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中野 和民 なかの かずみ/准教授/生命科学研究系
メディカル情報生命専攻/ウイルス発癌分野/ウイルス腫瘍学
http://uchimaru.umin.jp/

略歴
1994年3月 日本女子大学理学科II 卒業
1996年3月 東京大学大学院理学研究科動物学専攻修士課程修了
2000年8月 ブリティッシュ・コロンビア大学大学院農学部博士課程修了
2000年10月 ブリティッシュ・コロンビア大学大学院農学部 (ポスト・ドクトラル・フェロー)
2003年2月 香港城市大学 生物化学学科 (香港) (ポスト・ドクトラル・フェロー)
2003年10月 独立行政法人水産研究センター 中央水産研究所 (非常勤研究員)
2004年4月〜19年3月  独立行政法人理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター タンパク質構造・機能研究グループ (リサーチアソシエイト)

2007年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科・メディカルゲノム専攻・病態医療科学分野 ヒューマンサイエンス振興財団(リサーチ・レジデント)      

2009年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科・メディカルゲノム専攻・病態医療科学分野(助教)       

2016年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科・メディカル情報生命専攻・病態医療科学分野(助教)

2017年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科・メディカル情報生命専攻・ウイルス発癌分野(准教授)
   
教育活動
(1)メディカルゲノム基礎演習II 
(2)メディカルゲノム基礎演習IV
(3)メディカルゲノム全学体験ゼミナール
(4)IARI交換留学プログラム(ENS-Lyon交換留学生研究指導)
研究活動
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)がT細胞に感染し、引き起こされる難治性血液腫瘍である。HTLV-1は主に母乳を介して乳児のT細胞に感染し、その後長い潜伏期間を経て、60歳前後の高齢になってから腫瘍化しATLを発症する。私はHTLV-1の感染により、どのような分子異常が感染細胞内に蓄積され、腫瘍化の引き金になるのか、ATLの発症機序をウイルス学と腫瘍学の両側面から研究している。

RNAウイルスであるHTLV-1にとって、宿主細胞に侵入後、ウイルスゲノムRNAが逆転写され、宿主ゲノムDNAの組み込まれること、組み込まれたプロウイルスから宿主の転写・翻訳機構を使ってウイルスmRNAの転写とウイルス構造タンパク質の翻訳が起こり、さらにウイルスゲノムRNAがウイルス粒子に内包されて細胞外に放出されることが、ウイルス複製に不可欠である。HTLV-1のコードするRNA結合タンパク質RexはウイルスmRNAに選択的に結合し、核外に輸送することによってタンパク質への翻訳を促進している。我々はさらにRexが細胞内のmRNA品質管理機構(Nonsense-mediated mRNA decay: NMD)の活性を抑制することによりウイルスゲノムRNAが安定化し、ウイルス複製効率が増加することを明らかにした。

一方、HTLV-1がT細胞に感染してから腫瘍化するまでの数十年間に、どのような異常が蓄積しているのか、その発症機序は未だ不明な点が多く、決定的な治療法開発の妨げとなっている。我々の研究室ではATL細胞で遺伝子発現プロファイルを詳細に解析し、c-MybとFoxM1という2つの癌原転写因子の過剰発現と機能異常が、ATL細胞の増殖能や転移能の基盤を成していることを発見した。
[文献]
1. Nakano K, Uchimaru K, Utsunomiya A, Yamaguchi K, Watanabe T. (2016). Dysregulation of c-Myb pathway by aberrant expression of proto-oncogene MYB provides the basis for malignancy in adult T-cell leukemia/lymphoma cells. Clin Cancer Res. 22: 5915-5928.

2. Nakano K and Watanabe T. (2016). HTLV-1 Rex Tunes the Cellular Environment Favorable for Viral Replication. Viruses 8: 58; doi:10.3390/v8030058.

3. Aoki S, Firouzi S, L?pez Y, Yamochi T, Nakano K, Uchimaru K, Utusnomiya A, Iwanaga M, Watanabe T. (2016). Transition of adult T-cell leukemia/lymphoma clones during clinical progression. Int. J. Hematol. 2016 Jul 6. [Epub ahead of print]

4. Fujikawa D, Nakagawa S, Hori M, Kurokawa N, Soejima A, Nakano K, Yamochi T, Nakashima M, Kobayashi S, Tanaka Y, Iwanaga I, Utsunomiya A, Uchimaru K, Yamagishi M, and Watanabe T. (2016). Polycomb-dependent epigenetic landscape in adult T-cell leukemia. Blood 127: 1790-1802.

5. Ochiya T, Takenaga K, Asagiri M, Nakano K, Satoh H, Watanabe T, Imajoh-Ohmi S, and Endo, H. (2015). Efficient inhibition of tumor angiogenesis and growth by asynthetic peptide blocking S100A4-methionine aminopeptidase interaction. Methods Clin. Dev. 2: 15008; doi:10.1038/mtm.2015.8

6. Takahashi R, Yamagishi M, Nakano K, Yamochi T, Yamochi T, et al. (2014) Epigenetic deregulation of Ellis Van Creveld confers robust Hedgehog signaling in adult T-cell leukemia. Cancer Sci. 1?10.

7. Kobayashi S, Nakano K, Watanabe E, Ishigaki T, Ohno N, et al. (2014) CADM1 expression and stepwise downregulation of CD7 are closely associated with clonal expansion of HTLV-I-infected cells in adult t-cell leukemia/lymphoma. Clin Cancer Res. 20: 2851?2861.

8. Nakano, K, Ando, T, Yamagishi, M, Yokoyama, K, Ishida, T, Ohsugi, T, Tanaka, Y, Brighty, D W, and Watanabe, T. (2013). Viral interference with host mRNA surveillance, the nonsense-mediated mRNA decay (NMD) pathway, through a new function of HTLV-1 Rex: implications for retroviral replication. Microbes Infect. 15:491-505.

9. Asanuma, S, Yamagishi, M, Kawanami, K, Nakano, K, Sato-Otsubo, A, Muto, S, Sanada, M, Yamochi, T, Kobayashi, S, Utsunomiya, A, Iwanaga, M, Yamaguchi, K, Uchimaru, K, Ogawa, S, and Watanabe, T. (2013). Adult T-cell leukemia cells are characterized by abnormalities of Helios expression that promotes T-cell growth. Cancer Sci. 104: 1097-1106.

10. Nakano, K, and Watanabe, T. (2012). HTLV-1 Rex: the courier of viral messages, making use of the host vehicle. Front. Microbiol. 3:330. (Epub doi: 10.3389/fmicb.2012.00330)

11. Yamagishi, M, Nakano, K, Miyake, A, Yamochi, T, Kagami, Y, Tsutsumi, A, Matsuda,Y, Sato-Otsubo, A, Muto, S, Utsunomiya, A, Yamaguchi, K, Uchimaru, K, Ogawa, S, and Watanabe, T. (2012). Polycomb-mediated loss of miR-31 activates NIK-dependent NF-kB pathway in adult t cell leukemia and other cancers. Cancer Cell 21: 121?135.

その他
(1)日本HTLV-1学会評議委員
(2)第18回国際HTLV-1会議 (Tokyo2017) 運営事務局員
(3)学会員:日本HTLV-1学会、日本癌学会、日本血液学会、日本ウイルス学会、日本分子生物学会
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将来計画
HTLV-1というウイルス感染が引き起こす非常に難治性の成人T細胞白血病(ATL)の発症機序を、ウイルス学と腫瘍学の両方からアプローチすることにより明らかにしたい。また 医科学研究所内の研究室としての地の利を最大限に生かし、基礎研究と臨床の連携によって、新しい治療法開発に役立つ情報を発信していきたい。
教員からのメッセージ
大学院での研究は世界であなたが初めて行うものです。ですからゴールに到達するまでの案内図はありません。ゴールに達したときの喜びも大きい分、大変なこともたくさんあるでしょう。でも問題に直面したときどのように解決するのか、そのストラテジーは大学院修了後違うテーマの研究を続けても、また企業に就職しても、必ず役に立ちます。研究のプロが集結したこの研究科での経験を、あなたの人生の杖にしてください。
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