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梶 幹男 かじ みきお/教授/環境学研究系
自然環境学専攻//生物圏情報学分野
http://bis.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1969年3月信州大学文理学部自然科学科卒業、1969〜1972年千葉大学理学部研究生、1975年3月東京大学大学院農学系研究科林学専攻修士課程修了、同年4月同博士課程進学、1976年12月〜1979年1月まで国際協力事業団長期専門家としてエチオピア国へ派遣(休学)、1982年3月東京大学大学院農学系研究科林学専攻博士課程修了(農学博士)、1982年10月東京大学農学部林学科助手、1988年3月東京大学農学部附属演習林助教授、 1995年11月同教授(秩父演習林長、樹芸研究所長、研究部長、北海道演習林長を歴任)、2000年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻自然環境学講座教授(現職)。
教育活動
大学院:生物資源開発論、生物環境学演習、生物環境学実習、生物環境学実験、自然環境学研究、自然環境学特別講義、自然環境学特別演習、生物環境学特別演習、生物環境学特別実習、生物環境学特別実験、自然環境学特別研究
学部:樹木学(農学部)
研究活動
主に天然林を対象として、森林植生の時空間的配列、森林群落の組成と構造およびその更新動態に関する研究を行っている。さらに、このような基礎研究に基づいて、天然林の環境保全と資源の持続的利用の両立を図るための理論と最適手法の開発を目指している(文献1)。植生の時空間的配列に関しては「房総半島におけるモミ林の生態的位置に関する研究」および同半島の残存自然林を植物社会学的手法によって類型化し、群集の分布様式と同地域の環境条件との関連について研究を行った。学位論文の「亜高山性針葉樹の生態地理学的研究」において、日本の亜高山性針葉樹の分布を現地調査等によって把握し、過去の気候環境の変化、とくに後氷期温暖期が現在の針葉樹の分布に大きな影響をもたらしていることを明らかにし、植生の垂直的配列パターンの解釈に従来なかった新しい仮説を提出した(文献2)。同論文によって、1986年に日本林学会賞、土井林学奨励賞、財団法人林学賞を受賞した。森林群落の更新動態については、秩父山地天然林の動態解明を目的として、強風、雨氷などによる気象害、人為などの森林群落に対する攪乱要因と攪乱を受けた森林の再生過程等について研究を行っている。また、天然林の更新機構の解明にあたって、その基礎となる種子生産量の年次変化や実生の消長について、秩父山地の山地帯天然林を対象に、十数年間に亘る長期観測に基づいて研究を行っている(文献3)。そのほか、熱帯地域における海外調査研究として、エチオピア高地の森林植生と気候条件について研究を行ったほか、カメルーン南西部の熱帯多雨林および西カリマンタンにおける低地フタバガキ科林の組成と構造に関する研究を行った。また、「産地の異なるブナのフェノロジー」および「北限地帯におけるブナ実生の捕食者とその生息環境との関係」の研究に基づいて生態地理学上懸案となっていたブナ北限問題の解明に向けて新しい仮説を提示した(文献4)。
[文献]
1) Kaji M._Outline of the Tokyo Univ. Forest in Hokkaido and Its Natural Forest Management Compatible to Environmental Conservation, Proc. of International Symposium of Asian Univ. For.5-12, 2002.
2) Nakagawa M et al. The effects of selection cutting on regeneration of Picea jezoensis and Abies sachalinensis in the sub-boreal forests of Hokkaido, northern Japan. Forest Ecology and Management146,15-23,2001.
3)梶幹男ほか、秩父山地イヌブナ-ブナ林の17年間の堅果落下状況,東大演報106,1-16,2001.
4) 北畠琢郎,梶幹男,ブナ・ミズナラ移植実生の生残過程における捕食者ネズミ類の生息地選択の影響,日林誌82(1),57-61,2000.
その他
所属学会:日本林学会(編集委員1991-93)、日本生態学会、森林立地学会、日本植生学会、日本熱帯生態学会、日本アフリカ学会、日本ナイルエチオピア学会、樹木医学会、生きもの文化誌学会各会員
各種委員会:環境省自然環境保全基礎調査検討委員、東京都環境影響評価審議会委員
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将来計画
天然林の更新機構解明に関する基礎研究、気候変動期における樹木の盛衰に関する研究等の課題に加えて、バランスのとれた森林資源の利用と環境の保全、そのための最適管理の理論と方法をフィールドから得られるさまざまな情報をもとに構築し、さらに、最新のメディアをとおして分野の異なる研究者間で論議を深めていくことが、生物圏情報学分野の重要な課題と考えています。そのために、現在のところ、10年数年前に北海道、秩父など東京大学演習林内に設置した「長期観測大面積プロット」において、森林の動態に関するさまざまな基礎データを収集し、森林の長期変動予測についての研究を予定している。
教員からのメッセージ
我々人類は、好むと好まざるに拘わらず、自然、とりわけ森林からさまざまな恩恵を受けています。現在、熱帯地域や半乾燥地域における森林の再生についてさまざまな取り組みが行われています。このような地球規模で起こっている環境問題に大いなる関心をもち、それを引き起こした原因をさまざまな観点から分析し、どのようにしたら環境保全と資源の持続的利用の調和が図れるかを、具体的に提示できる人材を養成したい。そのためにはフィールドにおける生物と環境の関係を的確に捉え、自然に対する人為的インパクトの許容限界を知ることが重要です。学生諸君には、フィールド研究をとおして環境問題解決に必要な知識と洞察力を磨いてほしいと期待します。
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