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木村 薫 きむら かおる/教授/基盤科学研究系
物質系専攻/マテリアル・機能設計学講座/ナノスペース機能学分野
http://www.phys.mm.t.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1979年3月東京大学理学部物理学科卒業、1984年6月東京大学大学院理学系研究科物理学専門課程博士課程修了、日本学術振興会特別研究員、1984年10月東京大学物性研究所助手、1989年9月東京大学工学部金属材料学科講師、1992年6月東京大学工学部材料学科助教授、1993年11月〜1994年9月ドイツ・ゲルハート・メルカトール大学ドゥイスブルク客員研究員、を経て1999年4月より現職。工学部マテリアル工学科を兼担。2001年10月より独立行政法人産業技術総合研究所界面ナノアーキテクトニクス研究センター主任研究員を併任。
教育活動
大学院:クラスター機能設計学
工学部:マテリアル統計力学、マテリアル電子物性学
その他:東京大学運動会フェンシング部長
研究活動
 アモルファス固体、準結晶、巨大単位胞結晶と、「複雑構造固体」の構造と物性に関する研究を一貫して行ってきた。「複雑構造固体」は、単純構造固体では共存できない物性や機能を併せ持つナノスケールの複合材料と位置付けている。これらは、金属分野と半導体分野を融合させる「学融合」の一試行であり、金属と半導体の中間的材料の創製へと発展させつつある。
  1981年に、アモルファス固体の本質である非平衡性に基づいた2つの現象、カルコゲナイド・ガラスにおけるガラス転移に伴う構造変化と光構造変化の同等性を実験的に証明した。これは、最近発展している電子励起原子移動の分野の走りであった。
 1984年にアルミ系準結晶合金が発見された直後に、この分野の研究を始めた。特に、1989年に電気抵抗率が合金としては異常に高いことを証明した。これは合金系の抵抗率に関するそれまでの常識を覆すものであった。さらに、この原因がフェルミ準位における状態密度の深い擬ギャップと電子状態の局在傾向であることを明らかにした(文献1)。これらの成果により、1994年に第8回日本IBM科学賞を受賞した。その後も、準結晶合金の半導体的物性や共有結合の存在を、実験的に明らかにしてきた。これは、長距離秩序に起因した機構と、短距離秩序に起因した共有結合の関連についての理解へと発展している。
 1989年からは、高抵抗率の準結晶合金の主成分であるアルミニウムと同じIII族のボロンを主成分とし、同じ正20面体クラスターを構造単位とする、ボロン系半導体に研究対象を広げた。この研究により、1993年に第13回村上奨励賞を受賞した。さらに、ボロン−炭素系において準結晶の近似結晶を発見し、1994年に日本金属学会ジェフリース賞を受賞した。また、フラーレン固体やシリコン・クラスレート化合物との比較によりボロンの正20面体クラスター固体としての物性の特徴を明らかにした。この研究は、他の研究者による最近のMgB2の高い超伝導転移温度(Tc)の発見により、より高いTcの超伝導体の探索研究へと繋がっている。
 1997年に、ボロンとアルミニウムの正20面体クラスターにおいて、僅かな構造変化による「金属結合−共有結合転換」を見出し、実験的にも確認しつつある。それぞれ金属と半導体の分野で独立に研究されてきた、アルミ系準結晶合金とボロン系半導体を併せて議論することにより、「正20面体クラスター固体」の統一的描像を構築しつつある(文献2)。これは、「学融合」の一つの試みである。これらの研究により、2002年に日本金属学会功績賞を受賞した。さらに、これらの物質群を金属と半導体の中間や、「複雑構造固体(ナノスケールの複合材料)」に位置付け、熱電変換材料や高抵抗チップ材料を開発する研究へと発展させつつある。
 1997年と2000年に、Li蒸気下での熱処理によるBNナノチューブやナノコーンの生成を発見し、ナノチューブや空間に孤立したクラスター等のナノ構造の研究も開始している。
[文献]
1) K.Kimura and S.Takeuchi, in QUASICRYSTALS: THE STATE OF THE ART (2nd Edition), ed. D.P.Divincezo and P.J.Steinhardt, World Scientific, Singapore, 325-359 (1999).
2) K.Kimura et al. J. Solid State Chem. 133, 302-309 (1997).
その他
所属学会:日本金属学会(評議員、関東支部理事、会誌・欧文誌編集委員、元会報編集委員、元分科会委員会委員)、日本物理学会(元半導体分科世話人、元金属分科世話人)、熱電変換研究会(運営委員、幹事)、The International Symposium on Boron, Borides and Related Compounds(International Scientific Committee Member)、Materials Research Society (MRS)、日本MRS (MRS-J)、ナノ学会、フラーレン研究会
各種委員会:文部科学省科学技術政策研究所科学技術動向研究センター専門調査員、理化学研究所原子力基盤クロスオーバー研究アト秒パルス交流委員
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将来計画
 通常の大きさ(1cm3程度)の固体は、原子が1023個程度集まった、超多体系である。そこには純粋な固体物理学が対象として来なかった未開拓の膨大な自由度が残されている。物質系専攻の使命は、この未開拓な自由度を開拓して、新しい概念や描像を構築し、その利用法まで開発することである。そのための一つのアプローチとして、物質機能の理解と新物質探索のための概念「クラスター固体」の構築を目指す。この試みの具体例が、前述の「正20面体クラスター固体」であり、新研究科全体が目指している「学融合」の一つになるものである。
教員からのメッセージ
 大学院では、将来どのような研究テーマに出会っても自ら道を切り開いて行ける、物質の科学と技術に対する柔軟性と高いポテンシャルを養ってほしい。「井の中の蛙、大海を知らず、されど天の深さを知る」。大学という「井」の中で.....。
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