機能生命科学大講座


生命応答システム分野

教授 大矢 禎一   助教授 園池 公毅

 生物の設計図とも言うべき全ゲノム配列が明らかになった、出芽酵母、シアノ バクテリア、シロイヌナズナ等を主な実験材料に用いて、生物が外部の環境変化をど のように認識し、どのような情報ネットワークを通して複数の生物応答に結び付いて いるかという問題について、分子レベルで網羅的な研究を進めています。ポストゲノ ム時代の「生命応答システム」の研究とは、例えば出芽酵母の約6200個の遺伝 子、シアノバクテリアの約3000個の遺伝子の中で生命応答に関する遺伝子群をト ータルに解析し、そのシステム全体を把握することを目的とした新しいタイプの研究 です。

 生物は外界の変化に対して様々な生命応答を行なっています。たとえば単細胞の真核生物である酵母では、外界のさまざまな栄養状態によって細胞増殖や形態形成が厳密にコントロールされています。特殊な性ホルモンによって細胞分化と接合過程が制御されています。こうした外界の刺激が細胞内に伝達された後、多くの場合に情報は単一のシグナルとして伝達されるのではなく、いくつもの伝達経路を介して情報ネットワークが広がっていきます。そこで一連の情報伝達反応の中で特に複数の入力シグナルを統合し、複数の生命応答系にシグナルを伝達する「生命応答の司令塔」とも呼ばれる多機能シグナル伝達因子の解析を中心にして、シグナル伝達ネットワークの「はたらき」と「しくみ」を解明しています。細胞内の情報ネットワークから細胞間のネットワークにシグナルが伝達され、異なる組織や器官の形成及びそれらの維持にどのように寄与しているかを明らかにすることも目標のひとつです。一方個体レベルに目を移すと、植物に対する「光」のように単一の環境刺激であっても、ある時は情報伝達のシグナルとして機能したり、またある時には光合成のエネルギー源として利用したりすることがあり、環境刺激が個体にとって複数の意味を持つ場合があります。さらに光が過剰な時には光合成の阻害要因となり、通常とは全く異なる生命応答を引き起こしてしまうことがあります。植物は動物と異なり、個体を移動することができないので、急激な温度変化等の不利な環境変化に遭遇すると自己を適応させることによってこれを克服します。これらの光応答反応や温度適応反応等をモデル系として、刻々と変化する環境への応答反応の観点から植物の持つ機能を捉え直し、生命システムを4次元のダイナミクスとして解明していくことも目指しています。

 具体的な研究テーマは以下のとおりです。

  1. ポストゲノム的なアプローチによる出芽酵母のシグナル伝達機構の研究
  2. 出芽酵母細胞の形態形成の制御機構の研究
  3. 細胞周期チェックポイント制御機構の研究
  4. シアノバクテリア、シロイヌナズナ等の光合成生物を用いた環境応答の分子生物学的研究
  5. 光合成反応の素過程から捉えた高等植物の低温障害の分子機構の研究

連絡先

大矢 禎一 (ohya@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3650

園池 公毅 (sonoike@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3652

生命応答システムホームページ (別ウィンドウに表示します)

植物・光合成・環境応答に関しては 光合成の環境応答のホームページ もご覧下さい。 (別ウィンドウに表示します)

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遺伝システム革新学分野

教授 雨宮 昭南   助教授 藤原 晴彦   助手 西野 敦雄

 遺伝システム革新学分野は、2研究室からなる。

 雨宮研究室(発生機構生物学研究室)では、動物の発生過程におけるボディプランの確立機構を研究している。基本テーマは、以下の3項である。
1)初期発生過程における、胚の動物極-植物極に沿った誘導シグナルと抑制シグナルのカスケードの解析。--- 初期発生においては、割球間のシグナルの連鎖反応によって、発生運命の決定が行なわれる。この各シグナル分子(リガンド)とそのリセプターの同定、シグナルの放出される時期の特定、細胞内での情報伝達カスケードなどを研究する。2)体の左右非対称性を生み出す機構の、発生過程における解明。--- 我々の体は、外見上は、左右対称にできているが、内臓の配置などには、左右の非対称性が見られる。このような左右非対称性が、発生過程でどのように生じるかを、胚操作による左右非対称性の撹乱と、左右非対称性に関与する遺伝子の分離によって研究する。3)体の前後軸形成に関与する遺伝子の発現パターンの研究。--- 体の前後軸に沿って、特に頭部(脳)、脊索および体節と関連して発現する遺伝子を研究する。
 研究材料としては、発生学上の知見の最もよく蓄積されているウニと、棘皮動物の中で、原始的な形質を最もよく保存し、生きた化石とされるウミユリ類を用いる。手法としては、細胞追跡、割球の分離ー再結合、幼生の切断などの胚操作を中心とした実験発生学的方法と、分子生物学的方法を結合する。

 藤原研究室(適応分子機構学研究室)では、地球上で最も多様な種を擁する昆虫を対象に、環境に適応した形態・形質の進化と昆虫に特異な染色体構造を分子生物学的な手法を用いて解析している。(1)擬態・変態の分子機構:紋様の変異は動物の進化の過程で生活史や行動戦略の中に組み込まれ、ある種の昆虫などでは”擬態”として生体防御に役立っている。そこで、幼虫体表の紋様に関する多くの突然変異系統が存在するカイコを用いて、紋様形成の遺伝的制御機構を研究している。一方、昆虫の多くは生息環境に適応した形で変態する。そこで変態時に進行する翅の形成に特に着目し、末梢ホルモンと態形成の関連、変態時の組織分化における遺伝子の活性化機構を研究している。(2)レトロポゾンに依存したテロメア:昆虫の染色体には、分散型動原体、レトロポゾンタイプのテロメアなど、通常の生物にはない特徴的な構造が見つかりはじめている。テロメアは通常、逆転写酵素様のテロメラーゼによって維持されているが、テロメラーゼがなく、ある種のレトロポゾンが肩代わりしている昆虫がいる。我々は特にテロメア領域に特異的に挿入するレトロポゾンの解析を通し、テロメアの機能と起源を探っている。

連絡先

雨宮 昭南(shonan@k.u-tokyo.ac.jp)

理学部進化系統学研究室ホームページ(別ウィンドウに表示します)

電話 04-7136-3656

藤原 晴彦(haruh@k.u-tokyo.ac.jp)

藤原研究室ホームページ (別ウィンドウに表示します)

電話 04-7136-3659

西野 敦雄 (nishino@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3657

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動物生殖システム分野

教授 三谷 啓志   講師 尾田正二

 生命は、その誕生以来、有害な紫外線に曝され続けてきた。また、様々な生命現象の過程で生じるラジカルも、遺伝情報の大いなる脅威となっている。生命の存続には、これらゲノムを監視し、損傷を見つけしだい復原する機構が必須であった。監視をくぐり抜けたり、誤って修復されたDNAの傷は、突然変異や発がん・老化の原因につながるが、一方で、生殖細胞における環境適応的な遺伝子の変革は、種の進化の大きな原動力になると考えられる。メダカは、ゲノム解析が進み、種内変異に富むモデル生物として注目されている。本分野では、メダカを主な材料として以下のような課題に取り組んでいる。

○ メダカゲノム構造の解明
メダカの詳細な遺伝子地図やゲノムシーケンスに基づき、脊椎動物のゲノム構造を比較する。遺伝子の機能変化成立に関わるゲノム変化を解析し、突然変異生成機構との関連を明らかにする。

○ 遺伝情報維持機構突然変異体のスクリーニングと原因遺伝子のポジショナルクローニング
メダカから電離放射線高感受性突然変異体をスクリーニングし、その原因遺伝子の同定とその機能を分子から個体レベルにわたり解析する。

○ 野生集団の多様性を支える遺伝子の同定と機能の解析
野生集団間や突然変異体に見られる形態・環境適応能などの多様性を解析し、それに関わる遺伝子の機能を明らかにする。

○ 生殖細胞にみられるゲノム維持機構の解明
生殖細胞における突然変異がどのように排除され、あるいは維持される結果、動物の生殖システムがどのように進化してきたかを、配偶子形成、受精の細胞生理学的な解析、関連遺伝子の突然変異体の探索を進めるとともに、本研究室で維持されている多くの野生集団、メダカ近縁種において生殖システム、生殖戦略を比較解析し、ゲノム構造と相関させて理解することを目指す。

連絡先

三谷 啓志 (mitani@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3671

尾田正二 (odasho@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3663

動物生殖システム分野ホームページ

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植物生存システム分野

教授 河野 重行 助手 山本 真紀

 地球上の生物は、その40億年の進化のなかで、5回の「大絶滅」を経験したといわれています。恐竜が絶滅してから6,600万年、6度目の大絶滅の引き金は、人類の手によって、すでに引かれてしまったのではないかと思われる徴候が次々に現れています。温暖化、大旱魃、森林火災、砂漠化、食糧難、そして環境ホルモン、人類だけでなく全ての生物が生存の危機に直面しています。こうした危機感のなかで、地球上に生物が存在することの意味を改めて問い直そうが、私たちの一風変わった研究分野名の由来なのです。

 今日見るような極めて複雑な体制の生物は、真核細胞が出現して初めて可能になったと考えられます。本研究分野では、真核細胞が原核生物から誕生するに至った経緯、原始的な微細藻類や菌類が高等植物へ進化した経緯を、核とオルガネラのゲノムの構造と機能という観点から解析し、真核生命の起源とその存在意義を明らかにしようと考えています。また、性と生殖を結びつける減数分裂の起源と進化に注目し、生殖サイクルに組み込まれた性がいかにして植物の雌雄や生殖細胞の差異を生み出し、多様な性による生存戦略が可能になったかを、細菌やオルガネラから高等植物までの進化の各段階で総合的に解析し、性の起源とその存在意義を分子と細胞の言葉で明らかにしようと考えています。

 実際の研究は、原核生物から真核生物への進化の分子機構を、下等な真核微生物を用いて解析しています。オルガネラの起源が原核生物にあるとするなら(共生説)、その痕跡は下等真核微生物のオルガネラに現在も残されているはずで、それを探そうとオルガネラのゲノム解析は今も盛んに行われています。これに対する私たちの研究戦略は、オルガネラの動態そのものなかに進化の痕跡を見出そうとするものです。オルガネラは分裂・増殖し、融合し、遺伝します。こうした諸過程の分子機構を解析するなかで、悠久の進化の歴史に刻み込まれた共生の痕跡を明らかにできるはずです。例えば、私たちが、真正粘菌のミトコンドリアで見つけたプラスミドは、ミトコンドリア同士を融合させ、融合相手のミトコンドリアDNAに自分自身を挿入する能力をもっています。この過程はFプラスミドによって制御される大腸菌の接合過程に酷似しています。ミトコンドリアの祖先が大腸菌に見られるような「性」を獲得していたなら、その痕跡(ミトコンドリアの性)は今も残されているはずです。そこで、このプラスミドは、ミトコンドリアのFプラスミドという意味を込めて!mFプラスミドと呼ばれています.

 私たちの研究分野では、このmFプラスミドを手がかりに、原始的な性の役割とその起源を明らかにしようと考えています。また、以下のように、オルガネラの分裂増殖から老化との関係、さらには高等植物の「性染色体」までを扱おうと考えており、研究対象は極めて多彩です。

(1) mFプラスミドが引き起こすミトコンドリアの「融合と組換え」の分子機構
(2) オルガネラの分裂・増殖に関わる原核生物由来の「分裂遺伝子」の探索と解析
(3) 細胞の老化と短命死に係わるミトコンドリア「ゲノム損傷」の分子機構
(4) 高等植物の雌雄を決定する性染色体の構造と機能、および「性決定遺伝子」の探索

連絡先

河野 重行 (kawano@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3673

植物生存システム分野ホームページ

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人類進化システム分野

助教授 河村 正二

  本分野では重要な感覚情報をもたらす色覚に注目し、進化学的視点に立って霊長類から魚類を含む多様な生物を研究対象とし、分子生物学的解析から社会生態学的フィールドワークを含む幅広いアプローチによって、色覚進化の解明を中心に研究教育を行なっている。
  色覚には動物群により際立った多様性がある。この多様性には網膜視細胞中の光受容分子である視物質が重要な役割を果たしている。我々は色覚の多様性を動物の棲息環境への適応としてとらえ、それに関わる遺伝子の進化機構を明らかにしたいと考えている。そのために

1)視物質レパートリーの多様性
2)視物質の細胞特異的発現をもたらす発現調節機構
3)視物質変異と行動

という3つ視点から研究を進めていく。具体的内容は以下の通り。

 1)視物質遺伝子の重複・欠失とアミノ酸置換の蓄積によって、視物質のレパートリーは生成・消滅を繰り返してきた。この進化の過程を明らかにすることが主なテーマである。具体的には新世界ザルと原猿類といった霊長類、そしてゼブラフィッシュ、メダカ、グッピー、トゲウオといった硬骨魚類に焦点を絞り、ゲノムライブラリーからの視物質遺伝子の単離、サザン法・染色体マッピング法等による遺伝子構成の分析、in situ hybridizationや抗体染色等による発現プロファイルの解析、塩基配列の分子系統学的比較解析、祖先配列の再構築、培養細胞系を用いた視物質再構成、再構成視物質の吸収光特性の解析、部位特異的変異導入による重要アミノ酸部位の特定といった内容で研究を進めていく。

 2)視物質遺伝子の細胞種特異的発現制御機構の解明をめざす。遺伝子重複とアミノ酸置換により視物質のレパートリーが増えても、それらがそれぞれ異なる視細胞で発現しなければ色覚にはつながらないからである。そのために発生遺伝学的解析に適し且つ優れた色覚系をもつゼブラフィッシュとメダカをモデル動物として選定した。生体を用いて視物質遺伝子のプロモーター領域をgreen fluorescent protein (GFP)レポーター等により同定し、その領域に働く転写因子群を相互作用を手がかりに探索していく。このためにマイクロインジェクション、トランスジェニックラインの樹立、フローサイトメトリー、in situ hybridization、抗体染色、DNA-タンパク質相互作用の検出などの手法を駆使していく。

 3)色覚が個体や集団の行動に対してどのように関わっているかを、視物質遺伝子の変異の観点から検討する。そのために自然界に実在する色覚の種内変異を利用し、色覚と行動の関連を検討する。中南米に棲息する新世界ザル類は色覚の種内変異が非常に大きいことで脊椎動物中特異な存在であり、格好の研究対象といえる。コスタリカ共和国・サンタロサ国立公園の野生オマキザル及びクモザル集団に対し、糞から視物質遺伝子を分析し色覚型判定をおこない、行動観察により色覚と行動、特に社会行動との関連性を検討する。

 これらのプロジェクトを推進するために、生物進化に強い関心をもち、新しい実験法・研究法にも果敢に挑戦するやる気ある人材を求めている。

連絡先

河村正二 (kawamura@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-5422

河村正二研究室ホームページ(別ウィンドウに表示します)

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資源生物制御学分野

教授 永田 昌男   助教授 青木 不学

分野の説明

 生物の生存は他生物との相互関係なしにはありえない。人類は、食料、衣類、住居、その他様々な目的のために他生物の生産物を利用してきた。過去のみならず、未来においても資源生物の利用と新たな資源生物の開発は必要とされる。本分野では、動物関連の資源生物、とくに哺乳動物と昆虫を当面の研究対象として、資源動物としての機能の制御、機能性の向上、新たな機能の開発および資源生物利用における諸問題の解決を目標とする。そのための基礎的研究として、まず動物の構造、機能ならびに発生機構を明らかにする事が研究課題である。

研究テーマ

(1)昆虫の機能的特性と病原ウイルスの研究(永田)

 昆虫は種の数が100−200万種といわれ、進化の頂点にある哺乳動物と同様に地球上で繁栄している。昆虫が繁栄した1つの理由として、様々な環境条件への昆虫の高い適応能力がある。例えば、不適環境を耐える休眠、幼虫と成虫が全く異なった生活を営む変態、高い増殖力などがあげられる。これらの昆虫の能力を支える構造、機能的基盤には資源生物への応用が可能なものが秘められていると考える。昆虫のもつ生理生化学的特性を追究することを1つのテーマとする。
 一方、昆虫の繁栄は食料など人類を支える生物生産を脅かしてきた。農薬利用によって生物生産の安定が確保されたかにみえたが、抵抗性昆虫の出現、生態系の破壊、環境汚染などの問題が顕在化している。自然界における昆虫の数の制御には病原微生物の存在がある。昆虫を宿主とするウイルスの感染・増殖や昆虫の生体防御などの機構を調べることで、昆虫を制御する方法を考え、昆虫との共生を図っていくこともテーマとする。

(2)哺乳類初期胚の遺伝子発現調節機構(青木)

 受精直後の初期胚は遺伝子発現を完全に停止した状態にあり、一定時間あるいは一定回数の分裂の後に初めて遺伝子の発現が見られる。そして、その後の発現パターンは、あらかじめ定められた各生物種特有のプログラムにしたがって、ほぼ不可逆的に進行する。本研究テーマは、この遺伝子発現の最初のプログラムがどのようにしてスタートし、そしてその進行がどの様に調節されているかを明らかにすることであり、実験系としてマウスの初期胚を用いる。
  最近、さまざまな動物種でクローン作成の成功が報じられている。これは、不可逆的に遺伝子発現のプログラムが進行した体細胞の核を未受精卵に移植して、プログラムを「リセット」して初期化することに成功したことによるものである。しかし、この成功は多分に偶然の要素を含んでおり、何故「リセット」に成功したのかは不明であり、それがその再現性の低さの原因の1つになっている。本研究テーマによる知見はこのクローン動物作成についても有用な知見を与えることが期待される。

連絡先

永田 昌男 (nagata@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3694

青木 不学 (aokif@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-5424

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資源生物創成学

教授 難波 成任   助教授 宇垣 正志   助手 西川 尚志

 我々人類は、文明の急速な進歩とともに、豊かな消費資材に囲まれた便利で快適な生活を送れるようになった。しかしそれと引き換えに、資源の枯渇 という切実な問題を考えねばならなくなった。この状況を克服するためには、様々な能力を持った生物を遺伝資源の宝庫として積極的に利用し、新たな資源生物を創成するための生命科学の研究が求められている。そのためには、新たな先端的研究手法の開発が必要であるが、近年急速に進展した分子生物学や細胞生物学により、生命現象を分子の言葉で説明することが可能となり、その真理に関わる数多くの成果があげられつつあることから、それらの手法を利用することが有望と考えられる。しかし、その成果が実際の我々の生活に役立つようになるまでは、さらに多くのステップを踏まねばならない。

 本研究分野では、細菌やウイルスをはじめとする微生物ゲノムの構造と機能を調べ、これらの微生物が細胞内に寄生あるいは共生する際に存在すると考えられる分子認識機構や病原性の決定機構および宿主決定の分子機構の解明を目指す。
 具体的には、細胞の大きさもゲノムサイズも地球上で最小の単細胞微生物で、600種以上の植物とヨコバイ類をはじめとする昆虫の両方で増殖し、植物に感染して成長を抑制したり生殖器官を変異させたりする植物マイコプラズマを用いて研究を行う。植物マイコプラズマのこれらの性質は、植物の進化にも影響を与え、感染細胞内で各小器官と共に共存しつつ、宿主に適応しながら進化を遂げ今日に至ったと考えられ、その起源と共に興味深い問題を提起している。そこで、植物マイコプラズマが宿主細胞内で共生あるいは寄生する際に発現する各種遺伝子(病原性遺伝子、宿主細胞と植物マイコプラズマとの間の相互認識や宿主細胞の制御に関わる各種遺伝子など)とその発現メカニズムを明らかにすることにより、宿主決定の分子機構の解明に迫る。
 また、植物ウイルスはその80%以上がRNAウイルスで、複製の際にエラーの多い一本鎖RNAをそのゲノムとするものがほとんどである。それらのゲノム上の変異及び保存性の解析から、植物ウイルスはその出現以来、宿主に対して巧妙に適応して今日に至ったと考えられる。地球上でもっとも小さな微生物「ウイルス」の進化とその起源について探るとともに、その病原性・ウイルスの輸送・宿主決定など各種の重要な機能に関与する遺伝子を解明し、それらの発現機構を調べる。
 これらの基盤的研究により得られた知見を基に、微生物由来の植物発現ベクター系の新規構築のほか、未知の遺伝子を単離しそれらの機能を明らかにすることにより、新たな機能を持った遺伝子の同定を試みる。これらの成果を用いて、環境ストレスや病害虫および薬剤に対する抵抗性のほか、高収量・優良形質等の新機能を付加した遺伝子組換え植物などの、新規有用生物の創成につながる技術を開発する。

連絡先

難波 成任 (snamba@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3700

宇垣 正志 (ugaki@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3702

西川 尚志 (nisigawa@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3703

資源生物創成学研究室ホームページ(別ウィンドウに表示します)

農学部生物資源創成学研究室ホームページ (別ウィンドウに表示します)

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植物全能性制御システム解析学分野

教授 馳澤 盛一郎    

 植物は分化した一個の体細胞やさらに細胞壁を取り除かれて極性を失ったプロトプラストからも個体を再形成する能力(全能性)を保持しています。植物細胞は分裂し、成長し、分化して多様な形態と機能を持つようになり、それらの集積により最終的に植物個体が構築されます。そこで本研究室では個々の植物細胞がどの様に形作られるかかれば、個体の構築機構が理解できるのではないかと考えて、植物細胞の形態形成の研究を行っています。
 植物細胞の外側には多糖類によって構成される細胞壁がありますが、この中のセルロースの細い糸(微繊維)の束が一種のタガとして働き、細胞は繊維の向きに対して直角の方向に成長します。セルロース微繊維の配列の方向(配向)は細胞表層に存在する微小管(表層微小管)の配向によって決められることが知られています。つまり、微小管の向きが最終的には細胞の形を決めるのです。このように、微小管は細胞の成長や分化にとって重要であり、その形成・配向の制御機構を理解することが必要です。そこで、表層微小管が「いつ」、「どこで」、「どのように」形成されるかについて、細胞の分裂周期の同調が容易なタバコの培養細胞BY-2 を用いて解析しています。表層微小管は細胞の分裂周期のM 期とG1 期の境界の時期に形成され、G2 期からM 期に入るときに消失します。最近ではGFP(Green Fluoresent Protein)を微小管のマーカーとして用いることで、この表層微小管の消失・再形成を含むM 期を通した微小管の動態を、高等動植物では世界で初めてリアルタイムで観察することに成功しています。また、微小管以外の細胞骨格系(アクチン繊維など)も植物細胞の形態形成に関わっており、それらについても研究を行っています。さらに、植物細胞の中で大きな容積を占める液胞について、分裂周期や細胞伸長時の動態を観察することで、植物細胞における液胞の形態形成への寄与について解析を行っています。
 細胞骨格や液胞はまた環境変化に対する植物の応答・適応をえる上でも重要です。その例としてソラマメの気孔の開閉における表層微小管の役割について解析を行っています。気孔は環境条件や植物の生理状態の変化に応じて開閉運動を行い、厳しい環境から植物自身を守る働きをしています。通常、気孔は光のもとで開き、暗所や高い二酸化炭素濃度のもとで閉じます。また、乾燥や大気汚染ガスなどに曝されると気孔は速やかに閉じます。この気孔の開閉と液胞の関わりについては研究が進んでいますが、微小管の関わりについても検討したところ、朝に気孔が開くときには孔辺細胞の表層微小管の放射状ネットワークが必要なこと、気孔が閉じる夕方にはこの微小管のネットワークが消失するという日周期があることなどがかってきました。このように本研究室では、化全能性を持つ植物細胞について細胞生物学の視点から解析を行うことで、植物細胞の形態と機能の制御機構を解明しようと試みています。


主な研究テーマ

・ 細胞骨格による植物細胞の形態形成および分化機構の研究
・ 細胞骨格、液胞、細胞壁による植物細胞の形態調節機構の研究
・ 日周期および環境応答に関する気孔開閉運動の制御機構の研究

連絡先

馳澤 盛一郎 (hasezawa@k.u-tokyo.ac.jp)

電話 04-7136-3706

馳澤研ホームページ

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各研究分野についてのご質問は、各担当者にお願いします。 このページ全体に付いてのご意見、ご質問は

濱田光浩 (mailto:m-hama@k.u-tokyo.ac.jp)

宛てにお願いします。


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