研究紹介

ゴムやプラスチックに代表される有機化合物は、良質な電気的絶縁体として我々の生活に欠かすことのできない基盤材料です。一方で、炭素間に単結合と二重結合が交互に繰り返されるパイ共役系と呼ばれる特殊な骨格をもつ有機化合物は、光吸収・発光特性・伝導性や磁性など様々な物性を発現します。電気が流れる有機化合物は日本で発見され70 年の歴史を持ちますが、その物性の理解や新規材料の開発、そしてその価値を社会に還元していくという意味では、基礎から応用まで一貫した研究を継続していく必要があります。我々は高分子や低分子とイオンなどを精密に複合化させるオリジナルな技術を用いて、金属のように電子や熱を流す金属プラスチックを実現しています。私はこれをプラスチックの錬金術と位置付けています。金属のようなプラスチックを用いて電子やイオン、熱やスピンを効率よく生成・輸送・変換することをミッションとしています。

渡邉研究室 研究紹介

 

パイ共役系有機化合物のインク。分子構造によって、バンドギャップが異なるため様々な色のインクが得られる。

渡邉研究室 研究紹介

 

薄膜試料の低温物性計測

渡邉研究室 研究紹介

 

電子と熱の輸送を同時に計測可能な微細加工デバイス

メッセージ

科学を前進させるのは人間力。科学者としての第一歩を踏み出し、自分自身を再発見しよう!

思い返すと私の人生の契機において、様々な人の助けがありました。学生時代の指導教員や研究室の仲間、イギリス留学時代に毎日のように激論を交わしたポスドク仲間。そして、野心に溢れた同世代のライバルたち。駆け出しの私を雇ってくれたボス、指導した学生のみんな。そして、研究におけるブレイクスルーも人との出会いや繋がりが最も重要でした。自然科学分野の研究対象が細分化していく中、異なるバックグラウンドを持つ研究者との交流は極めて重要です。時には、研究を始めて間もない学生の突拍子もないアイデアがブレイクスルーとなることもあります。私たちの研究は、有機合成化学・固体物理学・デバイス工学が密接に関わる境界領域に位置しています。異なる分野の融合が最も力を発揮する領域です。渡邉研究室は、2024年に独立した新しい研究室ですが、世界をリードする環境と境界領域をカバーする仲間が揃っています。私たちと一緒に化学・物理・工学を再発見すると同時に、科学者としての第一歩を踏み出しましょう。

物質系専攻を志す学生へ

10,000時間で夢を探そう! ある分野で一流になるためには、10,000時間のトレーニングが必要だそうです。この「10,000時間の法則」は最近どうやら否定されているようですが、研究者としての私個人の肌感覚では突出したスキルを得るためにはこれくらいの時間が必要だと感じています。修士2年間+博士3年間を研究に費やすと、平均として10,000時間になるそうです。10,000時間で平凡を非凡にするだけでなく、自分自身の夢を具現化して欲しいと思います。

プロフィール

渡邉 峻一郎 准教授

渡邉 峻一郎 准教授

2011年 名古屋大学大学院マテリアル理工学部専攻応用物理分野 後期博士課程修了

2011年 日本学術振興会特別研究員(PD)

2011年 ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所オプトエレクトロニクスグループ 博士研究員

2014年 日本学術振興会特別研究員(SPD)

2014年 東京大学大学院新領域科学研究科物質系専攻竹谷研究室 客員共同研究員

2015年 科学技術振興機構 (JST) さきがけ研究者 (専任)

2016年 文部科学省 卓越研究員制度

2016年 産総研・東大 OPERANDO-OIL 客員共同研究員

2016年 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 特任准教授

2020年 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 准教授

研究室訪問

  • 04-7136-3788
  • 277-8561
  • 千葉県柏市柏の葉5-1-5
  • 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻
  • 渡邉 峻一郎准教授研究室
  • swatanabe@edu.k.u-tokyo.ac.jp