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柴山 充弘 しばやま みつひろ/教授/基盤科学研究系
物質系専攻/物質科学協力講座/中性子科学研究施設
http://shibayama.issp.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1977年3月 京都大学工学部高分子化学科卒業
1982年3月 京都大学工学部高分子化学専攻博士課程修了(工学博士)
1982年4月 日本学術振興会奨励研究員
1983年4月 マサチューセッツ州立大学博士研究員
1984年10月 京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科助手
1988年5月 同助教授
1997年11月 同教授
2000年9月 東京大学物性研究所中性子科学研究施設教授(現職)
1991年マサチューセッツ工科大学博士研究員客員研究員(1年間)
教育活動
大学院:柔らかい物質系の物理、物理化学特論(理学研究科化学専攻)
教養学部:物性化学
研究活動
高分子やゲル、ミセルなどはソフトマテリアルやソフトマターとよばれ、多種多様な自己集合構造、階層構造を形成し、バラエティに富む性質や機能を発揮する物質群である。特に、高分子ゲルは高分子鎖がところどころ互いにつながった3次元分子結合相関系と位置づけることができ、溶液的な性質と固体的な性質を併せ持つ。その特徴は、分子間に働く相互作用の微妙なバランスの変化をゾルーゲル転移や数百倍にもおよぶ体積の変化として具現化する点にある。また、すぐれた液体の担持性、吸水・保水性、除放性、選択制などを利用したさまざまな応用が日用品、食品、産業用品に生かされている。そうした高分子ゲルを分子結合相関系としてとらえ、中性子散乱や光散乱などによる構造解析と、力学、熱測定、分光学などの物性研究手段を相補的に活用し、高分子ゲルにみられる体積相転移、臨界現象、分子ダイナミクスなどについて研究を進めている。

1)環境敏感型高分子ゲルの体積相転移と架橋不均一性
  側鎖に疎水性基をもつ水溶性高分子の多くは、疎水水和により水に対する溶解性をもっているが、温度の上昇により、脱水和が起こり、不溶化する。このような高分子からなるゲルは著しい温度応答性を持ち、相分離温度近傍で体積相転移を起こす。この体積相転移は通常の流体の相転移と類似していると考えられてきたが、臨界点近傍での不均一性やダイナミクスの観点からはゲル特有の現象も多く見られることがわかってきた。そうした現象を分子の結合相関と関連づけて研究している。

2)両親媒性ブロック共重合体の自己集合性とゲル化
 水溶性と熱応答性、あるいは溶媒選択性の高分子からなるブロック共重合体は非常に鋭敏な環境応答性を示し、ミセル形成とそれに続く100nmオーダーの巨大格子構造形成がおこる。こうした系の自己集合性メカニズムと分子ダイナミクスの研究を行っている。

3)高分子ハイドロゲルの高圧物性
 疎水性基をもつ高分子ハイドロゲルの高圧物性を中性子散乱および動的光散乱により研究することで、疎水性相互作用の圧力依存性について検証し、タンパク質の圧変性に関する分子論的知見を得る。

4)ゲル化剤によるオルガノゲル
  水を非流動化するハイドロゲルに対し、有機溶媒をゲル化させる分子は一般に特殊な構造をもつ低分子化合物である。それらが有機溶媒中で自己集合し、巨大な網目構造を形成することで溶媒が非流動化する。その駆動力になるのがおもに水素結合などの分子間力で、溶質同士が凝集して沈殿しない程度に弱く、かつ溶媒を担持できるほど強い必要がある。ゲル化剤によるゲルはハイドロゲルのそれに対し、ゲル中の分子ダイナミクスが強く制限されていることがわかってきた。そうしたゲル化剤によるオルガノゲルのゲル化機構の研究をしている。
[文献]
1) M. Shibayama, Macromol. Chem. Phys., 199, 1 (1998).
2) M. Shibayama et al., Bull. Chem. Phys., 75, 641 (2002).
3) T. Karino et al., Macromolecules, 38, 6161 (2005).
4) M. Shibayama et al. Macromolecules, 38, 1072 (2005).
5) N. Osaka and M. Shibayama, Phys. Rev. Lett., 96, 048303 (2006).
その他
所属学会:高分子学会、アメリカ化学会、日本化学会、物理学会、中性子科学会、繊維学会
Polymer(Advisory Board), Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition (Advisory Board), SAS2006 (Editor)
繊維学会櫻田武記念賞(1991)、高分子学会Wiley科学賞(2000), 日本化学会学術賞(2004)
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将来計画
米国の国立標準技術研究所(NIST)、ドイツのマックスプランク研究所、イギリスのキャベンディッシュ研究所、イスラエルのワイツマン研究所などの例を挙げるまでもなく、世界の主な研究機関ではソフトマター研究が精力的に行われています。私は、固体物性の研究拠点の一つである物性研究所の中にソフトマター研究のメッカを作りたいと考えています。東海村にある物性研中性子科学研究施設には原子力研究所に設置された物性研所有の中性子散乱装置群を利用したソフトマター研究をするべく、多くの研究者が常時訪れています。こうしたソフトマター研究者に対してはもとより、より多くの人に中性子散乱装置を利用してもらうべく、ゲル研究を通して情報の発信を続けていきたいとおもいます。
教員からのメッセージ
新しい発見や理論は精度の高い実験、沈思黙考、そして人との議論の流れから生まれます。私たちの研究室ではソフトマターという身の回りにあふれている材料を研究対象に、中性子散乱というナノの目を通してそれらの成り立ちや振る舞いに興味をもって研究しています。
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