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高周波MHz帯における強力超音波出力装置の開発 -二重放物面による超音波集束構造 DPLUS の提案-

発表者

森田 剛(東京大学大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 教授)

陳  康(東京大学大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 修士課程 2年生)

 

発表のポイント

◆ 二重放物面集束構造(DPLUS)という新構造の発明によりMHz帯域での強力超音波(注1)出力を可能にした。また、細棒先端からの超音波出力なので

  局所的な超音波利用ができる。
◆ 従来の強力超音波振動が精々100kHz程度であったのに対して、MHz帯域での強力超音波出力により新学問分野の創成に貢献できる。
◆ 具体的には、腫瘍破壊や新原理顕微鏡などへの応用展開を目指して研究を進める。

 

発表概要

東京大学大学院新領域創成科学研究科の森田剛教授と陳康大学院生らは、マイクロソニック株式会社代表取締役社長入江喬介博士らとともに、従来とは全く異なる原理による超音波集束構造を提案し、MHz帯での強力超音波出力(注1)を可能にした。

従来の最も一般的な強力超音波振動子であるランジュバン振動子(注2)では、精々100kHz以下での周波数しか扱えなかった。また、HIFU(高密度焦点式超音波法) (注3)では、超音波伝播媒体中で超音波集束するために、正確に集束点を予想するのが困難であるという問題点があった。これに対して、今回発明した二重放物面集束構造(DPLUS)では、MHz帯域の高周波帯で数MPaの高音圧を局所的に発生させることができる。

超音波研究は、医学、工学、化学、生物学など多様な分野で利用されている横断的学問分野である。特に強力超音波応用に関しては腫瘍破壊や音響インピーダンス顕微鏡などの医療応用、機械加工援用やキャビテーション応用、生物の生長促進などに重要となる。今回の研究成果により、高周波における強力超音波が容易に利用できることになり、さまざまな学術分野における幅広い応用が期待される。本研究成果は、2019年12月6日に「Scientific Reports」に掲載された。

 

発表内容

東京大学大学院 新領域創成科学研究科の森田剛教授と陳康大学院生は、マイクロソニック株式会社の入江喬介博士らとともに、従来とは全く異なる原理に基づく超音波集束構造を提案し、MHz帯での強力超音波出力を可能にした。この新規構造はDPLUS (Double Parabolic refLectors wave-guided high-power Ultrasonic tranSducers)と命名した。

強力超音波の発生は、圧電セラミック(注4)に設けられた電極間に電圧を与えることによって微小振動を励振し、これを共振振動させることによって、大振幅化させることが一般的である。従来の最も一般的な強力超音波振動子であるランジュバン振動子では、金属ブロックで圧電セラミックリングをボルト締結し、振動子の長手方向の共振振動を利用して高出力化させる。このため、振動子の全長が超音波の周波数が決まり、極端に短くすることはできないことから数10kHzの周波数領域であった。また、癌などの腫瘍を体外から強力超音波を集束させながら照射して除去するHIFU(高密度焦点式超音波法)では、1MHz程度で数MPaの強力超音波を発生させることができるものの、媒体中で超音波集束するために、安定した集束が困難であり、超音波伝搬中にキャビテーションが生成してしまう等という問題があった。

これに対して、今回発明された二重放物面集束構造(DPLUS)では、MHz帯域の高周波帯で数MPaの音圧を直径1mmの細棒導波路に伝搬させ、その先端から局所的に強力超音波を発生させることができる。リング形状の圧電セラミックによって生成された厚み超音波振動は、二つの放物面を反射しながら細棒導波路に効果的に集束されるところにその特徴を有する。1つめの放物面反射によって超音波が集束されるが、次の反射では、集束された超音波が平面波に変換されて同一方向に伝搬される波に変換される。この二重反射により、効率的に細棒導波路に強力超音波が導入されることになる。この二つ目の反射を経ずに導波路に超音波導入すると、伝搬方向がそろわないために大きな振動減衰が生じることがシミュレーションで確認されている。また、このような二重放物面反射を利用した集束、伝播方法と別に、細棒導波路の縦振動の振動モードを利用することによって、数100kHzの超音波帯域でも超音波振動を発生することができることが本研究で明らかとなった。すなわち多数の周波数の強力超音波をマルチモード励振できることから、音速や音響インピーダンスの測定に利用される際に、これらの物性値の周波数依存性の計測が容易にできることが可能となる。

超音波研究は、医学、工学、化学、生物学など多様な分野で利用されている横断的学問分野である。特に強力超音波応用に関しては腫瘍破壊や音響インピーダンス顕微鏡などの医療応用、機械加工援用やキャビテーション応用、生物の生長促進などに重要となる。今回の研究成果により、高周波での強力超音波が容易に利用できることになることで、様々な学問分野における応用が期待される。

 

研究紹介

東京大学新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 人間支援デバイス分野

http://www.hsd.k.u-tokyo.ac.jp/contents/research.html

 

発表雑誌

 

雑誌名:「Scientific Reports」(オンライン版:12月6日)

論文タイトル:Double-parabolic-reflectors acoustic waveguides for high-power medical ultrasound (SREP-19-34790-T)

著者:Kang CHEN, Takasuke IRIE, Takashi IIJIMA and Takeshi MORITA

DOI:s41598-019-54916-2

 

用語解説

(注1) 強力超音波

主に20 kHzから50 kHzの大振幅超音波を利用して超音波洗浄機やワイヤボンディング、キャビテーション生成などに用いられる。

 

(注2) ランジュバン振動子

円筒形金属ブロックで圧電セラミックリングを挟み込む構造により、強力超音波を発生する振動源として用いられる。円筒形状の長さによって共振周波数が決定され、通常は20kHzから50kHz程度の駆動周波数となる。

 

(注3) HIFU (High-Intensity Focused Ultrasound)

高密度焦点式超音波法とよばれる治療方法で、体内の癌などの腫瘍に集束するよう超音波を照射することで腫瘍を除去する。体内の組織を介して超音波集束が行われるために、超音波伝播を予想するのが難しい場合があり、焦点が腫瘍部分から外れてしまう場合や、集束点以外にも超音波パワーが大きくなってしまうために外傷を負うことが問題となることがある。

 

(注4) 圧電セラミックス

圧電材料として優れた特性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスが一般的に良く用いられる。リング状や板状に成型した圧電セラミックスの表面に対向する2枚の電極が設けられ、駆動電圧を加えことで超音波発生源として利用される。

 

添付資料

 

 

(図) 二重放物面集束構造(DPLUS)の構造、基本特性および応用例