でステップ表面に吸着した分子の振動スペクトルを赤外反射吸収分光で測定することにより,過渡的拡散距離を見積もることに世界で初めて成功しました.
・氷の表面や界面における化学反応:極域成層圏雲の氷微粒子表面では様々な化学反応が起こり,オゾンホールの破壊につながっていると考えられています.また,宇宙塵はアモルファス氷におおわれ,その表面では単純な分子から複雑な有機分子へ分子進化が起こっていると推察されています.超高真空・低温という状況を実験室的に再現し氷表面における反応を研究することにより,これらの化学過程を追跡しメカニズムを解明することを目指しています.
・ナノ領域低エネルギー電子ビームによる局所構造の構築と分析:物質と相互作用の強い低エネルギー電子ビームを使って,固体表面にサブミクロン~数10nmの構造を構築し,新しい物性や機能の発現を探索しています.
・水素誘起による遷移金属表面の構造と電子状態の変化
・酸化物表面に創成した低次元物質の電子物性

文献

1) J. Yoshinobu and M. Kawai ""Thermal excitation of oxygen species as a trigger for the CO oxidation Pt(111)"" J. Chem. Phys., 103 3220-3229 (1995) .
2) J. Yoshinobu, M. Kawai, I. Imamura, F. Marumo, R. Suzuki, H. Ozaki, M. Aoki, S. Masuda, and M. Aida, ""Direct observation of molecular-substrate antibonding states near the Fermi level in Pd(110)c(4x2)-benzene"" Phys. Rev. Lett., 79, 3842-3945 (1997).
3) K. Hamaguchi, S. Machida, M. Nagao, F. Yasui, K. Mukai, Y. Yamashita and J. Yoshinobu, H. Kato, H. Okuyama, M. Kawai, T. Sato, M. Iwatsuki, ""Bonding and Structure of 1,4-cyclohexadiene Chemisorbed on Si(100)(2x1)"" , J. Phys. Chem. 105 (2001), 3718 -3723.
4) J. Yoshinobu, N. Tsukahara, F. Yasui, K. Mukai and Y. Yamashita, ""Lateral displacement by transient mobility in chemisorption of CO on Pt(997)"", Phys. Rev. Lett. 90 (2003) 248301

その他

所属学会:日本物理学会,日本化学会,応用物理学会,日本表面化学会(評議員)

将来計画

現在は固体表面を中心に研究を推進していますが,将来は固液界面や生体高分子の表面の機能や物性まで研究領域を広げていきたいと考えています.

教員からのメッセージ

物質と物質の接点でありエネルギーの受け渡しをする表面・界面は神秘で複雑ですが,ほとんどの自然現象や生活にかかわっています.少しずつそのベールを剥ぎ,新しい法則や概念を構築して行きましょう.

ホームページのURL

https://yoshinobu.issp.u-tokyo.ac.jp/index.html