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斉木 幸一朗 さいき こういちろう/教授/基盤科学研究系
複雑理工学専攻/複雑系実験講座/複雑物質化学分野
http://yukimuki.k.u-tokyo.ac.jp/jpf/saiki-cJ.html

略歴
1976年3月 東京大学工学部物理工学科卒業,1981年3月 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了(工学博士),1981年5月東京大学工学部物理工学科助手,1986年5月 東京大学理学部化学科助手,1989年2月 東京大学理学部化学科専任講師,1991年4月東京大学理学部化学科助教授,1992年4月 東京大学大学院理学系研究科化学専攻助教授(改組による),1993年9月-1994年7月文部省在外研究員(カールスルーエ原子力研究センター,ドイツ)1999年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授(現職)
教育活動
大学院:薄膜成長の原子論
理学系研究科:
理学部:無機分析化学特論
研究活動
 有機単結晶は,バルクとして本来もっている低次元性や,化学修飾により多彩な物性変化をしめす,という特徴が従来の興味の主眼でしたが,他の物質とのヘテロ界面における制御まで視野をひろめて,バルクからヘテロ接合物性,接合型素子への進化をおこさせる段階が今まさに到来したといえます。有機物質の電子状態はバンド幅がせまく,電子間相互作用をバンド幅で割った無次元量がおおきいという意味で電子相関がつよい系であり,無機物より様々な点でフレキシビリティーのおおきい有機物においてヘテロ接合物性をさぐることは,従来の固体物性が対象としてきた無機物にはない面白さをひめていると考えられます。われわれの研究室では,有機物質薄膜成長をふくむ多様な物質のヘテロ構造を長年にわたり構築してきましたが,この経験を駆使し,実験グループと電子相関理論グループの密接な協力のもとに,高度に界面を制御した有機・無機へテロ接合における電子相関がもたらす量子効果の発現を追及し,これにより物質科学における新分野を開拓するとともに,従来技術の延長線上にはない新奇デバイスの基本原理を確立することによって21世紀の新技術基盤の創成をめざして以下のようなテーマを柱とした研究をおこなっています。

1. ハイパー ヘテロ界面の構造/電子状態の探索
オリゴチオフェン,フラレン,ペンタセン,バッキーフェロセンなど有機分子の金属,半導体,絶縁体基板上へのヘテロ成長と金属誘起ギャップ内状態,金属-絶縁体転移など電子状態の探索

2. 電界効果による電荷注入現象
フラレン,オリゴチオフェンを活性層とする FET 構造を作製し,電界効果による電荷注入現象を電子分光,X線吸収端変化,光吸収などによう観測光学測定 (VIS-IR)

3. 有機 FET (電界効果トランジスタ)
有機薄膜中の電界の実験的,理論的解析およびフラレン,オリゴチオフェン FET 特性の膜厚依存性の in-situ 解析,単結晶絶縁膜を用いた FET の作製と特性評価,接合型 FET の作製と物性評価

4. 有機薄膜の重合現象
フラレン薄膜の成長中レーザー照射による重合過程,電界,紫外光照射の協奏による有機薄膜の重合過程,レーザー重合薄膜の磁気的性質
その他
日本物理学会,応用物理学会,日本化学会,会員
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将来計画
 新領域創成科学研究科は既存の学問の領域の壁をうちやぶり,新たな領域をきりひらく目的でつくられたのですが,何もないところから新たな領域が突然うまれるはずはありません.偉大な先人も「独創は必然の先見」といっていますので,現在の研究を継続する中で次代の科学の芽をみつけて育んでいきたいと思っています.その場合重要なのは他分野との交流です。歴史をみても新たな文化の誕生はかならず異なる文明との出会い,相克と関係しています.新領域は理系から文系にいたるひろい分野の教官がいて,また基盤科学研究系だけみても同じ建物の中で,物理,化学,地学,情報,エネルギー,電子デバイスなどのプロが共に生活するのですから,廊下での立ち話や,ランチをたべ,あるいはビールをのみながら,などの機会をつうじておおいに「異質触媒作用」を発揮し,今まで考えてもみなかったような分野をきりひらいていきたいものです.
教員からのメッセージ
 理系の学生諸君によんで欲しいものとして,
1. 寺田寅彦「科学に志す人へ」 (ウェブ上で読めます)
(http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/4360_9287.html)
 先年,居住するマンションで磁化水の問題にかかわったとき,自分が科学というせまい領域の住人で,経済大国にして文化立国のこの国では,そうでない人との間に溝があることにきづきました。「5年間修行し,尊師の入った風呂の水をのまないと空中浮遊ができない」というテーゼと,「5年間(高校,大学教養)物理を勉強しないとこの世を支配する量子論の扉をあけられない」というテーゼとは,同等なのです。それでいいのか,と疑問をもつあなたには,
2. カール=セーガン「人はなぜエセ科学に騙されるのか」(上,下)青木薫訳,新潮文庫
  研究においても,日頃の生活においても「よく考える」ことが大事だとあらためて思う昨今です。学生のみなさんも心がけるようにしてください。
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