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小畑 元

(おばた はじめ/教授/環境学研究系)

自然環境学専攻/海洋環境学大講座/海洋地球化学・海洋環境化学

略歴

1991年3月京都大学理学部卒業
1997年3月京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了(博士(理学))
1997年 4月日本学術振興会特別研究員(滋賀県立大学)
1999年 1月東京大学海洋研究所COE研究員
2000年 2月日本学術振興会海外特別研究員(リバプール大学)
2002年 6月東京大学海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野助手
2003年 5月東京大学海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野講師
2007年 4月東京大学海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野准教授
2017年 12月東京大学海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学グループ教授(現職)

教育活動

新領域自然環境学:海洋物質循環論
新領域自然環境学:環境化学論
理学系化学:分析化学特論III

研究活動

 海洋における微量金属元素の生物地球化学循環に関する研究を行っている。

1) 海水中の微量金属元素を測定することは試料処理時や分析操作時の汚染のため困難であったが、近年の急速な技術の進歩により、グローバルな分布が明らかになりつつある。現在、これらの結果をもとに新しい海洋地球化学が構築されている。特に鉄は海洋の植物プランクトンにとって必須元素であり、その供給不足が海洋一次生産の制限因子として働いている海域が存在する。海洋の一次生産は大気中の二酸化炭素の循環に密接に関わっており、地球温暖化にも影響を与えると考えられる。鉄の他にも、亜鉛、コバルト、銅なども一次生産に関係している可能性も指摘されている。しかし、微量金属元素の分布を支配する生物地球化学的プロセスに関する研究はまだ端緒についたばかりである。この化学・生物・物理プロセスが複雑に絡まった海洋におけるプロセス解明が重要な課題となっている。このような背景から、海洋における微量金属元素の分布や存在状態を明らかにし、その循環プロセスを解析していくことが大きな研究課題である。

2) 海水中の微量元素は様々な形で溶存しており、その溶存形によっても植物プランクトンの生物利用性が大きく異なることが明らかになりつつある。しかし、海水中の微量元素の溶存状態を明らかに出来る方法論は十分には確立されていない。pM-nMレベルの微量金属元素を取り扱うためには、まず、高感度な形態別定量法を確立する必要がある。そこで、フロー分析法、電気化学分析法、質量分析法などを用いて、新たな海水中の微量金属元素の分析法を開発し、溶存状態の解明にあたっている。この溶存状態と生物利用性の関係を明らかにすることを目指してリウ。

3) 海水中の濃度がfM-pMという超微量金属元素についてはようやく確からしい値が得られ始めた。例えば白金族元素などは分析そのものが非常に困難であるため、研究者間でもそのデータにばらつきがあり、本当の挙動はよく分かっていない。このような超微量金属元素の海洋における挙動を解明することにより、これまでに我々の知らなかった知見を与えられる可能性がある。例えば自動車の排気ガス分解のための触媒から放出される白金族元素は、もともと自然界の濃度が低く、人為汚染の影響が顕著に表れる。このような超微量金属元素を通して環境変化を調べることも一つの課題である。

4) 海洋における微量金属元素の研究は分析法の発展なくしては、大きな進展は見込めない。観測船上での分析や、分析装置そのものを海洋に沈めて現場分析するなど、新しい技術の進歩により、これまで知られていなかった発見ができる。このような新しい分析法や観測法を開発することも大きな研究課題である。

文献

1) Obata, H. , H. Karatani and E. Nakayama, 1993. Automated Determination of Iron in Seawater by Chelating Resin Concentration and Chemiluminescence Detection. Analytical Chemistry, 65: 1524-1528
2) Obata, H., J. Nishioka, T. Kim, K. Norisuye, S. Takeda, Y. Wakuta and T. Gamo, 2017. Dissolved iron and zinc in Sagami Bay and the Izu-Ogasawara Trench. Journal of Oceanography, 73, 333-344.
3) 小畑 元、金 泰辰、西岡 純., 2017. 北太平洋亜寒帯における鉄の供給過程. 海の研究, 26,79-93.
4) 小畑元, 黄国宏, 2022. 海水中の微量金属元素に対する有機配位子の電気化学分析法. 地球化学, 56, 33‒46.

その他

所属学会:日本海洋学会、日本地球化学会、日本分析化学会、American Geophysical Union (AGU), American Society of Limnology and Oceanography (ASLO)

将来計画

 化学的な手法を通して、様々な境界領域の研究に貢献する。

教員からのメッセージ

 自然環境の現場に立ち、自分で肌で感じながらその環境を学ぶことは非常に貴重な体験です。現場で手を動かし、足を動かし、頭を動かすことを実践して欲しいと思います。

ホームページのURL

http://co.aori.u-tokyo.ac.jp/mic/2018/09/05/teachers_obata/