spacer


藤尾 伸三 ふじお しんぞう/准教授/環境学研究系
自然環境学専攻//海洋環境学協力講座/
http://cer.ori.u-tokyo.ac.jp/fujio/

略歴
1987年3月 京都大学理学部地球物理学科卒業,1992年3月 京都大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程終了(博士(理学)),1992年4月 東京大学海洋研究所助手,2001年5月 東京大学海洋研究所附属海洋環境研究センター助教授(現職)
教育活動
自然環境学演習I(新領域):自然環境、環境評価、環境形成に関する文献発表、研究発表および討議を行う。
研究活動
海洋の大循環, 特に深海を流れる海流について研究を行っている. 海面にある強い海流は主に風によって形成されているが, 風の効果は海洋深層には及ばない. 深層は南極周辺や北大西洋グリーンランド沖で冷却されて沈降した水で満たされており, 限られた沈降場所から世界中に広がる循環が存在する. 沈降からもっとも時間を経た水が到達するのが北太平洋であり, 平均的には2000年以上を要する. 流れは弱いものの, 熱や物質を運ぶ輸送量は大きく, 地球温暖化など地球環境にとって重要な循環である.
海洋は陸上と異なり, 観測研究が難しい. 海面付近であれば, 近年は人工衛星などを利用して観測がなされるようになってきたが, 基本的には船舶を使っての現場観測が必要である. 数千mの深さの流れを測るには船からそれだけの長さのワイヤーやロープを吊しての測定になり, 現在においても容易でない. よって, 研究はこれまで観測と数値シミュレーションのふたつの手法をとって進めてきた. 観測は限られた海域ではあるが, 流れの詳細なデータを得ることができ, 一方, シミュレーションは大規模な海洋循環を捉えることができる. 両者は相補的である. これらについて, 2000年度日本海洋学会岡田賞の受賞講演の内容をまとめた文献1)に詳しい.
海域は現在は主に北太平洋を対象としている. ここは深層循環にとって最終到達点であるため, 流れが明確でなく, いまだにわからないことが数多い. 特に日本東方には日本海溝や伊豆小笠原海溝など複雑な地形が存在し, 深層流はそれらの影響を強く受けて, 複雑な流系を形成している (文献2). 世界の海で北太平洋深層がもっとも多くの海水を有することを考えれば, これらを定量的に把握することが海洋全体の輸送などを把握するためには不可欠である. 全体への影響は局所的な観測だけではむずかしいため, 数値シミュレーションを併用しながら研究を進めている (文献3).
[文献]
1) 藤尾伸三 (2001): 診断モデルと海洋観測による深層循環の研究, 海の研究, 10, 561-572.
2) Fujio, S, D. Yanagimoto and K. Taira (2000): Deep current structure above the Izu-Ogasawara Trench. J. Geophys. Res., 105, 6377-6386.
3) Fujio, S, and N. Imasato (1997): Prognostic simulation of the world ocean circulation and its comparison with diagnostic simulation. J. Oceanogr., 53, 283-297.
その他
所属学会:日本海洋学会(2003〜2004年度幹事),American Geophysical Union
spacer
将来計画
地球環境政策が経済に大きな影響を及ぼすようになった今日,海洋の持つ地球環境を制御する機能を活用した影響対策の立案とその評価が求められている. 未開拓の海洋の利用は人類の将来を決める. 海洋研究所海洋環境研究センターはこのような問題意識に立ち, 平成12年度に新設された. センターでは海洋環境の物理計測とともに各種化学トレーサーを活用して海洋環境変動を実測して10年程度の近未来の予測可能性を追求する. また, 海洋環境に関する総合的なデータベースを作り, 多分野との共同研究を推進する。海洋利用に関する基礎研究の成果を産業化して社会に貢献するを目指している.
新領域創成科学研究科の一員として, 今後とも環境学的・学際的な視野から海洋学の研究を進めていきたい.
教員からのメッセージ
海洋はわれわれにとってのフロンティアのひとつである. 海は多くの生命を育む豊かさと共に, 水産や資源という点でも人類にとって重要である. 特に, 深海は現代になってはじめて計測が可能になったという点で宇宙と匹敵する. いまだに未知の点が多く, 学生諸君の好奇心をかきたてる研究対象であろう.
top