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伊藤 耕三 いとう こうぞう/教授/基盤科学研究系
物質系専攻/物性・光科学講座/超分子構造物性学分野
http://www.molle.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1981年3月東京大学工学部物理工学科卒業、1986年3月東京大学大学院工学系研究科物理工学専門課程博士課程修了(工学博士)、1986年4月通商産業省工業技術院繊維高分子材料研究所 研究員、1990年10月同主任研究官、1991年6月東京大学工学部物理工学科講師、1994年8月同助教授、 1999年4月東京大学大学院大学院新領域創成科学研究科助教授、2003年2月同教授(現職)、2005年5月アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社取締役(兼務)
教育活動
大学院:ソフトマター物理
工学部:非平衡系のダイナミックス 、応用物理学実験技法第2、物理実験の基礎第1
研究活動
 研究室では、ソフトマテリアル(高分子、液晶、生体分子などの分子性物質の総称)の構造と物性の研究を行っている。これまで、電荷を帯びた高分子(高分子電解質)や電気が流れる高分子(導電性高分子)を中心に調べてきた。最近では、分子ナノチューブやナノリングと高分子の組み合わせに注目し、以下のような生体の機能を越える様々な構造の超分子を作成している。

1)トポロジカルゲル
 ゼリー状の物質であるゲルは、食品、医療品、工業製品等に幅広く利用されており、用いられる高分子の種類も多様である。しかし構造という視点から眺めてみると、物理ゲルと化学ゲルのわずか2種類しかない。最近我々は、そのどちらにも分類されず、架橋点が自由に動く新しい種類のゲル、すなわち「トポロジカルゲル」の合成に成功し、その力学物性および微視的構造を研究している。トポロジカルゲルでは、架橋点が滑車のように自由に動くため、ミクロな不均一構造・応力分布の不均一性が解消される結果、従来のゲルとは大きく異なる物性を示す。
 トポロジカルゲルの応用としては、透明かつ強靭という特性を生かして、ソフトコンタクトレンズ、人工関節などの生体材料への展開が期待されており、すでに実用化に向けての研究も進行中である。ゲルの材料としての最大の特徴は、構成成分がほとんど液体でありながら液体を保持しつつ弾性体として振舞う点であり、ソフトコンタクトレンズなどもその特徴を利用している。トポロジカルゲルは、可動な架橋点を導入することで高分子を最大限に効率よく利用することにより、従来のゲル材料では実現不可能であった高い液体分率と機械強度を両立させている。

2)分子被覆導線を用いた分子素子
 近年、微細加工技術の驚異的な進展に伴い、半導体デバイスの高密度・高集積化が著しい。しかし、微細化がより進みナノメータースケールになると、加工限界、高価格化などの問題が生じ、根本的な発想の転換が求められている。このような問題を解決するためのアプローチの一つとして、従来の微細化(マクロからミクロへ)の方向とは逆に、原子・分子の組織化・集積化(ミクロからマクロへ)による機能素子(分子素子)を目指した研究が近年急速に盛んになっている。このような分子素子を構築する上で、基本的かつ重要な問題は、電子機能性分子間の信号伝達をいかに行うか、すなわちいかに配線するかという点である。最近我々は、導電性高分子を環状分子が包んだ分子被覆導線の作成に成功し、その電気特性を調べている。
 導電性高分子を被覆することで、高分子1本の性質を詳細に調べることが可能になった。また、環状分子の中に包接された導電性高分子は、形態が棒状に固定されるため、高い導電性が期待される。現在、この分子被覆導線を用いて、様々な分子素子を作成中である。分子被覆導線は、溶液中における混合という容易な手法で作成可能であり、理想的な1次元量子細線とみなすことができる。分子被覆導線の分子配線あるいは量子細線としての有効性が明らかになれば、分子素子の実現に向けて大きな弾みがつくことが期待される。
[文献]
1) Yasushi Okumura and Kohzo Ito, Advanced Materials, 13(7), 485-487(2001).
2) Ken-ichi Yoshida et al., Langmuir, 15, 910-913(1999).
3) 伊藤耕三、下村武史、奥村泰志、物理学会誌、57, 321-329(2002). 166-169.
その他
所属学会: 物理学会、応用物理学会、高分子学会
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将来計画
 これまでの高分子材料の研究は、高分子のみからなる集合体の構造と物性に関するものであった。我々は、高分子をチューブあるいはリングと組み合わせると、高分子1本の紐としての性質が顕著に現れることを見出し、高分子科学における新しい分野を開拓しつつある。1本の高分子や分子ナノチューブは、ナノオーダーの直径とミクロンオーダーの長さをもつ微小な紐あるいはチューブと見なすことができる。高分子とナノチューブを部品としてナノマシンやナノコンピュータを作成し、バイオと情報分野に貢献するのが本研究室の目標である。生物が高分子などのソフトマテリアルから形成されているように、ナノテクノロジーにおいてもソフトマテリアルが大きな役割を果たすと考えられている。
教員からのメッセージ
 ソフトマテリアルの分野には、面白そうなテーマが山のようにあります。しかも、我々の生活に直結しており、基礎的に興味深いだけでなく応用的にも大いに役立つ分野です。我々の研究に興味をもったなら、一度研究室を訪問してみませんか。歓迎します。
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