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宇垣 正志 うがき まさし/教授/生命科学研究系
先端生命科学専攻/機能生命科学講座/資源生物創成学分野
http://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/%7Ekugaki/

略歴
1979年3月東京大学農学部農業生物学科卒業
1984年3月東京大学大学院農学系研究科農業生物学博士課程修了(農学博士)
1984年4月農業生物資源研究所研究員
1987年8月米国Rutgers University, Visiting Investigator
1989年4月農業生物資源研究所主任研究官
1995年4月   同     研究室長
1999年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授を経て2004年10月より現職
2000年7月東京大学大学院農学・生命科学研究科生産・環境生物学専攻兼担
教育活動
大学院:微生物生命科学、資源微生物学
農学部:応用生物学実験・環境生物学実験・生産生物学実験
研究活動
 植物は自然界において、ウイルス、細菌、菌類、線虫など様々な微生物による病害にさらされ、また昆虫による食害を受けている。さらに、微生物には昆虫により植物から植物へと媒介されるものも少なくない。このように、植物、微生物、昆虫の三者は、密接に関連し長い時間をかけて複雑な相互作用を進化させてきた。それらの相互作用を、個体、細胞、分子のレベルで解明することを目的として研究を行っている(文献1)。
 植物ウイルスは、数千塩基長のゲノム核酸とそれを保護するタンパク質から成る単純な構造をしている。にもかかわらず、植物細胞に感染すると自己複製し、隣接細胞へ移行し、植物の全身へ移行し、特徴的な病徴をひきおこす(文献2)。そのために植物ウイルスはコンパクトなゲノム上に複数の遺伝子をコードし、それらの発現を巧妙に制御している。ウイルスで発見された遺伝子発現機構の多くは、のちに通常の植物遺伝子にも見出された。これは、ウイルスという扱いやすい実験系を用いて、真核細胞内で許される様々な遺伝子発現機構を解析できることを意味している。
 ほとんど全ての生物にウイルスが知られているが、その起源は不明である。植物1本鎖DNAウイルスであるジェミニウイルスはローリングサークル型と呼ばれる機構で複製するが、植物細胞内に寄生する細菌の持つプラスミドの中には、同様の機構で複製しジェミニウイルス遺伝子と似た遺伝子を持つものが存在する(文献3)。これは1本鎖DNAウイルスとプラスミドの進化的関連を示唆する。植物DNA/RNAウイルスであるカリモウイルスは、2本鎖DNAゲノムから全ゲノムをカバーするRNAを転写し(文献4)、RNAにコードされる逆転写酵素によってそのRNAから再びゲノムDNAを合成する。多くの生物に存在するレトロトランスポゾンとの進化的関連が伺える。
 このように植物-微生物-昆虫の相互作用を、進化的な視点を踏まえつつ解析している。得られた知見は、有用な植物など新規な資源生物を創り出すことにつながり(文献5)、食糧問題や環境問題など地球規模の問題の解決の一助となると期待している。
[文献]
1) Suzuki et al.(2006) Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 103: 4252, Kakizawa et al.(2006) Journal of Bacteriology 188: 3424, Oshima et al.(2004) Nature Genetics 36: 27, Kakizawa et al.(2004) Microbiology 150: 135.
2) Takahashi et al.(2006) Virus Research 116: 214, Kagiwada et al.(2005) Virus Research 110: 177, Hirata et al.(2003) Journal of General Virology 84: 2579.
3) Oshima et al.(2001) Virology 285: 270, Nishigawa et al.(2002) Microbiology 148: 1389.
4) Fukuoka et al.(2000) Plant Cell Reports 19: 815.
5) 宇垣正志ら(2000)「遺伝子組換え食品」日本農芸化学会編、学会出版センター, 田中宥司ら(1999)特許公開2001-29075, Nishizawa et al.(1999) Theoretical and Applied Genetics 99: 383, Mochizuki et al.(1999) Entomologia Experimentalis et Applicata 93: 173.
その他
日本植物病理学会、日本分子生物学会、日本育種学会、日本農薬学会各会員。
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将来計画
生命科学の研究対象として、植物は近年、有利な材料になりつつある。それは、双子葉植物のモデルであるシロイヌナズナと単子葉植物のモデルであるイネの全ゲノムの塩基配列の解析が終了し研究条件が整備されてきたこと、および、効率的な遺伝子導入法が確立されてきたこと等による。これらの材料のメリットを活かしつつ、複雑な植物-微生物-昆虫の相互作用を明らかにしたい。
教員からのメッセージ
素晴らしい研究のアイディアは無から突然生まれるのではなく、自分のデータを解釈したり論文を読むなどして多くの情報を脳にインプットし、それが整理され醸成される過程で生まれるものです。また、しっかりとした実験技術がなければ、そのアイディアを実現することはできません。院生の皆さんには、限られた課程の期間内に、研究者として必要なそれらの資質をしっかりと身につけていただき、研究の面白さを体験していただきたいと思います。
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