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辻 誠一郎 つじ せいいちろう/教授/環境学研究系
社会文化環境学専攻//環境人間学分野

略歴
1975年3月日本大学文理学部応用地学科を卒業。同4月日本大学文理学部応用地学科実験助手、1980年4月大阪市立大学理学部生物学科・同大学院理学研究科助手、1991年4月同講師、1995年4月国立歴史民俗博物館歴史研究部助教授、1999年4月総合研究大学院大学文化科学研究科助教授(併任)、2003年11月国立歴史民俗博物館歴史研究部教授、総合研究大学院大学文化科学研究科教授(併任)。2004年4月から現職、国立歴史民俗博物館客員教授。理学博士(大阪市立大)。
教育活動
新領域:人類環境史、文化環境学V
人文社会系:考古学特殊講義
文学部:環境考古学T・U
研究活動
人間と環境の関係史を生態系すなわち人間‐環境系の具体的復元にもとづいて読み解くことをメインテーマとしている。このために以下のサブテーマに取り組んでいる。

(1)極東アジアにおける人類時代最新の過去10万年間の生態系史研究
 最終間氷期、最終氷期、および現代に続く後氷期の3期からなる最後の氷期―間氷期サイクルを取り上げ、生態系の一次生産者である植物界の様相の歴史的変化を描き出す。まず、火山灰層序・編年学や後述の年代測定による編年学など地球科学的手法によって時間軸と空間構造を復元する。花粉分析、種実類などの大型植物遺体分析、木材分析といった植物学的手法によって植物界の様相を復元する。これらの総合によって、単に編年の枠組みを体系だてるだけでなく、人間社会に顕著な変容をもたらす環境の変動様相を見つけ出す。(文献1,2,5,6)

(2)突発的事件が生態系変容を誘発するメカニズム研究
 上の(1)において明確になってきた有意義な変動期には非日常的な突発的事件の関与が際立っている。その中で、後期旧石器時代以降の巨大噴火を取り上げ、それらを生態系変容メカニズム解析の巨大実験と見立てて、生態系の時間・空間的変化を読み解く。(文献1,2,5)

(3)人為生態系の形成と変容のメカニズム研究
 人間の多様な活動がどのような人為生態系をつくり出してきたかを人間と一次生産者である植物界とのかかわり研究から読み解こうとする。人間と深い関係を持つ栽培植物・園芸植物・人里植物、農耕地形成や森林伐採―植林形成、集落―都市形成や里山システム形成を主な対象としている。また、この背景にある人間の環境認識の歴史的形成と変容をヒョウタンなど特定植物との関係史から解明する。(文献3,4,5,6,7)

(4)年代測定の高精度化と生態系史編年の確立
 人類時代最新の過去5万年間の編年に有効な放射性炭素年代測定法の有効な活用と高精度化、およびその集成による生態系史編年を促進する。(文献7,8)
[文献]
1) 辻誠一郎.地球時代の環境史.p.40-70,『環境史研究の課題』吉川弘文館,2004年
2)辻誠一郎・宮地直道・新井房夫.南軽井沢地域の浅間火山テフラ層序と編年―環境・災害史研究の基礎として.p.165-192,『国立歴史民俗博物館研究報告』第118集,2004年
3)辻誠一郎(編著).『海をわたった華花』 104pp.歴史民俗博物館振興会,2004年
4)辻誠一郎.更埴産古代ヒョウタン遺体.p.119-146,『国立歴史民俗博物館研究報告』第108集,2003年
5)辻誠一郎.列島の環境史.p.223-248,『いくつもの日本U あらたな歴史へ』岩波書店,2002年
6)辻誠一郎.日本列島の環境史.p.244-278,『日本の時代史1 倭国誕生』吉川弘文館,2002年
7)辻誠一郎.青い森と海に支えられた三内丸山遺跡:人と自然の環境史.p.227-244,『青森県史別編三内丸山遺跡』青森県,2002年
8)辻誠一郎・中村俊夫.縄文時代の高精度編年:三内丸山遺跡の年代測定.p.471-484,『第四紀研究』40巻,2001年
その他
所属学会:日本植生史学会(会長),日本第四紀学会(評議委員),日本地質学会,日本生態学会,日本植物学会,日本植物分類学会,日本旧石器学会,酒史学会(理事)各種委員会:日本学術会議古生物研究連絡委員会員,青森県三内丸山遺跡発掘調査委員会委員など各地遺跡発掘・整備委員会委員,日本第四紀学会高精度炭素測定研究委員会委員
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将来計画
今、歴史学あるいは文献学、考古学、民俗学などの諸分野と、地球科学や生物学などの諸分野は、結局、どちらも共通領域を形成できずに大きな溝は大口をあけたままである。主要課題は、両者を行き来でき、個として両者の言語を噛み砕き共通言語を創造しうる柔軟な思考と想像力をもった学生を育むことであろうか。
大口を開けた溝の中にこそ未知の視点や創造をはるかに超える手つかずの題材があるとすれば、それは双方あるいは複数域の統合という思考から基本的に大きく逸脱しなければ得られるはずがない。体験の積み重ねと伝達・情報の蓄積による知の体系の形成と変容、その行動の成果である生産と消費、この集団の進化を同時空間に記述しうる領域の可能性をつきとめたい。
教員からのメッセージ
 個人的なことですが、大学受験の直前に大病をしたのがきっかけで、文学志望を理学志望に大変更し、4年の学部とつづく5年の研究生活を地球科学に、15 年を生物科学に、9年をまた一転して歴史学に身を置いてきました。それで分かってきたことは、ボーダレスでしかできないことや見えてこない手つかずの課題がゴロゴロとしているということでした。最初に問題提起をして大きな業績を上げようなどと考えず、常識的な枠組みからフリーとなり、柔軟に個の中で多様な生き方の組み換え・組み合わせを楽しんでみる余裕が欲しいものです。安全は保障されず、常道からつき放たれる危険に満ちた冒険に相応の価値を見出してほしいと思います。
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