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保坂 寛 ほさか ひろし/教授/環境学研究系
人間環境学専攻/人工環境学講座/環境情報マイクロシステム分野
http://www.ems.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1979年3月 東京大学工学部精密機械工学科卒業
1981年3月 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了
1981年4月 電電公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所
1988年1月〜1989年1月 マサチューセッツ工科大学客員研究員
1997年4月 東京大学大学院工学系研究科助教授
1999年4月〜 現職
教育活動
大学院:環境情報機器特論
大学院工学系研究科:人間環境メカトロニクス
工学部システム創成学科:機械力学1
研究活動
大学院修士課程では(1979〜1981),有限要素法における固有振動数の近似計算法を研究した.NTTでは(1981〜1997),フロッピーディスク,光ディスク,MEMSスイッチアレー,光ファイバ敷設ロボットなどの情報通信用メカトロニクスの研究開発,ならびに新規事業の企画に従事した. 東京大学では(1997〜),初期には近接場光ディスク,MEMS振動測定器,振動発電機,環境雰囲気センサ,屋内位置センサなど,メカトロニクス要素技術を研究した.
 最近は,情報通信,センシング,メカトロニクスを基盤技術として,人間および人工環境を対象とするユビキタスセンサネットワークの構築を進めている.人間環境では,人体上に多数のセンサを配置し,装着者の行動予測や感情推定を行い,欲しい情報をネットワークから持ってくる行動認識システムを研究している.人の行動には,場所や曜日により規則性があるため,センサで身体の動きや位置を記録し,行動遷移の確率モデルを生成すれば,次の行動の予測や異常の検出が可能となる.また,眠け・疲労・繁忙感・空腹などの情感も,センサデータと行動パターンからある程度推定できる.これらの推定結果により,天気予報,時刻表,レストラン情報を検索したり,健康管理,作業補助,危険回避に応用する研究を行っている.
 人工環境では,物流位置情報システムを開発している.PHSやテレメトリ送信機を,パレットや製品ケースに装着し,電界強度や移動パターンから高精度に位置を検出する方法を研究している.また得られた無数の位置情報から,製品の流れや過不足の予測,紛失・破損原因の推定などを行うデータマイニングを研究している.学生が発想したアイデアのうち優れたものを共同研究企業で事業化し,学生自らが市場の反応を見てビジネスを展開する体制をとっている.
 人・物流ともに移動体であり,情報機器の搭載には電源の確保が課題となる.一方移動体には必ず振動が伴うため,その運動エネルギを利用すれば,無限に稼動する電源が出来る.この技術はすでに腕時計で商品化されているが,これより10万倍高出力(1W)のジャイロ発電機を研究している.この実現には,ランダムに変わる人や移動体の振動に電機子の回転を同期させることが必要で,解決方法として,回転体の機械インピーダンス制御や,皿回し・大車輪(鉄棒)などの大道芸ロボットの制御技術を用いている.また,旗や幕のはためきを電力に変換する平面型風力発電も研究している.簡単な構造で場所をとらないため,ビルや自然物などあらゆる屋外物体の表面に装着できる.また粘性流を用いるため,風車に比べ,小型化した場合の効率が高い.
 以上の成果を,佐々木健教授,森田剛助教授が行う人体通信,自動車運転環境快適化,センサ・アクチュエータマイクロ化の研究と組合せ,環境情報ネットワークの構築を進めている.また学生と協力して,情報デバイスや機械力学の教科書の執筆を行っている (文献1,2).

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Figure: ウェアラブル行動認識システム
[文献]
1)H. Hosaka, et.al.,"Micro-Optomechatronics", Marcel Decker, New York, 2005
2)保坂寛,“機械振動学”,東京大学出版会,2005
その他
精密工学会,日本機械学会,日本時計学会,電子情報通信学会会員.
精機学会論文賞「実験データを併用する対話型構造解析システムの開発」,日本機械学会論文賞「球面フォイル軸受の研究」,精密工学会論文賞「櫛歯状マイクロ振動子における連成振動の解析」,日本時計学会青木賞「人体を伝送路とする情報通信デバイスの研究」,IEEE/ASME MESA06論文賞「Vibration stimulus of seat belt motor retractor for keeping drivers awake」,日本時計学会青木賞「Evaluation Platform for Physiological Information Systems Using Wearable Sensors and Information Technology」.
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将来計画
 メカトロニクスは,電子,光,情報技術により機械の機能を高度化する技術である.1970年代に日本のメーカが提唱し,以来30年間,日本の製造業を牽引してきた.当初は生産システムの高精度化,高速化に利用され,その後,IC,半導体レーザなど電子部品の劇的な低価格化により,自動車,情報機器,家電などの生活分野に利用されるようになった.今後は,人体に装着したり環境に埋めこんで使うユビキタス化の時代になる.また従来のメカトロニクスは,平均的な利用者に対して最適に動作するように設計されていたが,今後は,機器自体が利用者の個性を理解し,それにあわせた動作を行うようになる.例えば,利用者の行動様式と好みの温度を学習するエアコンがあれば,省エネや行動を予測した空調が可能になる.このためには,人,自然,人工物の情報を時々刻々収集し,周囲環境との関係を考慮して対象物の特徴を抽出する技術が必要になる.以上をユビキタスメカトロニクスと呼び,今後の研究の中心にしたいと考えている.
教員からのメッセージ
 環境学は学融合の典型であり,幅広い知識と社会事象全般への知的好奇心が必要とされる.一方で,少なくとも1つの分野で専門家とならなければ,本質的な議論に参加できない.これら専門性と広範性の能力は,学融合に限らず,あらゆる学問,ビジネスで必要とされている.当研究室での学習,研究を通じて,深くかつ幅広い能力・視野をもつ人材に育って欲しい.
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