spacer


佐々木 岳彦 ささき たけひこ/准教授/基盤科学研究系
複雑理工学専攻/複雑系実験講座/複雑物質化学分野
http://sas.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1992年東京大学大学院理学系研究科化学専攻 博士課程修了(博士(理学)), 東京大学大学院理学系研究科助手を経て 1998年より現職。
教育活動
大学院:表面物性化学
理学部:物理化学実験・物理化学演習を分担
研究活動
 固体表面は電子デバイス作製、ガスセンサー動作、触媒反応など、種々の表面過程の場となっており、固体表面上の化学反応を解明することは、新機能発現のために重要な課題となっている。電子はエネルギー制御、選別が容易に行えるとともに、物質との相互作用の断面積が大きいために固体表面の諸性質を調べるためのプローブとして最適であり、これを用いて以下の研究を行っている。

1. 温度制御型電子刺激脱離イオン観測装置を用いた表面反応のリアルタイム観測
 電子線を固体表面上の吸着系に照射すると化学結合が切断されてイオン種が化学結合の方向に脱離し、この角度分布(電子刺激脱離イオン角度分布、 ESDIAD)を測定すると吸着種の表面上での配向を知ることができる。この手法は従来、静的な状態の観察に使われてきたが、下図に示す装置を開発し、温度制御された状態で進行する表面反応のESDIADをリアルタイムで観測することができるようになった。反応の進行に応じて分子の配向が変化する様を捉えることができるようになった訳である。このシステムをRu(001)上のメタノール(CH3OD) 分解過程に適用したところ、メトキシの示すC-H結合に由来する角度分布が前吸着酸素の有無により大きく影響を受けていることが観測された。前吸着酸素がメトキシの配向を規制することにより、COへの分解を抑制していることがわかった。現在は、このシステムを有機金属分子が関与するエピタキシー過程に適用するための改良を進めている。

takehiko_sasaki
Figure: 温度制御型電子刺激脱離イオン観測装置のブロック図
2. 高分解能電子エネルギー損失分光法(HREELS)による表面過程の研究
 電子線の固体表面上での非弾性散乱により吸着系の振動励起が起こるので、エネルギー損失スペクトルを測定すれば吸着系の振動スペクトルを測定することができる。赤外分光法と比較して感度が高く、低波数(およそ150cm-1) まで測定できることが利点である。この方法を低速電子回折等と併用して、異種の分子の組み合わせで共吸着秩序構造が発現し、振動スペクトルが変化を受け、化学過程にも影響が大きいことを見いだしている。特に、Cu(111)上のNOとアンモニアの共吸着系で、NO伸縮とアンモニア対称変角の結合モードが観測されるという珍しい現象を報告している。現在は、Mo(112)という異方性のある表面を酸素原子、リン原子で修飾した場合の化学過程について調べている。X線・紫外光電子分光法による元素分析、電子状態密度測定もあわせて行っている。

3 密度汎関数法による表面過程の解明と活性構造の設計
 以上に述べた実験的手法を用いるとともに、量子化学計算法の一種であり、重元素にも有効なことで知られている密度汎関数法による計算化学的検討も行い、表面化学過程の実験、理論両面からの理解を目指して研究を行っている。特に、第一原理計算を専門とする理論グループとの共同研究で、光触媒として有効なことが知られている二酸化チタンの表面の化学吸着状態や欠陥構造の電子状態の解明を進めている。計算化学的手法を用いる究極の目的は、活性構造を設計し、それを実験により実証することにある。

4 表面固定化触媒の開発と有機合成反応への応用
 従来から固体触媒の担体として使用されてきているシリカやアルミナの表面に存在している水酸基を利用して、あらかじめ設計した有機分子や有機金属分子との間で架橋反応を行うことで、担体表面上に、活性点を固定化することができ、構造を規定することが可能である。このような固定化触媒を調製した上で様々な有機合成反応に適用し、高活性を保ちながら再利用可能な触媒を開発している。これは現在、環境問題からの要請で重要な概念となっているグリーンケミストリーへのソリューションを与えるものである。
[文献]
その他
spacer
将来計画
 以上のように単結晶または、微粒子表面を舞台にした研究を行ってきているが、表面上に機能性分子を配列することで、新しいナノ分子デバイスの作成が可能となる。現在、分子デバイス作成のための評価関連装置の立ち上げが終了し、デバイス作成、動作評価を開始している。観測装置を取り扱うだけでなく、化学合成手法を取り入れた新しい物質相を創り出す研究を展開していきます。
教員からのメッセージ
 化学反応過程を解明したい、化学反応を制御したい、化学反応を通して新しいものを創り出していきたいという人に是非参加していただきたいと思います。
top