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第1回 なぜ計画停電するの?どうやって電気は送られるの?  

講師 横山明彦教授 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)
日時 4月24日(日曜日)  14時~15時(13時半受付開始)
会場 東京大学柏キャンパス 柏図書館メディアホール(柏の葉5-1-5)
 
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  第1回市民講座は終了しました。
多数のご参加を頂きありがとうございました。

質疑応答

Q1
自分の住んでいる地域が、変電所の関係で計画停電の対象外になったのですが、これはどのようなことでしょうか?

A1

今回の計画停電では、途中から、電鉄などに電気を供給する変電所は停電させないということになりました。おそらく、お住まいの地域が、電鉄などと共通の変電所から電力が送られているた
めではないかと思います。

 

Q2
電気の蓄電は可能なのでしょうか?

A2

直流も交流もためることは可能です。例えば、交流の電気は直接、ポンプ水車を回して水を上池にくみ上げるという形の揚水発電所で蓄えることができますし、蓄電池では、交流を直流に変換して電気を蓄えています。

 

Q3
水力発電の中で、流込式水力発電という24時間稼働しているものと、昼間だけ稼働しているその他の種類がありますが、これらの違いは何でしょうか?

A3
流込式水力発電というのは、ダムを介さず、川から直接水をとる発電です。ダムなどが造りにくい場所などにある小型の水力発電所と考えてもらえればよいと思います。水をためる場所がなく、捨てるのはもったいないので、24時間稼働しています。
一方で、大きなダムのある発電所では、水をいったん溜めて、昼間の電力需要が大きく、電気が必要なときに発電して、燃料費用のかかる火力発電を減らすような形で運用しています。

 

Q4
揚水発電の効率はどのくらいでしょうか?

A4

水を上の池にあげて溜め、発電のために下の池に落とした時のエネルギーの損失は30%と言われています。すなわち、総合効率70%ということになります。

 

Q5
交流の電圧の位相というのは、東京電力管内ですべて一致しているのでしょうか?

A5
交流の電気では、電圧の波(正弦波)の位相の差を利用して電気を送っているため、位相は地点地点ですべて違うということになります。

 

Q6
太陽電池で発電して、余った電気を東京電力に売る時は、位相を合わせる必要があるのでしょうか?

A6

合わせる必要があります。
太陽光発電は、直流で電気を起こして、パワーコンディショナーという装置で交流に変換します。そして交流に変換した後に、交流ネットワーク側とつなぐ時には、このパワーコンディショナーの位相と交流ネットワークのつなぐ地点の位相が一致している必要があります。そのため、パワーコンディショナーには交流ネットワーク側の位相を検出して、位相を合わせる装置が入っています。

 

Q7
周波数変換所を介した送電の場合の送電ロスはどれくらいになるのでしょうか。

A7

大体、周波数変換所だけで2%くらいで、両端の交流送電線ロスも2%くらいあるので、合わせて4%くらいだと思われます。

 

Q8
50Hz、60Hz の違いに関していいこともあるとおっしゃっていましたが、そこの説明をもう少しお願いします。

A8
基本的なメリットは、突発的な大規模停電をおこさないということがあります。例えば、ヨーロッパでは2006 年11 月にドイツのエルベ川というところで、観光船が通るので川にかかっている送電線の送電を計画的に止めました。送電を止めて、船が通過するまでは良かったのですが、送電を止めたことで、ドイツからチェコ、ベルギー、フランス、ポルトガル、スペイン、イタリア、スイスと西ヨーロッパの国々が停電しました。これはなぜかと言いますと、ネットワークがすべて同じ周波数で、交流で接続されていたからです。このように一つの事故の影響がポルトガルの西端まで伝わって影響を与えてしまうという怖さが交流連系系統にはあります。

 

Q9
家庭ではなく、産業界の節電はどのくらいでしょうか?

A9
需給調整用電力という、需給が切迫したときには電力使用を控えてもらうという契約があります。これは、そのために普段から電気使用料を安くするという大口の顧客に対する料金体系です。
これを利用しますと約280万kWくらい電気の使用量を夏場に減らすことができます。また、産業界の皆さんで、計画的に操業時間や出勤日をずらすなどの工夫をして、できる限りの節電をしてうまくやっていくことが必要です。大口需要家である東大としても努力をしてまいります。

 

Q10
揚水発電について初めて知りました。
午前中のテレビで、夜の節電は必要ないという主張があったので、揚水発電についてのPRなどが必要ではないかと思いました。

A10

おっしゃる通りPR が必要ですね。揚水発電所で昼に発電をするためには、夜に余っている電気を使って水を上池に汲み上げる必要があります。これには、夜間に電気が余ること、そして、それには、十分な火力発電の燃料が必要です。従いまして、夜もできる限りの皆さんの節電が必要となりますので、よろしくお願いします。

 

Q11
東京直下型地震などが起こった時にどのように対処するのかといったことは考えられているのでしょうか?

A11
送配電設備に限りますと、大地震で絶対に故障しない、被害を受けないようにするというのは現実的ではないので、災害の後に故障からどれだけ早く復旧できるかというのが重要だと思います。皆さんの家の周りは、架空の電線ですので、その復旧は早いですね。今回の東北地震でも3、4日ほどで復旧をしています。復旧資材の調達、応援体制なども十分に準備をしています。しかし、このような準備はあっても、実際の復旧に行くための道路はどこが使えるのか、復旧する方の食糧、宿は確保できるのかなど、さまざまな点からの議論が今後必要だと思います。

 

Q12
すべての家庭の電力使用の上限を設けるといったような、利用制限のようなことはできないのでしょうか?

A12

実は、スマートグリッドと呼ばれる技術の中のスマートメーターというものを使用すれば可能になります。これには、各家庭に電力会社から信号を送る必要もあり、うまく動作するか実証試験をする必要があります。これはこの地震が起きる直前に、政府の委員会で10年をかけて導入するということが決まっています。そのため、10年後には、または、実証試験を行った後、コストはかかりますが、導入していけば、電気の利用制限のようなことも可能になると思います。

 

Q13
50 ㎐と60 ㎐の周波数の問題、バッファの問題ということで直流によるシステムが必要だとは思いますが、このような緊急時に関して100 万キロワットしか送れないということであれば先生方の方から早めに(周波数統一化を)奨めるよう提言してほし いと思います。

A13
周波数統一は非常に難しいと思います。まず、50Hz から60Hzへの統一は、東日本の火力発電所で定格タービン回転数を上げることになるので取り換えが必要となり、非常に困難です。電力会社以外にも、大口需要家が持つ自家用発電機が全国各地に多数あり、大型のものではどちらかのHz にしか対応してな いものが多くあります。これらすべてをどちらかのHz に合わせるのは多大なコストがかかります。また、送電系統にたくさんある変圧器においては、50→60Hz で使用した場合には電圧の変動が大きくなります。逆に、60Hz→50Hz に統一する場合は、変圧器は鉄心の過熱の問題から取り換えが必要となります。火力発電所のタービン発電機も、定格回転数を下げることになりますが、機械的な問題からやはり取り換えが必要になります。落雷などの事故から電力設備を守る各地の送電設備の保護リレーシステムもHz 依存のシステムのため、全体の何万という設備を交換しなくてはなりません。これらの問題を解決するのには莫大な費用が掛かるため統一化は現実的ではないのです。そのために、今ある異周波数交流システムの利点を活用していくのがよ
いのではないでしょうか。

 

Q14
将来的に考えたときに、日本の電力供給システムはどのような形にするのがいいのでしょうか?

A14

これから、国民の皆さんと一緒に、冷静に議論していく必要があると思います。原子力発電所が止まっている間は、不足する分を火力、水力、その他の発電で何とか補完する。それでも足りない場合は皆さんに節電をお願いするということになります。
このようなことを続けながら、今後の電力供給の在り方を議論 していく必要があると思います。これには、必ずしも経済性だけでなくベストミックスというエネルギーセキュリティーの考え方も重要になります。そもそも、日本が石油だけに頼っていた火力発電をLNG(液化天然ガス)火力発電、石炭火力発電、原子力発電という割合を増やしていった背景には、1970年代の石油ショックがあります。石油ショックにおいて、石油の発電一種類に頼ってはいけないという状況が生まれました。そこで、原子力もやるLNG火力もやる、石炭火力もやるという具合に、石油、水力だけだった発電から多様化が起こりました。したがいまして、ベストミックス、経済性、安全性、もちろん安全性が一番大切ですが、といった様々な要素を考えて、さらに太陽光、バイオマス、地熱、風力発電などの再生可能エネルギーなどもできるだけ取り入れながら、最適な形態を冷静に検討していく必要があると思っています。

 

Q15
再生可能エネルギーを含む今後のベストミックスといった(先生の)考え、提言をお聞かせ願えませんでしょうか。

A15

現在日本政府は、5300 万kW の太陽光発電を2030 年までに導入するということを掲げています。このような再生可能エネルギーは瞬時の発電量(kW)はたくさん出ますが、全体のエネルギーとしての発電量(kWh)は低いのです。この目標を達成できたとしても一年全体の電気消費量(kWh)の中の5% ほどしか満たせません。太陽光発電の特性(日射量)、地域特性により、全体としては設備量の12% ほどの発電量しか見込めないためなのです。太陽光発電は、夜は発電しませんので、この太陽光発電の電気を夜に使うには、蓄電池などの貯蔵装置が必要です。従いまして、このような再生可能エネルギー、蓄電池もたくさん導入しながら、それぞれのエネルギー源の特性を踏まえて、エネルギーセキュリティー、地球環境性、経済性、安全性を考慮したエネルギーベストミックスを探っていくのが良いのではないでしょうか。