メダカゲノムの解読:
日本生まれの実験動物から脊椎動物進化の道筋が見えてきた

2007年6月4日

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
国立大学法人 東京大学

メダカゲノムの解読:
日本生まれの実験動物から脊椎動物進化の道筋が見えてきた

 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所と国立大学法人 東京大学等は共同プロジェクトでニホンメダカ(Oryzias latipes, 以下メダカ)のゲノム解読に成功しました。 この共同プロジェクトは文部科学省 科学研究費 特定領域研究「ゲノム」の支援をえて実施されました。この成果は、6月7日発行の英国科学誌Nature(ネイチャー)誌に掲載予定で、先行して6月7日午前2時(日本時間)にオンライン版で公開されます。

 本研究では約7 億の塩基配列を決定し、その中に20,141 個の遺伝子を見つけました。メダカゲノムはヒトゲノムの4 分の1 の大きさですが、ヒト遺伝子組成と非常によく似ています。ヒトの遺伝病に関連するメダカの遺伝子も数多く見つかました。現在メダカでは発生・成長に異常を示す突然変異体が多数単離されています。この中にはヒトの疾患モデルとなるものが含む多く含まれています。今回のゲノム解読により、メダカを用いた基礎生命科学が飛躍的に発展するものと期待されます。

 魚類はヒトを含む脊椎動物の最下等に位置するので進化の観点からも重要です。既に概要解読が報告されている他の魚類のミドリフグ、トラフグに比べメダカゲノム解読は完成度が極めて高く、全染色体の約90%が解明されました。この高い完成度が脊椎動物のゲノム進化について詳細な分析を可能にし、過去約4 億年にわたる魚類ゲノムの大規模な再編成の様子が明らかになりました。特に、魚類祖先で起こったゲノムDNA 全体が倍加される現象のあと比較的短い期間に大規模再編成が頻繁に起こり、その後メダカでは再編成が抑制されるということがわかりました。この発見は今後のゲノム進化の研究におけるメダカの大きな役割を示しています。

 メダカは日本をはじめとする東アジアに生息しますが、性質が異なる様々な地域集団が存在します。今回は主として南日本由来系統のゲノム解読を行ったのですが、北日本由来系統とDNA 塩基配列を比較したところ、約1600 万個の違い(1 塩基多型(SNP))が見つかり、DNA 塩基全体の3.4%をも占めることがわかりました。この率は、今まで知られている脊椎動物種の中では最も高いものですが、これら北と南日本由来のメダカは交配可能です。詳しく調べると、ある生殖や性決定に関連する遺伝子群の進化速度は緩やかなことが明らかになりました。このことが交配可能に関連していると考えられます。このように、メダカは個別の生物種として分かれる前段階の遺伝的変化を研究するための貴重な材料として今後期待されます。

 また、本プロジェクトを遂行してゆくにあたり、バイオインフォマティクスの新しい手法(ゲノムアセンブラ、転写開始点情報による遺伝子予測法、ゲノム進化推定法)を開発しました。これらの手法は国内で進行中の他のゲノムプロジェクトにも応用されています。メダカゲノム情報は以下のデータベースから公開しています。

http://medaka.utgenome.org/
http://dolphin.lab.nig.ac.jp/medaka/
http://www.ensembl.org/Oryzias_latipes/

なお、メダカ系統などメダカリソースは次のナショナルバイオリソースプロジェク トから入手可能です。
http://www.shigen.nig.ac.jp/medaka/

問合せ先:

研究推進責任者
 
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 所長
小原 雄治(こはらゆうじ)
(ゲノム配列解読) メール:ykohara電話:055-981-6700
東京大学大学院理学系研究科 教授
武田 洋幸(たけだひろゆき)
(メダカゲノム生物学) メール:htakeda 電話:03-5841-4431
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授
森下 真一(もりしたしんいち)
(コンピュータ解析)  メール: 電話:04-7136-3985

別紙参考 用語解説

 

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