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杉田 精司 すぎた せいじ/教授/基盤科学研究系
複雑理工学専攻/複雑系実験講座/巨視的複雑系分野
http://www.astrobio.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1992年3月東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻修士課程修了(理学修士)、1998年9月ブラウン大学大学院地球科学博士課程修了(1999年 5月Ph.D.授与)、1998年10月ブラウン大学博士研究員、1999年2月東京大学理学系研究科助手、1999年3月〜2000年6月アメリカ航空宇宙局エイムス研究センター招聘研究員、2004年1月東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授、2009年6月同教授 (現職)。
教育活動
大学院:複雑地球惑星科学、比較惑星学基礎論、複雑理工学実験概論(分担)
学部: 比較惑星学基礎論、地球惑星物理学特別演習(分担)
研究活動
当研究室では、主に地球や惑星の起源・進化に関する研究しています。その中でも天体衝突に伴う物理・化学現象の理解に力を注いでいます。最近取り組んでいる主な研究テーマは、以下の通りです。

1.天体の高速衝突を室内実験で再現するための実験技術開発。
  1.1. 衝突蒸気雲の熱力学状態(温度、圧力、化学組成 etc)の測定方法の開発

  1.2. 高エネルギーパルスレーザー照射による高温高圧ガスプリュームの生成技術の開発(衝突蒸気雲の模擬実験)

2. K/T境界期(中生代と新生代の境界)に起きた巨大天体衝突による大量絶滅機構の解明
  2.1.衝突により発生する酸化硫黄の化学反応解析

3.初期地球・初期火星の大気組成の推定
  3.1.衝突天体の物質と周辺大気の化学反応過程の解析
  3.3.衝突蒸気雲内におけるケイ酸塩成分と炭化水素成分の反応解析
  3.4.衝突蒸気雲内の金属鉄の触媒反応解析

4.近赤外光による金星地表の観測法の開発
  (宇宙科学研究所の金星探査衛星Planet-C計画との連携プロジェクト)

5.アメリカ航空宇宙局のディープインパクト探査機の彗星衝突探査の地上観測
  (アメリカ航空宇宙局のディープインパクト探査との連携プロジェクト)

6.土星の輪への小彗星の衝突模擬実験
  (アメリカ航空宇宙局のカッシーニ探査との連携プロジェクト)
[文献]
1) Sugita, S., P. H. Schultz, and S. Hasegawa, Intensities of atomic lines and molecular bands observed in impact-induced luminescence, J. Geophys. Res., 108(E12) , 5140, doi:10.1029/2003JE002156, 2003.
2) Sugita, S. and P. H. Schultz, Interaction between Impact-Induced Vapor Clouds and the Ambient Atmosphere 1: Spectroscopic Observation, J. Geophys. Res., 108(E6), 5151, 10.1029/2002JE001959, 2003.
3) Sugita, S. and P. H. Schultz, Interaction between Impact-Induced Vapor Clouds and the Ambient Atmosphere 2: Theoretical modeling, J. Geophys. Res., 108(E6), 5152, 10.1029/2002JE001960, 2003.
4) Sugita, S. and P. H. Schultz, Initiation of Run-Out Flows on Venus by Oblique Impacts, Icarus, 155, 265-284, 2002.
5) 杉田精司, 大野宗祐, K/T絶滅事件はいかにして起こったか?, 日本惑星科学会誌 遊星人, 11, 42-52, 2002.
その他
日本惑星科学会、日本分光学会、American Geophysical Union, Sigma Xi Society
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将来計画
 天体の衝突は、火成作用、地殻変動、浸食作用と並んで、惑星の表面地形を形成する上で最も重要な地質活動の一つです。しかし、現在の地球では天体衝突の頻度が非常に低くなっているために、我々の日常では意識することがほとんどありません。ですが、惑星の内部構造形成や、生命の誕生、大陸地殻の形成など、地球や惑星の重要な出来事が起きた30〜40億年前には、非常の高い頻度で小天体の衝突が起きていたことが分かっており、当時の地球や惑星の姿を知るには不可欠の要素です。特に、天体の超高速衝突によって生じる大規模蒸発プリューム(衝突蒸気雲)は、惑星の表層環境を劇的に変化させ、惑星の進化に大きな影響を与えると考えられています。

 当研究室では、こうした衝突蒸発現象の解明に焦点を絞り、天体衝突研究の世界拠点を建設することを目標に活動を行っています。その中でも中心的なプロジェクトは、衝突蒸気雲シミュレーション装置の開発です。これには、大出力レーザーを用いたレーザー銃の開発を中心にして、高速撮像装置、高速分光装置、質量分析装置ネどの測定装置を揃えつついます。この装置に完成により、これまで解析が非常に難しかった、衝突蒸気雲中の化学反応の解析ができるようになります。これにより、恐竜を絶滅させたK/T衝突事件で起きた気候大変動の謎や、生命を育んだ冥王代の地球大気の化学組成などを次第に明らかにしていけると期待しています。
教員からのメッセージ
 地球惑星科学を学部で勉強してきた人はもちろんですが、学部時代に物理・化学を専攻してきてこれから惑星科学を勉強したいと考えている人も大いに歓迎しています。

 惑星科学は、惑星の中で起きる様々な現象を総合的に扱う学問です。基礎物理や基礎化学と違い、いつも精密にコントロールされた条件での実験や理論計算をできるわけではなく、限られた惑星探査情報などを基に泥臭い議論や推定をせざるを得ないことが多々あります。また、これが複雑系をなす地球・惑星システムの本質でもあります。逆に、多くの要素が非常に複雑に絡み合った中から本質的な要素をうまく取り出して、明快に説明できたときの面白さは、格別です。ただ、基礎物理や基礎化学の知識や技術が要らないわけでも役に立たないわけでもありません。実際は全くその逆で、非常に重要です。研究対象が複雑であるがゆえ、きちんとした物理化学の基礎知識がないと、研究上の推論をとんでもない方向に向けてしまったりします。

 研究室の方針として、研究テーマの探し方、日本語・英語のプレゼンテーションの仕方など専門研究の基本は、かなり熱心に指導するようにしています。ただ、どんな研究がしたいのかという点に関しては、研究をする本人が決めなければどうしようもありません。主体はあくまでも学生さん自分自身であるということを自覚して下さい。そのようにして研究に取り組んだ方が、研究が自分のものになり、より楽しくなると思います。

 また、自分の長所あるいは強みは何なのか、常日頃から考えるようにしておいて下さい。自分の適正にあったテーマを選ぶか、適正に合わないテーマを選ぶかで、研究の進行度は驚くほど違うものです。最初から自分の適正にあったテーマに出会うということはなかなか難しいものですが、自分の長所を的確に捉えつつ努力していれば必ず見つかるものです。

 大学院の5年間というのは、非常にしんどい時期です。何かというと指導教官には叱られますし、同級生や他大学の学生とも競争しなければなりません。さらに、授業、セミナー、研究、業者とのやり取り、やらなければならないことが山のようにあります。しかし、それが故に、この5年間は、非常に成長著しい時期でもあります。修士1年の時には夢にも可能だとは思えなかったようなことが、博士3年の頃には何の苦もなくできるようになっていたりします。世の中がパッと広がったような気がするものです。自分の力で発見をしたという喜びを初めて感じられるのも、この時期です。こうなってくると、非常に楽しいです。さらに、自分の名前で学会発表したり、論文を世に出したりという喜びも出てきます。大学院というのは、労力さえ厭わなければ、自分を磨くために最高の場所ではないかと思います。
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