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中辻 知

(なかつじ さとる/教授/基盤科学研究系)

物質系専攻/物質科学協力講座

略歴

1996年 3月 京都大学工学部金属系学科卒業
2001年 1月 京都大学大学院 理学研究科物理学専攻 博士課程修了
2001年 1月 日本学術振興会特別研究員(PD) (米国国立高磁場研究所、米国フロリダ州)
2001年 4月 日本学術振興会海外特別研究員(米国国立高磁場研究所、米国フロリダ州)
2003年 4月 京都大学大学院 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 講師
2006年 4月 東京大学 物性研究所 助教授(現職)

研究活動

物理学のフロンティアは、新しい物理現象の発見にあります。なかでも、現代の電子・情報社会を支える材料としての無機物質から、物質中の1023個もの電子が相互作用して創りだすマクロな量子現象が続々と発見されており、物理と化学を駆使した新物質の開発こそが新しい量子現象を目指す物性物理の醍醐味であると言えます。私達は、特に遷移金属化合物や、重い電子系と呼ばれる金属間化合物の新物質開発に取り組み、量子現象として、スピン・軌道の秩序と密接する新しいタイプの金属状態・超伝導状態、従来型のスピン秩序を抑えることで期待される、磁性半導体での新しい量子スピン状態などに注目して研究を進めています。
さらに、私達の研究室は、物質の化学合成のみならず、こうした新しい物理現象の発見を目指し、物理測定にも力を入れています。多様な合成法を用いて化合物の単結晶を自ら育成すると共に、室温から、量子効果が重要となる極低温まで様々な物性測定を行っています。現在の主な研究テーマは、(1)新しい遷移金属化合物の低温物性(2)2次元磁性半導体での量子スピン状態(3)重い電子系での量子臨界現象、金属スピン液体状態などがあります。





Figure: 私達が開発した2次元三角格子磁性半導体NiGa2S4 (文献2) (左上) 2次元性の強い結晶構造。(右上)結晶構造を反映した六角形の単結晶。(下)ワイス温度 W 80 Kに対応する比熱のピークに加え、低温T* = 10 Kで現れるもう一つのピークは、新しいスピン状態の形成を示す。

文献

1) "Metallic Spin-Liquid Behavior of the Geometrically Frustrated Kondo Lattice Pr2Ir2O7",S. Nakatsuji, Y. Machida, Y. Maeno, T. Tayama, T. Sakakibara, J. van Duijn, L. Balicas, J. N. Millican, R. T. Macaluso, and Julia Y. Chan,Physcial Review Letters Vol.96, 087204 (2006).
2) "Spin Disorder on a Triangular Lattice", Satoru Nakatsuji, Yusuke Nambu, Hiroshi Tonomura, Osamu Sakai, Seth Jonas, Collin Broholm, Hirokazu Tsunetsugu, Yiming Qiu, and Yoshiteru Maeno, Science Vol. 309, 1697 (2005).
3) "Two Fluid Description of the Kondo Lattice", S. Nakatsuji, D. Pines, and Z. Fisk, Physcial Review Letters Vol. 92, 016401 (2004).
4) "Intersite Coupling Effects in a Kondo Lattice", S. Nakatsuji, S. Yeo, L. Balicas, Z. Fisk, P. Schlottmann, P.G. Pagliuso, N.O. Moreno, J.L. Sarrao, and J.D. Thompson, Physcial Review Letters Vol.89, 106402 (2002).

その他

所属学会 日本物理学会、米国物理学会

将来計画

強相関電子系は、新規な量子物性を示す物質の宝庫です。私たちはこれまで、遷移金属酸化物から、金属間化合物・カルコゲナイド磁性半導体まで多岐にわたる物質を開発し、そこから新しいタイプの金属磁性(文献1)、磁性体における新しいスピン液体・グラス現象(文献2)、また、重い電子系の2流体現象・量子臨界現象(文献3、4)など、驚きを与える現象を続々と見つけてきました。今後も、私達の研究室では、様々な化学的手法による新しい物質の開発と先鋭化された低温測定技術により、物性物理における新しい量子現象の開拓を行っていきます。

教員からのメッセージ

何かに取りつかれたように研究をする、そんな対象にぜひ出会ってほしいと思っています。そして、努力の末に自ら新しいものを切り開く喜びを味わってください。その経験は必ず一生の宝となります。そして、新物質開発は、そのような楽しみを、ものづくりを通して感じられる発見の宝庫です。

ホームページのURL

http://satoru.issp.u-tokyo.ac.jp/