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尾崎 雅彦 おざき まさひこ/特任教授/環境系
海洋技術環境学専攻/海洋利用システム学講座/CCS(CO2回収貯留)、サブシーシステム、ライザー、係留、大深度海底掘削、海洋開発のための輸送計画、海洋産業システム
http://aquacage3.k.u-tokyo.ac.jp/index.html

略歴
1978年3月 東京大学工学部船舶工学科卒業
1983年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士
1983年4月 三菱重工業株式会社入社、技術本部広島研究所
1989年4月 三菱重工業株式会社技術本部長崎研究所
2007年4月 独立行政法人海洋研究開発機構 地球深部探査センター グループリーダー
2008年9月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
2016年4月 同 特任教授(現職)
教育活動
大学院:海洋開発システム論、新産業創成論、海洋技術環境学特別講義T、Ocean Fluid-Structure Dynamics、Design of Ocean Systems
工学部:応用流体力学、力学演習、応用プロジェクト、領域プロジェクト
寄附講座(社会人向け):基礎講座「海洋工学」(全12コマ)
研究活動
◎CCS
気候変動抑止のためCO2の人為的な排出量を大幅に低減する努力が世界全体に求められている(パリ協定[2015]など)。しかし現代社会はCO2排出をともなう石炭・石油・天然ガスの大量使用に支えられている(現時点で世界の一次エネルギーの約8割は化石燃料起源。ほかにも製鉄やセメント製造など発展途上国を中心とした社会インフラ整備でCO2発生は不可避)。
CCSは、化石資源使用で生じるCO2を地中に埋め戻すことによって大気への排出量を削減する技術であり、将来、低炭素社会が到来するまでの「つなぎの技術(Bridging Technology)」として早期の商用化・普及が期待されている。
尾崎研究室では、CCSの円滑な導入に向け、回収したCO2の船舶輸送および大陸棚以遠の海底下地層中へのCO2貯留を可能とするCCSシステムを提案するとともに、システムを構成する要素技術の検討や実証に向けた計画に産官学で協力して取り組んでいる。
最近の研究テーマは以下のとおり。
1) 海象変動を考慮したロバストなCO2輸送システム計画
2) 外洋でのCO2圧入作業の安全性・稼働率向上技術
3) CCSのソースシンクマッチング

◎超大深度海底掘削システム
深海科学掘削は宇宙探査と並ぶ人類の知のフロンティアである。人類が到達したことのないマントルから試料を得るには、水深4000m以上の深海底からさらに7000m以上掘進する超大深度掘削技術の確立が必要である。
地球深部探査船「ちきゅう」を保有・運用する海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で、実海域データなども参照しながら以下のような研究に取り組んでいる。
1) 超大深度掘削用ドリルパイプの軸方向ダイナミクスの高精度評価
2) 船体動揺に起因するWOB変動とスティックスリップの数値計算モデル
3) 強い流れに対する水中線状構造の渦励振評価と対策技術

◎海の深層冷熱を利用する取排水レス冷却水システム
火力発電所では一般に、発電用タービンを回した後の蒸気を復水器で冷やすために大量の海水が取水され、取水温度よりも7℃程度上昇した温排水が海に戻されているが、温排水の拡散状況や沿岸域生態系への影響の予測評価・実態把握が許認可上の重要課題である。
そこで、尾崎研究室では、深層水の低温性を利用して発電効率を向上させ、かつ温排水問題を回避しうる「取排水レス発電所」の実現を目指し、新しい冷却水システムの研究に取り組んでいる。すなわち、一次冷却水を海の深層の低温領域と復水器の間で循環させ、海水の取排水を行わずに蒸気冷却を行う。このシステムでは、温排水が無い上、取排水管内部や復水器の発錆・生物付着の抑制対策・クラゲ侵入対策が不要になる。また復水器の小型化や保守のしやすさ等、操業上のメリットも得られると考えられる。
これまでの取組は以下のとおり。
1) 抵抗低減剤を導入した一次冷却水循環システムのパワー損失と発電効率向上の試算
2) 深層環境中のファウリングに関する実験的考察
3) 取水管の全長一括敷設方法のシミュレーションによる検討

◎海象変化と海上作業
日本周辺では、洋上風車・海流発電といった再生可能エネルギーの利用、メタンハイドレート・深海底鉱物資源といった非在来型資源・エネルギーの開発、温暖化対策のための沖合CCSなど、沖合大水深海域での海洋利用が活発化の時期を迎えようとしている。
海洋での施工、掘削、荷役、保守点検、観測機器の揚降などの作業(海上オペレーション)が安全かつ効率よく行われることが重要で、そのためには、日本周辺海域の海象特性を理解しつつ、作業可否の判断基準や稼働率の合理的予測手法を確立していく必要がある。
尾崎研究室では、スコール(風況急変)に対する海上オペレーションの安全性に関する研究、連続静穏日数や連続荒天日数の発生確率を考慮したシステム計画などに取り組んでいる。
1) 日本の遠隔離島における長期定点観測データにもとづくスコール発生特性の分析
2) 風速の急変がDPSに及ぼす影響評価
3) ダウンバーストによる海上での風況変化と海上作業への影響評価
4) 日本周辺海域の波高の推移のマルコフモデル化の検討
5) 輸送システム計画へのマルコフ過程モンテカルロシミュレーションの適用
[文献]
1) Y.Lu, M.Ozaki, Potential Impact of Sudden Change of Wind Condition on Offshore Operation, Proc. of 36th International Conference on Ocean, Offshore & Arctic Engineering(OMAE2016), Busan, Korea (2016)
2) S.Sugiyama, H.Yamamoto, A.Usami, K.Hirano, H.Suzuki, M.Ozaki, M.Kyo, E.Miyazaki, Development of New Device for Reduction of Fluctuating Lift on Riser Pipe, Int. J. of Offshore and Polar Engineering (2016)
3) 金子達哉,和田良太,尾崎雅彦,超大水深掘削におけるWOB変動について,日本船舶海洋工学会講演会論文集,第21号(2015)
4) 佐藤慎一,多部田茂,加藤孝義,尾崎雅彦,海洋深層への熱入力による湧昇に関する基礎的検討、海洋深層水研究,第16巻第1号,9-14(2015)
5) M.Ozaki, N.Nakazawa, A.Omata, M.Komatsu, H.Manabe, Ship-based Carbon Dioxide Capture and Storage for Enhanced Oil Recovery, Proc. of Offshore Technology Conference (OTC) 2015, OTC-25861, Houston, USA (2015)
6) Y.Lu, M.Ozaki, Squall in Mid-latitude Regions and its Effect on Offshore Operations, Proc. of 25th International Offshore and Polar Engineering Conference (ISOPE), Kona, USA (2015)
7) 尾崎雅彦,和田良太,シャトルシップ方式による沖合CCSの輸送システムと余裕能力の計画,日本船舶海洋工学会論文集第20号,197-204 (2014)
8) 和田良太,尾崎雅彦,日本周辺海域における静穏および荒天海象の連続性について,日本船舶海洋工学会論文集第20号,85-97 (2014)
9) 尾崎雅彦,海底占有面積が狭小な沖合浮体係留方式に関する基礎研究−浮体と係留系の波浪中周波数応答特性−,日本船舶海洋工学会論文集第20号,39-49 (2014)
10) 畑中貴史,尾崎雅彦,海洋掘削船の動揺が及ぼすビット回転速度・トルクの変動について,日本船舶海洋工学会講演会論文集第19号,93-96 (2014)
11) 和田良太,尾崎雅彦,日本周辺海域における連続海象について,日本船舶海洋工学会講演会論文集第19号,101-104 (2014)
12) 尾崎雅彦,横山立樹,岡村盡,取排水の無い発電所冷却水システムに関する基礎研究―循環水型海洋深層冷熱利用方式の提案と発電効率への影響評価―,日本船舶海洋工学会論文集第18号,189-197(2013)
13) 尾崎雅彦,横山立樹,取排水の無い発電所冷却水システムに関する基礎研究―深層熱交換器のファウリングに関する予備的実験―,日本船舶海洋工学会論文集第18号,109-114(2013)
14) M.Ozaki, T.Ohsumi, R.Kajiyama, Ship-based Offshore CCS Featuring Shuttle Ships Equipped with Injection Facilities, Energy Procedia 37, 3184-3190 (2013)
15) N.Kokubun, K.Ko, M.Ozaki, Cargo Conditions of CO2 in Shuttle Transport by Ship, Energy Procedia 37, 3160-3167 (2013)
16) T.Miyazaki, H.Osawa, M.Matsuura, M.Ohta, M.Ozaki, Offshore Operational Availability of Onboard Direct Injection of CO2 into Sub-seabed Geological Formations, Energy Procedia 37, 3168-3175 (2013)
17) N.Nakazawa, K.Kikuchi, K.Ishii, T.Yamaguchi, M.Ohta, M.Ozaki, Ship-based CO2 Injection into Subseabed Geological Formations using a Flexible Riser Pipe Pickup System, Energy Procedia 37, 3176-3183 (2013)
18) 尾崎雅彦,海底占有面積が狭小な沖合浮体係留方式に関する基礎研究−新係留方式の提案と静的係留特性の検討−,日本船舶海洋工学会論文集第17号, 135-142 (2013)
19) 尾崎雅彦,大隅多加志,CO2船舶輸送・洋上圧入方式による沖合CCS,第18回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集 F103, 177-180 (2013)
20) 尾崎雅彦,CO2の海上輸送・洋上からの圧入システム,化学工学第77巻第5号,317-319 (2013)
21) 尾崎雅彦,CCSのためのCO2船舶輸送への期待,エネルギー・資源 Vol.33, No.5,44-48(2012)
22) 村田直紀,尾崎雅彦,長距離海上輸送方式を用いた日本国外でのCO2貯留に関する研究,第23回海洋工学シンポジウム,東京(2012)
23) 尾崎雅彦,今後の化石エネルギー利用,日本船舶海洋工学会誌「咸臨」第42号,37 (2012)
24)M.Ozaki, T.Ohsumi, CCS from multiple sources to offshore storage site complex via ship transport, Energy Procedia 4, 2992-2999 (2011) 
25) Y.Shinmoto, T.Miyazaki, E.Miyazaki, M.Ozaki, Weight-on-Bit Fluctuations for Coring Operations on the D/V CHIKYU during the Nankai-Trough Seismogenic Zone Experiments, 21st Int. Offshore and Polar Engineering Conference, ISOPE (2011)
26) T.Inoue, M.Ozaki, T.Miyazaki, M.Nishigaki, K.Setta, Maximum Stress and Fatigue Strength of Drill Pipe in Presence of Strong Ocean Current, Int. J. of Offshore and Polar Engineering, Vol.20, No.1, 15-17 (2010)
27) Y.Namba, S.Uto, T.Nimura, K.Kokubun, T.Kuroda, T.Miyazaki, Y.Okumura, M.Ozaki, Experiments for Modeling Internal Fluid Effect on Hung-off Rigid riser Under Axial Motion, Int. J. of Offshore and Polar Engineering, Vol.20, No.1, 7-14 (2010)
28) 尾崎雅彦, CO2海洋隔離の役割, 水素エネルギーシステムVol.34, No.1, 38-44 (2009)
29) 尾崎雅彦,喜田 潤,CO2海洋隔離技術−Moving ship方式の開発−,月刊配管技術Vol.49, No.2, 1-6 (2007)
30)M.Nishio, S.M.Masutani, J.Minamiura, M.Ozaki, Study of Liquid CO2 Droplet Formation under Simulated Mid-depth Ocean Conditions, Energy 30, 2284-2297 (2005)
その他
日本船舶海洋工学会、海洋調査技術学会、CO2回収貯留に関するIPCC特別報告書執筆者(2003年6月〜2005年12月)、CCSに関する国際標準化(ISO-TC265)、ISSC2017委員
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将来計画
中長期的に見れば人口増加と経済発展は今後も世界の基調である。これらに伴う食糧・資源・エネルギーの供給力不足や顕在化しつつある気候変動などの重要課題を解決するためには、対策に量と継続が大切で、新しい産業による取組が必須である。産業が人を育て、その人たちがさらに産業を大きくし、力のある産業活動によって課題解決への道が近づくと考える。本研究室では、海洋というフィールドで人類社会に貢献すると信じられるアイデアの技術的成立性構築と産業化の可能性を学の立場からポジティブに追求していく。
教員からのメッセージ
自分を活かしながら社会に貢献する人をめざしてほしいと思います。そのためには、社会の情勢を広く知ることと、取り組むべき課題を見つけることと、必要な専門知識や技術・ノウハウを身につけることが前提ですが、それらを若いうちに習慣づける訓練をしましょう。
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