spacer


横山 明彦 よこやま あきひこ/教授/基盤科学研究系
先端エネルギー工学専攻/システム電磁エネルギー講座/電気エネルギーシステム工学
http://www.syl.t.u-tokyo.ac.jp/

略歴
1979年3月東京大学工学部電気工学科卒業
1984年3月東京大学大学院工学系研究科電気工学専門課程博士課程修了(工学博士)
1984年4月東京大学工学部助手
1985年4月東京大学工学部講師
1987年2月〜1989年2月米国テキサス大学、カリフォルニア大学客員研究員
1989年4月東京大学工学部助教授
2000年9月東京大学大学院工学系研究科教授
2008年4月より現職
教育活動
大学院:電力システムダイナミクス、電力システム回路解析
工学系研究科電気系工学専攻:電力系統工学特論
工学部電気電子工学科:電力システム工学第一、同第二

研究活動
電力システムは巨大な電気・機械・経済システムであり、物理現象の解析から電力取引市場の経済的評価まで、幅広い研究テーマがあります。
当研究室では、主に計算機によるシミュレーション技術を活用し、応用数学から制御工学、電気工学、社会経済学までの幅広い視点から、産業界の実務者と連携を取りながら、システマティックに以下のような研究に取り組んでいます。

1)大量の分散型電源が連系可能な革新的な電力供給システム「ユビキタスパワーネットワーク」の構築
地球温暖化などの環境問題、省エネルギー、コスト削減、供給信頼度の維持などへの期待から、太陽光発電や風力発電、MGT、コージェネレーションなどの分散型電源を大量に系統に連系することが期待されています。
一方、これらの分散型電源が連系された電力系統では、電圧分布、短絡容量、単独運転、周波数、安定度などに対し、系統の計画、運用、制御の各段階で多くの課題が発生することが懸念されています。
当研究室では、進歩しつつある電力貯蔵技術、マイクログリッド技術、ICT技術、制御技術などを用いてその問題点を解決し、電力系統の運用に貢献する手法を提案し、より多くの分散型電源が連系可能な革新的な電力供給システム「ユビキタスパワーネットワーク」の構築の検討を行っています。
特に、わが国において風力発電を大量に系統連系するには、その発電出力の変動のために生じる周波数変動を抑制することが急務となっています。
そのために、まず、一般需要家のヒートポンプ負荷制御と風力発電の風車ピッチ角制御、そして蓄電池制御を協調させた経済的な周波数制御システムの構築の検討を行っています。(文献1)


ユビキタスパワーネットワーク
ユビキタスパワーネットワーク


2)パワーエレクトロ二クス応用電力制御機器(FACTS機器)などによる停電影響極小化方策
近年、世界中で大規模停電事故が発生しており、その停電の社会への影響を極小化する技術が求められています。
一方、パワーエレクトロニクス技術の進歩に伴い、FACTS(Flexible AC Transmission Systems)機器をはじめとする電力制御装置や超電導エネルギー貯蔵装置(SMES)などを電力系統の最適潮流制御、安定化制御へ適用することが検討されています。
当研究室では、直列型FACTS 機器であるUPFC(Unified Power Flow Controller)やIPFC (Interline Power Flow Controller)を系統に導入し、過負荷を解消し、安定度を向上する最適潮流制御(OPF)の手法を開発しています。(文献2)
また、稀頻度である大事故により停電が発生した場合に、複数台のFACTS 機器、エネルギー貯蔵装置、制御可能な分散型電源等により、停電範囲を極小化する緊急時制御手法を検討しています。


Interline Power Flow Controller(IPFC)
Interline Power Flow Controller(IPFC)


IPFCによる電力系統の最適潮流制御
IPFCによる電力系統の最適潮流制御


3)競争環境下における電力システムの計画・運用・制御
我が国を含め世界の電気事業では、制度改革により競争環境が導入されています。
この電力自由化により、全ての事業者が差別なく資源を利用できるようになり、市場取引が盛んになる一方で、余裕ある投資が難しくなり、送電線の混雑や需給バランス、系統安定性に関する懸念はより高まるため、信頼度の管理はより定量的・効果的に行う必要があります。
そこで当研究室では、送電線容量の評価、連系線マージンの評価、電力取引市場のモデル化、供給信頼度の評価など電力自由化においてまだ理論的に明確になっていない課題に取り組んでいます。特に、最適化問題を解くための新しいヒューリスティックな手法の適用の研究や、
自由化において発生する不確実性を考慮して過渡安定度制約付きATC(送電線空き容量)を算出する手法の研究なども行っています。(文献3)


地域間連系線の運用容量、空き容量、マージンの関係
地域間連系線の運用容量、空き容量、マージンの関係


地域間連系線のCapacity Benefit Margin(CBM)
地域間連系線のCapacity Benefit Margin(CBM)


4)広域電力システムのオンライン監視・制御によるインテリジェント化
大規模、複雑化し、電力自由化により過酷な負荷条件で運用せざるを得なくなっている電力系統に対して、運用、制御技術の高度情報化、インテリジェント化によって、供給信頼性の維持、向上を目指しています。
PMU(Phase Measurement Unit)などを用いて、多地点で同時に系統情報を測定し、得られた情報から複雑な電力システムをシンプルなモデルとしてオンラインで同定し、発電機PSS(系統安定化装置)の制御系パラメータを適応的に変更して安定度向上に役立てるなど、
IT 技術をより活用した系統制御システムの基礎的検討を行っています。(文献4)


オンライン適応型電力系統安定化装置(PSS)
オンライン適応型電力系統安定化装置(PSS)


[文献]
1) 入江、横山、多田: 風力発電大容量導入時における周波数安定化への需要家ヒートポンプ給湯器の利用に関する検討, 電気学会電力技術・電力系統技術合同研究会 (2008年8月).
2) K.Kawabe, A.Yokoyama: Minimizing Control of PNS by Multiple FACTS Devices in Power Systems, Proc. of Power Con, India, Sept., 2008
3) K.Tangpatiphan, A.Yokoyama: Transient Stability Constrained Optimal Power Flow Using Evolutionary Programming, Proc. of PSCC 2008, UK, July, 2008
4) 杉原、横山、伊是名: 広域電力系統における低次線形モデルを用いた適応型PSSのパラメータのオンライン設計法,電気学会論文誌B,126巻12号,2006年
その他
電気学会、電気設備学会、計測自動制御学会、日本応用数理学会、IEEE、CIGRE各会員。
電気学会B部門編集担当役員(2005〜2007)、電気学会保護リレーシステム技術委員会副委員長(1999〜)。
IEEE PE Tokyo Chapter Vice Chairman(2007〜)、IEEE Tokyo Chapter Membership Development Committee Chairman(2007〜)、IEC/TC8日本国内委員会委員長(2004〜)、CIGRE日本国内委員会副委員長(2006〜)、PSCC/TPC Member(1995〜2005)。
原子力安全・保安院電力安全小委員会委員、経済産業省電気事業分科会委員(2007〜)、電力系統利用協議会理事(2004〜)、同協議会・ルール策定委員会委員長(2004〜)、(財)電力中央研究所理事(2005〜)等。

spacer
将来計画
本研究室では、地球温暖化問題解決、エネルギーセキュリティ確保、供給信頼度の維持を目的として、引き続き、革新的な統合型電気エネルギー供給ネットワークであるユビキタスパワーネットワークの構築に向けて研究を進めていく予定です。
太陽光発電、風力発電だけでなく、ヒートポンプなどの負荷機器制御、電気自動車の充電制御、、ローカルな水素供給システム、究極的には、宇宙太陽光発電衛星からの電気エネルギーの活用も考えたいと思います。
また、世界中で発生している大停電事故の社会への影響を極小化する技術についても、経済的な手法も取り入れた総合的な手法の開発に取り組んでいきたいと考えています。

教員からのメッセージ
技術革新が進み複雑になった現代社会では、ブラックボックスになった基礎技術を使って、新たな技術を短期間で開発したり、新システムを構築、運用したりすることが多くなっていると思います。
当研究室においては、あえてこのブラックボックスの中身を自分で確かめながら、また自分で作りながら、時間はかかりますが、新しい技術を開発していくことをポリシーとしています。
そして学生さんは、研究室を巣立つ頃には、何事にも自信をもってチャレンジすることのできる技術者、研究者になっているはずです。
電気エネルギーの安定供給と地球環境問題の解決という公益的課題に興味がある学生は、ぜひ当研究室の門戸をたたいて下さい。
top