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伊藤 啓 いとう けい/准教授/生命科学研究系
メディカル情報生命専攻/生物機能情報講座/脳の分子解剖学・発生学
http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/lab/

略歴
1986年3月東京大学理学部物理学科卒業
1991年3月東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了(理学博士)
1991年4月ドイツ・マインツ大学遺伝学教室客員研究員
1994年10月科学技術振興事業団 ERATO 山元行動進化プロジェクト研究員
1998年4月岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所細胞増殖研究部門助手
2002年4月東京大学分子細胞生物学研究所高次構造研究分野助教授
教育活動
大学院:情報生命科学基礎1、情報生命科学演習、情報生命科学特別研究1、情報生命科学輪講1、情報生命科学特別研究2、情報生命科学輪講2
研究活動
脳の研究というと学習や論理思考などの高度な機能に関心が向きがちだが、現状では、たとえば匂いを知覚してその方向に進むといった単純な情報処理の本質すら、分かっているとはとても言いがたい。脳神経回路がどのように形成されているのかも、分かっていないことの方が多い。こうした基礎的な部分を調べるには、膨大すぎて全貌の把握が難しい高等脊椎動物の脳よりも、精巧な処理を行なう割に小さくシンプルな脳を使って、全体像を解析するのが効果的である。そこで我々は、ゲノムプロジェクトや遺伝子工学の成果を駆使できるモデル生物ショウジョウバエを用いて、脳回路の構造・機能・発生を体系的に解析している。

1:【脳の構造の解析】 4500系統を越える世界最大規模のGAL4エンハンサートラップ系統コレクションを使って、様々な神経細胞の構造やシナプスの位置などを選択的に可視化し、レーザー顕微鏡で断層像を撮影して三次元画像解析を行う。これによって視覚・嗅覚・味覚・聴覚など感覚の種類ごとに、感覚神経から低次・高次の感覚中枢を経て運動制御領域へと、情報の流れを追って脳神経回路の体系的な同定と解析を進めている。学習等の高次機能を担う統合領域についても、詳細な回路構造や周囲の低次脳領域との回路接続を詳しく調べている。

2:【脳の機能の解析】 同定された神経で、その細胞の機能を阻害したり変化させたりする各種遺伝子を特異的に強制発現させて、どのような行動に影響が生じるかを調べたり、細胞内カルシウム濃度で蛍光量が変化するタンパクを発現させて、イメージングによって神経活動を計測したりすることで、個々の神経回路が果たす機能を解析している。

3:【脳の発生の解析】 神経回路の形成過程を経時的に解析し、神経細胞自身やその周囲のグリア細胞に各種の変異遺伝子を発現させて影響を調べることによって、正確な回路が形成されるメカニズムを調べている。また、脳は約百個の神経幹細胞に由来する子孫細胞が、細胞系譜ごとに特徴的な回路モジュールを形成し、それが組み合わさって全体の回路が作られる。このモジュール回路構造の形成機構の解析を進めている。

4:【脳のバイオインフォマティクス】 仮想の回路でなく現実の神経回路に基づいた脳機能のコンピューターシミュレーションは、未だ実現にはほど遠い。脳回路の全貌をコンピューター上に再現することを長期目標として、これまでに発見された全神経細胞の情報を網羅したデータベースの作成を進めている。また、解析が進んだ部分の神経回路ユニットの動作について、シミュレーションやハードウェアによる再現検証を試みている。
[文献]
1) Awasaki, T., Tatsumi, R., Takahashi, K., Arai, K., Nakanishi, Y., Ueda, R., and Ito, K. (2006) Essential role of the apoptotic cell engulfment genes draper and ced-6 in programmed axon pruning during Drosophila metamorphosis. Neuron (50) 855-867
2) Kamikouchi A, Shimada, T. and ITO, K. (2006) Comprehensive classification of the auditory sensory projections in the brain of the fruit fly Drosophila melanogaster. J. Comp. Neurol. (499) 317-356, 2006.
3) Otsuna, H. & Ito, K. (2006) Systematic Analysis of the Visual projection neurons of Drosophila melanogaster - I: Lobula-specific pathways. J. Comp. Neurol. (497) 928-958.
その他
所属学会:分子生物学会、発生生物学会、生物物理学会、神経科学学会
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将来計画
低次の感覚系の解析が進むにつれ、さらに複雑な高次の統合野、連合野の解析へと徐々に移行してゆきます。
教員からのメッセージ
神は細部に宿る。既存の思考の枠組みを壊すような新しい発見は、細かな現象を根気よく、地道に観察することから生まれます。他の人でもやれるような研究でなく、世界で自分しかやらないような研究を探求してください。
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