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鯉渕 幸生 こいぶち ゆきお/准教授/環境学研究系
社会文化環境学専攻//社会環境予測評価学分野
http://www.coastal-env.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
2001年3月東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻博士課程修了,2001年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科客員研究員,2001年10 月東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻研究員,2002年4月東京電機大学理工学部建設環境工学科助手,2003年4月より現職.博士(工学).
教育活動
大学院:空間環境解析,空間環境解析演習
研究活動
 沿岸域における水環境の保全・創造を行う際に不可欠な,水質・生態系・流れといった沿岸域環境の変動メカニズムの解明・予測・評価・改善手法に関する研究を進めている.主に東京湾や有明海をフィールドとし,現地観測によるモニタリングやスーパーコンピュータを用いた数値予測手法の開発を行ってきた.さらに近年はマイクロバブルによる貧酸素水塊の解消など環境改善への取り組みもはじめている.東京湾は世界的に見ても非常に富栄養化が進んだ内湾であり,植物プランクトンの増殖現象である赤潮(文献1),枯死した植物プランクトンが海底で酸化分解されることにより発生する貧酸素水塊の形成,青潮などが慢性的に見られる.東京湾に複数の観測サイトを設け,クロロフィルaを含む多項目の水質長期連続観測を実施し,また栄養塩濃度の計測を高頻度で行うことにより,富栄養現象の解決に不可欠な栄養塩の循環機構を明らかにした(文献2).東京湾における富栄養化現象の解明は,世界中の様々な内湾における水質悪化の緩和や解決に重要な知見をもたらすものと期待される.一方,有明海においては東京湾ほど富栄養化が進行していないものの,近年魚介類の減少や赤潮発生に伴う養殖ノリの被害など,様々な異変が報じられており,この原因を明らかにするためのモニタリングを実施している.このようなモニタリング結果をもとに諫早湾に設置された潮受け堤防の効果的な運用方法などについても検討を行いつつある(文献3,4).さらに3次元流動・水質・生態系数値予測モデルを開発し,3次元の流動や植物プランクトンなど低次生態系を含めた物質循環プロセスの定量化(文献5)や開発インパクトの予測を行っている.
[文献]
1) 鯉渕幸生・五明美智男・佐々木淳・磯部雅彦(2000):現地観測に基づく春季の東京湾における赤潮発生機構」海岸工学論文集,第47巻.
2) 鯉渕幸生・小倉久子・安藤晴夫・五明美智男・佐々木 淳・磯部雅彦(2000):東京湾湾奥における栄養塩の周年変動に関する現地観測,海岸工学論文集,第47巻.
3)鯉渕幸生・佐々木淳・有田正光・磯部雅彦(2003):有明海における水質変動の支配要因,海岸工学論文集,第50巻.
4)Y. Koibuchi・M. Isobe(2003):Field observation of water environment in Ariake Bay,Proc. Asia and Pacific Coast.
5)鯉渕幸生・佐々木淳・磯部雅彦(2001):東京湾における窒素・リンに着目した物質循環機構,海岸工学論文集,第48巻
その他
所属学会は土木学会,水環境学会,日本海洋学会およびAmerican Society of Limnology and Oceanographyである.
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将来計画
 環境影響評価法が施行され,沿岸域における開発事業等を行う際には,その影響を事前に予測・評価することが義務づけられるようになった.また,海岸法の改正にともない,従来の「防護」に加えて「環境・利用」がキーワードに加えられ,生態系を含む環境保全や,さらに進んで失われた環境の再生,望ましい環境の創造が期待されるものと思われる.このような背景を踏まえ,本研究室では沿岸域における流動,水質,底質,生態系,物質循環等の素過程の把握,解明,モデル化,および総合化により,沿岸域環境の予測・評価手法の構築を目指している.従来の海岸工学が対象とした湾全体の流動のみならず,三番瀬等をはじめとする浅瀬・干潟における水質・生態系にも着目し,両者の相互作用や陸域・外洋の影響も考慮すべく様々な取り組みを行っていきたい.観測によりこれらの要因を解明するだけでなく,このような現象と開発との因果関係を分析することで,これまでの開発行為における反省点を明らかにし,また,望ましい生態系とはどのようなものかといった観点からも研究を展開していきたい.関係各所との共同研究を積極的に展開していく予定である.
教員からのメッセージ
 沿岸の水環境は問題には様々なものがありますが,従来個別の分野が専門としたような現象が複雑に関与しているために実態の把握すら困難で解決が遅れています.同時に沿岸域は様々な利害が対立する場でもあります.このような状況下においては,実際には何が起きているのか,本当の事はなにかを明らかにすることが大変重要です.そのためにはまず,今まで見えなかったことを見えるようにすることが必要となります.みなさんの柔軟な発想により,これまで想像もしなかったような新しいアプローチが生まれることを期待しています.また環境学では,これまで個々に蓄積された知見を総合化して解決を図ろうとしています.新規性の高い成果をさらに総合化することには大きな可能性があります.新しいことに挑戦し,何が重要かを見抜くプロセスを学生のみなさまと一緒に行っていきたいと考えています.最新の成果等についてはホームページhttp://www.coastal-env.k.u-tokyo.ac.jp/ を参照して下さい.
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