新東京大学大学院領域創成科学研究科
新領域創成科学研究科附属バイオイメージングセンターの設置
第3回東京大学大学院新領域創成科学研究科定例記者会見

発表者 

山本一夫 教授
(大学院新領域創成科学研究科附属バイオイメージングセンター長
東原和成
(大学院新領域創成科学研究科)

発表概要

付属施設として「バイオイメージングセンター」を設置しました。このセンターの概要を紹介致します。また、最近のトピックスとして、「癌患部の匂い物質の発見」について報告します。

発表内容

 見えないものを可視化することはさまざまな研究分野において重要なテーマであり、科学の領域でしばしば大きなブレークスルーとなってきました。とりわけ生命科学の分野においては、分子・原子のナノレベルで起こる反応を一つの切り口として、ミクロな細胞の動き、そしてマクロな組織・個体の統合的なシステムを理解することが求められています。「バイオイメージング」とは、これら膨大な分子等の動きを可視化によって捉え、延いては生命システムを理解しようという試みです。複雑な生命現象を理解するためには、極めて複雑な事象が絡みあった膨大な情報の中から、本質となる情報を抽出することも必要です。本研究科には、分子、細胞、組織・個体といった多様な研究対象を扱うバイオの研究者に加え、数理的手法を用いて膨大な情報を処理する専門家、さらには生命現象を捉えるための最先端デバイスを開発する教員を、数多く揃えています。これらパイオニアの総力を結集させ、バイオイメージングセンターを立ち上げました。
 また、本センターの東原准教授らによる最近のトピックスとして、「皮膚に浸潤し潰瘍を形成する癌患部から発する悪臭の原因となる匂い物質」の研究について紹介致します。疾病に匂いがあることは古くから知られています。なかでも、皮膚に浸潤し潰瘍を形成する進行癌の局所は、独特の悪臭を伴い、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を著しく低下させる要因の一つとなっています。われわれは、乳癌および頭頸部癌の患部から匂いを採取し、匂い嗅ぎガスクロマトグラフ質量分析計を利用して、この悪臭の原因物質を同定しました。その結果、悪臭の原因は、キャベツやブロッコリーなどの野菜の過熱臭、微生物の代謝産物として知られるジメチルトリスルフィドであることがわかりました。癌に代表される疾病の診断法は、未だ多くの問題点を抱えていますが、匂いという従来とは異なる視点からのアプローチ、そしてそれらを標的としたバイオイメージングが、非侵襲的で簡便な疾病の早期診断法に繋がる可能性を示唆する研究結果です。

発表雑誌

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(日本農芸化学会発行英文雑誌)に発表予定
著者:白須未香(東大新領域)、長井俊治、落合淳志、林隆一(国立がんセンター東病院)、東原和成(東大新領域)

問い合わせ先

大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻
教授 山本一夫
TEL: 04-7136-3614, e-mail: yamamoto@k.u-tokyo.ac.jp

大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻
准教授 東原和成
TEL: 04-7136-3624, e-mail: touhara@k.u-tokyo.ac. jp

用語解説

バイオイメージング
細胞、組織、個体における生体内のミクロな分子を可視化し画像として表現する手法で、特に時間的、空間的に変化する細胞・組織内での位置情報を明らかにすることは、生命現象の理解に大きく役立つ。基礎研究ばかりでなく、医療分野においても疾病の診断などに欠かすことができない技術であり、X線、NMR、PETなどの機器類の開発や、腫瘍マーカーなどを標的としたプローブの開発が急速に進んでいる。



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