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味埜 俊 みの たかし/教授/環境学研究系
社会文化環境学専攻/循環環境学大講座/環境微生物学・排水処理工学・サステイナビリティ教育
http://www.mwm.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1978年3月東京大学工学部都市工学科卒業
1980年3月同大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程
1983年3月同博士課程修了(工学博士)
1983年4月東京大学工学部都市工学科助手
1985年4月東京大学工学部都市工学科講師
1989年4月東京大学工学部都市工学科助教授
1989年5月〜1991年5月タイ国アジア工科大学院環境工学科助教授
1996年5月〜1997年2月デルフト工科大学生物工学科客員研究員
1997年4月東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授
1999年4月より現職(東京大学大学院新領域創成科学研究科・教授)
2002-3年にスウェーデンチャルマーズ大学 水・環境・交通学科客員教授
2005年東京大学サステイナビリティ学連携研究機構兼任教授
教育活動
社会文化環境学専攻で教育に当たるとともに、2007年に新しく設置された「サステイナビリティ学教育プログラム修士課程」の責任者を務める。
大学院社会文化環境学専攻:環境技術システム論
大学院サステイナビリティ学教育プログラム:システム思考と合意形成演習、サステイナビリティ論
工学部都市工学科:都市環境概論、水質変換工学
日本大学土木工学専攻:環境工学IV
研究活動
1.サステイナビリティ教育:
新領域創成科学研究科に2007年に設置された「サステイナビリティ学教育プログラム修士課程」におけるカリキュラム構築を通じ、大学で行うべきサステイナビリティ教育のあり方を検討している。このプログラムでは、サステイナブルな社会の構築をめざして国際的に活躍できる専門家の育成を目標としている。ここで言うサステイナブルな社会の構築とは、地球、社会、人といった異なる時空間スケールでの持続可能性の追究を目指すとともに、将来世代、次世代、現世代といった世代間の公平性(intergeneration equity)の確保、先進国と開発途上国といった南北格差の是正により、生態系を損なうことなく人々の生活の質(quality of life)を維持できるような新しいシステムを目指すものである。そのための実験的な取り組みとして、世界各国の学生を対象にした短期集中型の教育プログラムであるIntensive Program on Sustainability (IPoS、タイにあるアジア工科大学院(AIT)と共同で運営)の実施に深く関わっている。これを通じてサステイナビリティに関する実践的プログラムの設計や、多様な価値観を前提とした国際社会での相互理解のための教育手法などについて研究している。
2.下水道システムの将来像に関する研究:地球環境を常に配慮すべき時代にあって、水循環のあり方、水環境管理においてどう Sustainabilityを保障していくか、また経済成長を後追いするように対症療法的に整備されてきた水環境管理システムをどう本質的に見直すかを、主に下水道システムに関わる事柄を中心に検討している。循環型社会のなかでの下水道システムの位置づけ、下水道の持つ資源(空間・水・エネルギー・有価物質)の有効利用、汚泥の処理・処分・有効利用、下水道システムのサステイナビリティ指標による評価などが具体的研究テーマとなる。
3.生物学的排水処理プロセスの微生物学(とくにりん・窒素の除去)
これまで、微生物を用いた廃水処理技術に関する基礎研究を長く手がけてきた。とくに生物学的リン除去法(文献1)に関する研究では、リン除去を担うポリリン酸蓄積微生物のリン代謝機構を扱った論文で1986年に国際水環境学会ジェンキンス賞(最優秀論文賞)を受賞し、また、ポリリン酸蓄積微生物がなぜ優占するかを説明した有機基質の代謝モデルは国際的にも「MINOモデル」として定着している。さらに、生物学的りん除去関する総説(文献2)は、Water Research誌で創刊以来もっとも大きな影響を与えた10論文の一つに選ばれた。生物学的りん除去法の理論的基礎となる微生物学的な原理機構を提示したことはその後の運転管理や設計の方法に大きな影響を与え、また、廃水処理プロセスの数学モデルの整備という国際的なプロジェクトにも生かされた(文献3)。工学的問題意識に端を発して廃水処理プロセスを微生物学的・生物化学的に解析することは、結果的に全く新しい生物化学的な代謝機構や細胞内ポリマーの発見など、微生物学的な面でも新規性の高い研究につながっている。廃水処理という場が微生物学の研究対象としても未知の情報を多く含み非常におもしろいということも示せたと思っている。現在は以上に加え、環境中や廃水処理系における遺伝子レベルでの微生物群集構造の解析を、新しく発展してきた分子生物学的なツールを用いて進めつつあり、廃水処理を担う微生物の相互関係・複雑な群集の成立要因・廃水処理としてのプロセスの機能と群集構造との関連を調べている。廃水からの生物分解性プラスチックの生産・産業排水処理・リン窒素の除去のための新技術などが具体的な研究対象となる。
[文献]
1) Robert J.Seviour, M.Onuki, and T.Mino: The microbiology of biological phosphorus removal in activated sludge systems, FEMS Microbiology Reviews, Vol.27, No.1, pp99-127 (2003)
2) M. Henze, W. Gujer, T. Mino, and M.C.M. van Loosdrecht: The Activated Sludge Models, Scientific and Technical Report No.9, International Water Association (IWA) Publishing (2000)
その他
International Water Association, International Society on Microbial Ecology, 土木学会、日本水環境学会、環境システム計測制御学会
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将来計画
2つの方向性を考えている。1つは日本あるいはアジアから発信する「サステイナビリティ学教育」のベンチマークカリキュラムを構築したい。「Sustainability」という言葉の意味が多くの場合に誤解されており、本来非常に多様な側面を持つべきこ言葉なのにあまりに自然科学的・工学的な議論に終始しているように感じている。そもそも何をする事がサステイナビリティにつながるのかについてはっきりわからないことが多いのにどのようにしてサステイナビリティ教育を行えるのだろうか。その方法論の確立や体系化が必要である。自分の研究活動の成果が何らかの形でSustainableな社会づくりのための教育の体系化に役立つような努力をしたいと思っている。もう一つは、排水処理に関する微生物生態学的基礎研究の充実であり、基礎的な解析の中から、環境制御のための新しいバイオテクノロジーの開発や、多様な機能が求められるようになってきた生物学的廃水処理技術を循環型社会の中で高度化・最適化するためにどのように微生物の機能を有効に使ってゆけばよいかについて研究してゆきたい。
教員からのメッセージ
サステイナビリティ学教育プログラムに関わるようになって、サステイナブルな社会とはどういう社会なのだろうと考える機会が多くなりました。よどんだ社会がサステイナブルであり得ようが無く、経済成長に依存できない社会において人々を動かすインセンティブを「お金」や「効率」意外にどう作って行くかが問われていると思います。つまり、社会のダイナミクスをどう作るかがサステイナビリティの鍵です。この問いに対する答えをみんなで考えて行きたいものです。ところで、私は多様な社会が好きです。多様であるためには個性を持った「個」が集合しなくてはなりません。自分の意志がどこにあるのか常に意識しながら行動してほしいものです。そして、多様さが社会のダイナミクスを作り出すヒントを与えてくれるのではないかと感じています。
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