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江尻 晶 えじり あきら/准教授/基盤科学研究系
複雑理工学専攻/集団現象物理/プラズマ物理,核融合科学
http://fusion.k.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1987年3月東京大学理学部物理科卒業
1992年3月東京大学大学院理学系研究科退学
1992年4月核融合科学研究所助手
1994年3月博士号(理学)取得
1998年3月東京大学大学院理学系研究科助手
1999年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授を経て2007年4月より准教授(現職)
教育活動
大学院:乱流輸送物理学、複雑理工学実験概論
理学部物理学科:流体力学、プラズマ物理学
研究活動
 プラズマは荷電粒子の集合である。各粒子は電場と磁場を自ら生成すると伴にこれらを通して相互作用をする。これらの相互作用は遠距離までおよび、プラズマは集団的な振る舞いを示す。一方、プラズマ中の温度、圧力などの不均一性は、不安定性を引き起こし、プラズマは均一な状態に近づこうとする。ところが、高温のプラズマでは、衝突、拡散、散逸が小さく、熱平衡状態、均一な状態からはるかに離れた状態が維持される。このようなプラズマは従来の統計力学では記述できず、また、少数の自由度で記述できるようなカオスとも異なる。
 これらのことからプラズマは強い非線形、非平衡な系と言われ、従来の線形な系とは全く異なったアプローチが必要である。強い非線形性、非平衡性はプラズマ中の揺らぎとなって現われる。ところが、プラズマは非常に高温であるため揺らぎの直接的な測定は難しい。そこで、新しい測定方法、新しいデータ解析方法が求められている。
 球状トカマクでは、小型でも高いプラズマの性能(温度、密度など)を得られるという可能性がある。我々の研究室では、早くからこの可能性に着目し 1993年より、TST装置を設計製作し、1995年より実験を開始した。またプラズマの性能をさらに上げるために1998年末より新しい装置(TST- 2)を設計し、1999年9月より実験を開始した(文献1)。これらの装置は、ほとんどの部分を自分たちで設計し、また組立ての大部分も自分たちで行った。2002年には、一時的にTST-2を九州大学へ移設し、高電力高周波加熱実験をおこなった(文献2)。その後、2003年に柏キャンパスに移設し実験を行っている。主な研究テーマは、(1)乱流、(2)高周波による加熱・電流駆動、(3)熱粒子輸送の制御、(4)MHD安定性、(5)計測手法の開発である。
 国内共同研究先は、核融合科学研究所(岐阜県)、九州大学(福岡県)、日本原子力研究機構(茨城県)である。また、プリンストンプラズマ物理研究所(米国)、英国原子力研究所カラム研究所とも共同研究を行っている。

TST-2球状トカマク実験装置
TST-2球状トカマク実験装置

[文献]
1) Takase Y, et al. Nucl. Fusion 41,1543 (2001).
2) Ejiri A. et al. Nucl. Fusion 46, 709 (2006).
その他
日本物理学会、プラズマ核融合学会各会員。
核融合フォーラム調整委員。
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将来計画
現在、TST-2では、高周波入射によるプラズマ立ち上げ、加熱を主要なテーマとして実験を行っている。さらに、上記に示した機関と共同研究を行っている。また、プラズマ実験のための、新しい計測手法、特に揺らぎの3次元構造を明らかに出来る計測手法の開発が重要である。
教員からのメッセージ
当研究室では自分の手でものを作ることを奨励している。自分で作ることによって原理を理解できる。そのような経験は、新しい装置を設計、製作する時の助けとなる。特に、今までにない手法の開発においては、アイディアだけでなく、もの作りの経験が不可欠である。また、近年の核融合実験は、巨大科学として行われることが多く、そこでは、徹底した分業が行われ、各研究者はともすると自分の専門だけにしか関心がなくなる。このような巨大科学においては、プロジェクト全体を見渡すことができる人材が必要である。本研究室は、比較的小規模な実験装置を自ら運転、保守することを通して、実験全体を見渡すことが出来る人材の育成につとめている。
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