新東京大学大学院領域創成科学研究科
非金属軽元素を多く含む初めての準結晶を発見
第4回東京大学大学院新領域創成科学研究科定例記者会見

発表者 

木村 薫 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻 教授)

共同研究者 

宮崎 吉宣 博士課程3年 学術振興会特別研究員(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
岡田 純平 助教 (宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)
阿部 英司 准教授(東京大学大学院工学系研究科)
横山 嘉彦 准教授(東北大学金属材料研究所)

発表概要

 ホウ素という非金属軽元素を多く含む初めての準結晶注1)を発見しました。高融点のホウ素系に特殊な液体急冷単ロール装置を用いたことで準結晶が生成し、元素の違いを見ることができる特殊な電子顕微鏡を使って構造解析に成功しました。

発表内容

 ホウ素系正10角形準結晶を発見しました。準結晶は、結晶やアモルファスと並ぶ固体構造の概念です。これまでに見つかっている準結晶の多くは、金属元素を主体とした金属間化合物です。非金属元素を多く含むものはタンタル−テルル系正12角形相が唯一ですが、今回はホウ素−チタン−ルテニウム系(ホウ素を約40%含む)の組成の試料の中から見つかっており、軽元素の非金属元素を多く含む初めての準結晶です。ボロンは周期性と共存できない正20面体や正5角形クラスターを構造単位としているため準結晶の生成が期待でき、我々は20年前から探索してきましたが、これまで見つかりませんでした。準結晶は、熱力学的な安定相としても存在しますが、液体からの急冷による準安定相としてより多く存在します。ところが、ホウ素系は融点が高く、通常の液体急冷法が使えません。今回は、東北大学金属材料研究所のアーク炉を使った特殊な液体急冷単ロール装置(注2)を用いて、高融点のホウ素系を液体から急冷した試料中で発見しました。構造の決定には、東京大学大学院工学系研究科の元素の違いを見ることができる特殊な電子顕微鏡を使っています。ホウ素は強い共有結合を作る元素ですから、従来の金属結合を主とした準結晶と異なり、どの様な性質を持つかは大変興味深いことです。

発表雑誌

Journal of the Physical Society of JapanのVol.79, No.7 (2010年7月12日発行/7月号)に、Letter論文として掲載されることが決定しました。また、 編集委員会が推薦する注目論文(Papers of Editors' Choice)に選ばれました。

問い合わせ先

木村 薫 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻 教授)
電話番号: 04-7136-5456
メールアドレス: bkimura@k.u-tokyo.ac.jp

用語解説

(注1)準結晶
結晶、アモルファスと並ぶ固体構造の一分類です。ギリシャ時代以来二十数年前までは、原子が規則的つまり周期的に配列した結晶と不規則に並んだアモルファスの二分類しかありませんでした。ところが、原子が規則的ではあるが周期を持たずに並んだ構造が発見され、準結晶と名付けられました。その後、主に金属間化合物で多く見つかってきましたが、最近は高分子や酸化物でも見つかり、固体構造の普遍的な概念になりつつあります。
(注2)アーク炉を使った特殊な液体急冷単ロール装置
通常の液体急冷単ロール装置は、石英ノズルの中で試料を溶かし、不活性ガスで圧力をかけてノズルから融液を噴射し、高速で回転している銅ロールに吹き付けることにより急冷する装置です。この場合、石英が軟化する1200℃程度までの融点の物質でないと急冷できません。今回は、石英ノズルの代わりに、水冷銅ハース上でアーク炉で溶かした後に、開閉式のハース下部を開いて融液を噴射できる特殊な装置を使用しました。アーク炉の場合、融点が3000℃でも溶かすことができます。
(注3)電子線回折パターン
電子線を固体に照射すると、固体構造の秩序に応じて、特定の方向に強く散乱(回折)されます。この散乱された電子線が一枚の平面に当たった位置に、強度に応じた大きさの白いスポットが現れたものです。このパターンが10回対称性を持っているということは、固体構造が10回または5回対称性を持っていることを意味します。

添付資料

図右図: 今回、ホウ素−チタン−ルテニウム系において発見された10回対称を持つ電子線回折パターン注3)。無理数である黄金比τの相似比も見られる。


下図: 正10角形準結晶の典型的なモデルであるペンローズ・パターン。下図は5回対称性をもっています。

図




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