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上田 卓也 うえだ たくや/教授/生命科学研究系
メディカル情報生命専攻/分子医科学分野/
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/molbio/index.html

略歴
1979年3月に東京大学農学部農芸化学科を卒業、1984年に東京大学大学院農学系研究科農芸化学専門課程博士課程を修了。1984年マックス−プランク実験医学研究所博士研究員、1986年横浜市立大学木原生物学研究所助手、1988年東京工業大学総合理工学研究科生命化学専攻助手、1990年生命理工学部助手、1992年東京大学工学部工業化学科助手、1994年大学院工学系研究科化学生命工学専攻講師、1996年助教授、1998年新領域創成科学研究科先端生命科学専攻助教授を経て、1999年4月より現職。農学博士(東大)
教育活動
大学院:生命分子医科学
学部:分子細胞生物学II
研究活動
生命活動は、遺伝情報を蛋白質へと「翻訳」することによって支えられている。この「翻訳」プロセスのメカニズムについての基礎と応用の研究を、進化の視点から進めている。

1)遺伝暗号に関する研究
 原始地球上での塩基とアミノ酸の関係の成立過程の解明のために、実験室内進化系を用いて、核酸−蛋白質間の相互分子識別能力の可能性を検討している。

2)生体外蛋白質合成系を利用した新規の進化システムの構築
 ランダムな配列を持ったペプチドのプールからの新機能や高機能性のペプチドの探索は、医薬をはじめ多くの分野でその重要性が指摘されているが、基盤となる技術の開発が不十分ではない。すでに、細胞内の蛋白質合成系の構成因子を精製し,試験管内で十分に活性を保持したシステム(PUREシステム)として再構築することに成功している。(文献1)このシステムを発展させ、新規ペプチドの創製の基盤技術として完成させることを目指している。

3)生体外蛋白質合成系によるバイオバザードフリーの有用物質生産
 現在、さまざまの有用蛋白質は組換えDNA技術によって生産されているが、生物災害の可能性を完全に排除することは困難である。PUREシステムは、組換えDNA技術によらない有用蛋白質生産のシステムになるのではないかと、期待している。現在はその生産能はまだ十分ではないものの、再現性においてきわめて優れている。現在、生産性の高いシステムとして改良を進め、バイオハザードフリーの蛋白質生産システムとして完成を目指している。

4)共生とオルガネラ・核のクロストーク
 ミトコンドリアは、約10億年前の共生というイベントによって生まれたオルガネラである。このオルガネラと核との情報の交換のメカニズムの解明の研究を進めている。
[文献]
1)Shimizu Y. et al Nature Biotechnology 19 751-755, 2001.
その他
主な所属学会は、生化学会、分子生物学会、蛋白質科学会など。
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Figure: キット化されたPUREシステム(Classic version)
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将来計画
原始地球上の生命の誕生を解明することは、単に生物学のみならず人類の最大の夢ではないだろうか?ゲノム科学などの生物学の爆発的な発展は、現在までの生命の歴史をたどり、今後の生命の未来を考えることを可能にしつつある。こうした、生命の起源と進化についての研究を、ライフワークとしたいと考えている。特に実験室の中で、生物を分子から組み立てることが実現できるのではないかと、夢見みている。こうした荒唐無稽ともいえるゴールに到達するためには、精緻な生物のメカニズムを十分に理解する地道な研究こそ重要である。細胞の蛋白質合成系は、車でいえばエンジンに相当する。まずこのエンジンの設計思想を理解したいと考えている。柏キャンパスというフロンティアにおいて、こうした土台作りとなる研究を行い、さらに発展させることにより、生命の創成という夢の実現の可能性にチャレンジしたいと考えている。また。こうした基礎研究から、さまざまなテクノロジーが誕生し、21世紀後半に花開くことを期待している。
教員からのメッセージ
IT革命やらで、膨大な情報が身の回りを飛び交う時代になろうとしている。生物の素晴らしい点は、外界の刺激を適当にやり過ごす、高度な「いい加減さ」ではないだろうか。自らの欲するものに基づいて外部刺激を取捨選択する生物的能力を、今後さらに磨きをかける必要になってくるのであろう。決して、外部の情報にあわせて、自らを作り変えていけない。その意味で、中途半端な勉強のし過ぎに注意して欲しい。自らの心の動きに耳をすまし、良く考えることを、大学院時代に習慣づけていただきたいと思う。
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