新東京大学大学院領域創成科学研究科
留学生30万人計画実現に向けて:サステイナビリティ学教育プログラムの取り組み
第3回東京大学大学院新領域創成科学研究科定例記者会見

発表者 

吉田恒昭 教授
(大学院新領域創成科学研究科  サステイナビリティ学教育プログラム運営委員会委員長)

発表概要

 学融合を目指す新領域創成科学研究科環境学系5専攻の横断的サポートを得て、今世紀最大の人類共有の課題である“サステイナビリティ”に取り組む教育プログラムの“売り”は、教育研究の全てを英語で行いつつ、『留学生30万人計画』に示されている5つの骨子を先見的に実践し、この国境を超える課題に挑戦していることです。

発表内容

 “サステイナビリティ学”の定義に関しては、さまざま議論を喚起しますが、私たちは「地球システム、社会システム、人間システムの3つのシステム、およびその相互関係に破綻をもたらしつつあるメカニズムを解明し、持続可能性という観点から各システムを再構築し、相互関係を修復する方策とビジョンの提示を目指すための基礎となる学術であって、最終的には持続可能な社会の実現を目指すものである」と考えています。
 この認識に立って、サステイナビリティ学教育プログラムは2007年10月に初めて修士課程学生の受け入れを開始し、現在27名(内19は留学生)が在籍しています。さらに今年(2009年)10月からは博士課程学生の入学が始まり、新たな展開を始めました。このプログラムのユニークさは@環境学系に属する5専攻の共同運営方式をとっていること、A英語が公式言語で、入試・講義・論文などを全て英語で行っていること、Bさまざまな留学生受け入れのための環境整備を行っていること、などです。
 思い起こせば、東京大学が開学された約130年前(1877年)には、教授の総数は66名で、うち28名が著名なベルツやモースを含む外国人教授でした。したがって、明治初期の東京大学では英語による講義が半分近く占めていたと思われます。今に残る当時の学生のノートや卒業論文が英語で記載されていることからもそれが窺えます。あれから百数十年を経て、東大キャンパスでは再びかなりの講義を英語で提供するようになってきました。日本人教員による英語講義を留学生(学生総数の約8%)と日本学生が共に受講していることになります。ちなみに外国籍教員の割合はまだ多くなく約2%程度です。明治初期の東大では、日本人学生が西欧近代科学の迅速な吸収のために直接外国人教員から必死に英語で学んだのですが、現在はそれとは全く異なり、過去100年有余で日本が蓄積発展させてきた学術成果・経験を世界へ発信するために地球語としての英語で講義を行っていると言えます。講義の内容の多くは普遍的でグローバルな共通課題解決に資する学問で、教える側も学ぶ側も共通の言語で議論することに大きな意味があると言えます。もともと“ユニバーシティ”はその語源どおり“ユニバーサル”があるべき姿の一つなのでしょう。
 一方、政府閣僚懇談会は2008年7月に「留学生30万人計画」の骨子を了承しました。これは日本が「グローバル戦略」を展開する一環として、2020年を目途に現在の約3倍の30万人の留学生受入れを目指すものです。主な骨子は5項目で、以下に項目ごとに本教育プログラムの先見的対応をご紹介します。サステイナビリティ学教育プログラムの背景・目的・内容・運営などの詳細については別途配布資料をご参照ください。

  1. 日本留学への誘い 日本留学の動機付けとワンストップサービスの展開

 本教育プログラムでは研究科、国際連携室、国際支援交流室、本プログラムなどの英文ホームページにて積極的に留学情報を発信しております。募集対象国に制限は設けていません。現在のサステイナビリティ学修士課程在籍19名の留学生の多くはアジア出身ですが、アフリカ1名、中南米3名、東欧1名も含まれています。

  1. 入試・入学・入国の入り口の改善

 文科省の奨学生は一般的に先ず研究生として受け入れ、日本語などを学習してから正規学生として入学しておりますが、この方式ですと優秀な志願者は直接正規生への入学が認められる他の先進諸国の大学に行ってしまう危惧があります。本プログラムでは直接正規課程への入学しか認めないことにしています。志願者は通常の入学願書書類に加えて課題エッセイの提出を求められています。今後は手続きの簡素化のためにメールによる申請受け付け、入学検定料のカード支払などを導入する予定です。入学は10月と4月のどちらでも可能です。

  1. 大学等のグローバル化の推進

 柏キャンパス国際化構想に沿って、本教育プログラムでは約40の英語科目を提供しています。これらの英語科目以外にも他の専攻でも英語科目の提供をしており、学生は選択科目として受講できます。オフィシャル(公式)言語は英語とし案内文書、募集要項、入学試験、ホームページ、学生生活マニュアルなどはすべて英語が主で日本語を併記しています。

  1. 受け入れ環境づくり

 本プログラムでは柏IO(インターナショナル・オフィス)推進室や国際交流支援室と連携してメンター(学生の助言者)の配置、日本語クラスの無償提供、住居手配支援、ビザ取得支援など支援体制の充実に努めています。

  1. 卒業・終了後の社会の受け入れの推進

 本プログラムではまだ修了生を出しておりませんが、他の専攻の卒業留学生と同様に想定される進路は、先ずは母国における大学・研究機関、そして政府行政官、国際機関、国際NGO、さらに日本の研究機関や企業などへの就職を期待しています。このためのインターンも奨励しています。将来的には本教育プログラムを発展させアジアのサステイナビリティ学の拠点となるべく、修了生のアルミニ(同窓会)を組織し、ICTを活用したネットワークを構築し、研究交流、共同研究、交換教員制度などを設けて拠点校としての役割を果たすことを目指しています。

問い合わせ先

新領域創成科学研究科
教授 吉田恒昭(サステイナビリティ学教育プログラム運営委員会委員長)
Tel:04−7136−4874
E-mail: yoshida-tsuneaki@k.u-tokyo.ac.jp




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