研究紹介

高温超伝導の発見とその後15年を越える研究の流れは、新物質の発見が如何に物性物理学に大きなインパクトを与えるかを如実に示しました。その波紋は超伝導研究のみならず、強相関電子系一般における局在-非局在の概念の確立や磁性と伝導性の興味深い相関の研究へと大きな拡がりを見せています。われわれが目指すのは新物質探索を通して未知の物理現象を見出し、物性物理学の新しい方向を切り開くことです。さらに一歩進んで新しい機能や特性を有する「役に立つもの」を世に送り出したいと日夜研究に励んでいます。

山浦研究室 研究紹介

 

Cd2Os2O7単結晶おいて-46℃以下で出現するall-in-all-outと呼ばれる非常に対称性の高い美しいスピン配列。放射光共鳴X線磁気散乱で明らかにされた。

山浦研究室 研究紹介

 

中性子を用いた2体相関分布関数解析(左)から導き出した高誘電体LaTiO2N の極性(polar)ナノ構造(右)。矢印は非極性(non-polar)構造からの変位を示している。

メッセージ

とにかく実験は楽しい。世界で初めての現象を見つけていい実験ができたと思えた時の喜びを分かち合いたい。良い環境が整った研究室で実験の楽しさを存分に感じて欲しい。

手先の器用さを生かせる仕事がしたいと思い理系を選びました。そして、物質の本質を突き詰めることに惹かれて研究者の道に。きれいな結晶を作って、正確で精密な測定をして、きれいなデータを出す。この3つのステップが私の研究の原点になっています。きれいな結晶を見つけ出すためには、何千個という結晶の中から、2時間、3時間と顕微鏡を覗いて選び出す根気が必要です。でも、集中しているとあっという間です。そして、よい結晶が見つかったとホッとする瞬間が私は好きです。 思えば、小学生の頃、天体観測で満天の星空を見たり、高校時代には、金属の種が小さな森を作るように成長する様や、物質の色が一瞬で変わる実験を見て、サイエンスが作り出す美しさに惹かれたのかもしれません。

物質系専攻を志す学生へ

研究は羅針盤のない航海のようなもので、教科書にないことを自分で切り開いていく力が必要です。そこでは「飽くなき探究心と好奇心」「常識に囚われない柔軟な発想」「人の言うことを鵜呑みにしない」などが重要です。日本のお家芸ともいえる物質科学、材料工学の分野で常識を打ち破るような発見をして、魂が震える瞬間を感じていただけたらと思います。

プロフィール

山浦 淳一 准教授

山浦 淳一 准教授

1992年 東京工業大学理学部化学科卒業

1997年 東京工業大学理工学研究科化学専攻 博士課程修了

1997年 東京大学物性研究所 助手

2012年 東京工業大学元素戦略研究センター 特任准教授

2022年 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 研究員

12023年 東京大学物性研究所 准教授

研究室訪問

  • 04-7136-3252
  • 277-8561
  • 千葉県柏市柏の葉5-1-5
  • 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻
  • 山浦淳一准教授研究室
  • jyamaura@issp.u-tokyo.ac.jp