メッセージ
持続可能性と高性能化は両立する。分子の新しい形を設計することで、次世代のプラスチック材料を生み出します。
学生時代、複雑な形を持った分子どうしが、結晶の中で複雑に結合している姿を毎日のように観察していました。それぞれの分子が持つ個性を隣接する分子どうしが認識し合い、それが目で見える大きさの結晶の形や性質になって表れている様子は、まるで小さな宇宙のようにも感じました。この経験は、分子の形を正しく設計することができれば、目で見える大きさの材料の性質をも自在に操ることができるという確信を与えてくれました。当時は分子量が数百程度の有機分子を扱っていましたが、その後は分子量が数万を超える複雑な分子を使って、プラスチックを始めとする高分子材料の物性や機能を自在に操るための、分子のデザインに取り組んできました。そして今、私たちの研究室では、分子間が特殊なつながりを持った超分子と呼ばれる分子群を用いた、新たなプラスチック材料の研究をしています。デンプンへの酵素反応によって工業的規模で合成されている環状オリゴ糖を主原料にし、その穴に細い糸を通したネックレスのような超分子からでも、透明なプラスチックが作れるようになっています。この変わった形をした分子が持つ個性は、既存のプラスチックには無い物性や機能として表れ始めています。ミクロな分子の個性とマクロな材料の性質の関係を理解していくことで、石油原料に依存しなくても高い性能を持ったプラスチックが設計できるようになると信じています。
物質系専攻を志す学生へ
私たちの身の回りにある材料の多くは、金属、セラミックス、樹脂、ゴムなどが複雑に組み合わさった複合材料です。物質系専攻では、様々な材料物性に関する最高の研究環境と高度な専門知識を持った仲間や教員が待っています。国際色豊かなキャンパスの中で、幅広い分野の研究者と交流することで、これまでにない新しい材料のアイデアが思い浮かぶかもしれません。