新東京大学大学院領域創成科学研究科
深宇宙探査学教育研究拠点の創設
第5回東京大学大学院新領域創成科学研究科定例記者会見

発表者 

鈴木宏二郎  (大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 教授/ 深宇宙探査における理工連携ネットワーク 代表者)

発表概要

 新領域創成科学研究科では、我が国を月・惑星探査における世界のトップランナーに押し上げ、技術立国としてのブランドを守る人材育成を目的とし、深宇宙探査学の教育研究拠点を創設すべく、活動を開始した。理工連携、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携による現場教育を特長としている。

発表内容

 新領域創成科学研究科では、我が国を月・惑星探査における世界のトップランナーに押し上げ、技術立国としてのブランドを守る人材育成を目的とした深宇宙()探査学を提唱し、活動を開始した。その特長は
 ・理工連携による低コストでありながらサイエンスとして優れた探査ミッション実現
 ・JAXAとの連携による宇宙探査最前線での現場教育
である。2年以内に研究科内で深宇宙探査学の教育プログラムを立ち上げ、10年以内に月・惑星探査の最前線に立つ博士(科学)を輩出し、15年後には独自の深宇宙探査機を開発飛行させることを目指している。
 日本の宇宙探査衛星プロジェクトは、「はやぶさ」に代表される工学的チャレンジをする工学衛星と、「あかつき」のような理学探査を第一目標とした理学衛星の2本立てで進められてきた。フライバイ()や惑星周回によるリモート観測が主体であった従来の惑星探査においては、過去の実績から技術的現実性がある程度予測可能であるため、このような分業は効率的であった。しかし、着陸や試料採取を行う探査が主流となる今後の惑星探査においては、技術的実現性の限界をどこに想定するかでサイエンスとしての価値が大きく上下してしまうため、理学と工学の分業はリスクが高い。例えば、着陸地点や取得対象の岩石試料の微妙なタイプの違いによって工学的要求のハードルの高さが大きく変わりうる。そのため、今後の惑星探査では、理学と工学の密接な連携がこれまでと比べものにならないほど重要になってくる。今回創設する「理工連携」教育では、理学と工学が探査ミッション立案の段階から密接に連携を組むことにより、サイエンスとしての価値と工学的現実性のバランスを考えることで戦略的な探査計画を立てることが可能となる。
 人材育成には、宇宙探査最前線での現場教育が必須である。新領域創成科学研究科は、JAXA宇宙科学研究所と深宇宙探査に関する連携講座を設立することで合意しており、近日中に協定が締結される予定である。新領域創成科学研究科では、高エネルギーレーザー銃()や極超音速風洞()などのユニークな大型実験設備を有しており、それらを活用した、アストロバイオロジー()、天体衝突現象解明、大気圏突入技術開発といった研究が得意分野となっている。その研究成果を利用して、レーザーを用いた惑星表面分析器を搭載した超小型着陸探査機()を独自に開発し、「生命の起源と宇宙」をメインテーマとした一貫性のある探査シナリオ(戦略)に組み込むことなどは実現性が高いと期待される。同時に、それは開発の現場でリーダーとなれる人材を育成する場を提供することにもなっている。

用語解説

深宇宙:
深宇宙(Deep Space)は地球周回軌道より遠くの宇宙(月や惑星を含む)を一般的に呼ぶことばとして宇宙工学や惑星探査の分野でよく使われている。例えば、NASAジェット推進研究所(JPL)が月・惑星探査機と通信を行うために運営している大型アンテナはDeep Space Network(深宇宙ネットワーク)と呼ばれていることは典型例。
フライバイ: 
探査機が目標の天体に近づいた際、ロケット噴射等を用いてブレーキをかけて天体まわりの周回軌道に探査機を入れた後、上空から観測を行うのではなく、探査機が目標天体を通り過ぎる際に観測を行う方法。ロケット等の軌道投入用装置を探査機に搭載する必要がないため、システムが簡単化され、かつ低コスト化となるが、探査可能時間が短いため、周回軌道からの観測に比べて得られる情報は限られたものとなる。
高エネルギーレーザー銃:
高エネルギーレーザー光の照射により発生したプラズマ蒸気のジェットを推進力として弾丸を発射し、秒速数kmもの超高速天体衝突を実験室内で模擬する装置。土星の衛星タイタンの窒素大気の起源を解明することに世界で初めて成功している。
極超音速風洞:
音の速さの5倍以上の超高速気流を作り、大気圏突入などの超高速飛行環境を模擬する実験装置。新領域創成科学研究科には大学の教育研究設備としては世界トップクラスのマッハ7(秒速約1.2km)の極超音速風洞があり、学内外の様々な研究プロジェクトに供されている。
アストロバイオロジー:
宇宙における生命の普遍性を探る学問。地球上での生命の起源や地球外での生命の存在可能性を宇宙科学の視点から解明しようとする研究などが含まれる。提唱されて10年程度の比較的若い分野であるが、宇宙探査技術の急速な進歩を受け、天体衝突と生命の関係に関する研究など、近年、めざましい展開を遂げつつある。
超小型着陸探査機:
1点だけの着陸機による精密観測では、惑星のような複雑システムの全体像を把握することは難しい。新領域創成科学研究科では多数の小型着陸探査機を惑星表面に展開してその全体像を把握する分散探査を提唱し、その実現に向けた研究を始めている。

問い合わせ先:

大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻
教授 鈴木宏二郎
 TEL/FAX: 04-7136-3828
 E-mail: kjsuzuki@k.u-tokyo.ac.jp

添付資料


深宇宙探査学の概念図

 




▲このページの先頭へ
All Rights Reserved, Copyright(C), Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo