研究紹介

電子同士が強く相互作用する物質中では、電子が独立に運動する描像が成り立たず、多体効果や量子性が重要となります。このような系では、電子の電荷・スピン・軌道といった自由度や物質の対称性・トポロジーが絡み合い、通常の金属以外にモット絶縁体、磁気秩序、超伝導など様々な電子相が現れます。本研究室では、遷移金属化合物や希土類合金などの無機物質に加え、有機分子からなる分子性導体を舞台として、結晶中の分子軌道をもとに電子物性を設計・開拓していきます。研究方法としては、対象物質の結晶育成、輸送特性および熱力学測定、また時には外部実験施設で中性子や放射光を用いた散乱実験も行っています。最近の主な研究テーマは、トポロジカル磁気構造にまつわる新物質・機能性の探索、分子性導体における電荷・スピン・軌道が絡んだ相転移現象の解明と新規電子相の開拓などがあります。

廣井研究室 研究紹介

 

磁性金属Y3Co8Sn4において観測した渦状スピン構造の概念図。

廣井研究室 研究紹介

 

合成したY3Co8Sn4単結晶とその結晶構造。

廣井研究室 研究紹介

 

単一分子性導体Au(tmdt)2

廣井研究室 研究紹介

 

核磁気共鳴測定(左)および放射光X線構造解析(右)を行い、反強磁性転移に向けてπ軌道からd軌道へ電子移動が生じていることを明らかにした。

メッセージ

自分からやりたいと思ったことしか続かない。主体的に研究を楽しんで、先が見えないと思えても、ちゃんと考えれば必ず未来が見えてきます。

物理の目で見ること。小学1年生からクラシックバレエを続けているのですが、バレエは物理と繋がると思うことがあります。バレエの独特な動きを力学とかで考えて、解明していくと、例え才能がなくても練習で身につくんです。突き詰めて、積み上げてきたものを人前に出して、発表する時の緊張感、逃げたくなることもあるけれど、相手の反応で次どこに向かうかが見えてくる。これ、物理もバレエも同じだなって思います。工学部を選んだきっかけも小学生の頃で、授業で学んだ環境問題を、解決できるような仕事がしたいと思ったからです。学んでみたら単純に物理は面白いと思いました。自分のアイデアがどう環境に貢献できるか、好きなことを突き詰めながら周りも良くしていける仕事が、私にとっての物理です。

物質系専攻を志す学生へ

新しい物質や機能の創出は、技術革新を通じて社会問題を解決し、私達の生活様式をガラッと変える可能性を秘めています。日々の研究では、狙った実験結果が得られず苦しい時もありますが、予想外の実験結果から新しい発見に繋がることもあります。物質系専攻には「物質」を軸とした様々な分野の研究室がありますので、周りの人たちとの対話を通じて新しい視点が得られるはずです。物質系専攻は、研究の奥深さや楽しさを味わうのにとても良い場だと思います。

プロフィール

高木 里奈 准教授

高木 里奈 准教授

2009年 東京大学工学部物理工学科卒業

2014年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)

2014年 日本学術振興会特別研究員(PD)

2014年 理化学研究所創発物性科学研究センター 特別研究員

2019年 理化学研究所創発物性科学研究センター 研究員

2019年 東京大学大学院工学系研究科 助教

2020年 科学技術振興機構(JST)、さきがけ研究者(兼任)

2023年 東京大学物性研究所 准教授

研究室訪問

  • 04-7136-3245
  • 277-8561
  • 千葉県柏市柏の葉5-1-5
  • 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻
  • 高木里奈准教授研究室
  • rina.takagi@issp.u-tokyo.ac.jp