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メダカ野生集団の遺伝的多型を利用したDNA修復機能の解明

東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士課程大学院生の五十嵐健人、尾田正二准教授、三谷啓志教授らのグループは、放射線などによって生じる2本鎖DNA切断を修復するタンパク質の一つであるNBS1に着目して、ヒトとメダカの集団に共通して存在するアミノ酸多型の機能差を明らかにしました。

NBS1の変異や多型がヒトの疾患と関連することが知られていましたが、集団内に存在するNBS1の多型性が2本鎖DNA切断修復にどのような影響を与え、疾患につながるのか、その詳細な因果関係は明らかにされていません。メダカは野生集団間に大きな遺伝的多型をもち、その中にはヒト集団と共通するものが多数あります。今回三谷教授らのグループは野生から採取され系統維持されてきたメダカ集団を調べて、ヒトにおいてがんの罹患リスクの上昇と関連するNBS1 Q185残基の多型(Q185E)と対応するメダカNbs1 Q170残基の変異(Q170H)を発見しました。そして、この変異型Nbs1を働くようにしたメダカの培養細胞では2本鎖DNA切断修復が遅延することを示すとともに、NBS1の損傷への集積動態や他の修復タンパク質の挙動もこの変異で変化することを明らかにしました。

Q170H 変異をもつメダカはDNA損傷修復する能力が低下し不利であることが予想されますが、研究グループはさらに、Q170H 変異をもつメダカが多数を占める野生集団が局所的に広がっていることを発見しました。個体数が激減した際にDNA損傷修復する能力が低い個体が生存し、その子孫が再び繁殖することにより、その地域で広がった可能性や、Q170H変異をもつことで補償的な修復経路が活性化されている可能性等が考えられます。

ヒト集団では疾患リスクを上昇させる遺伝子多型が存在している例が多数知られています。メダカをモデルとして野生集団の多型性のさらなる解析と実験的機能検証により、遺伝子の機能的多様性が維持される機構を解明し、集団内に疾患リスクの高い遺伝子が維持される理由を解明する突破口にもなり得ると考えられます。

本研究は京都大学放射線生物研究センター、北里大学医学部との共同研究により、東京大学大学院新領域創成科学研究科において系統維持されている野生由来のメダカ集団群、およびNBRPより提供された野生集団由来メダカを解析して得られた成果です。

 

 

発表者:
三谷啓志(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻教授)
尾田正二(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻准教授)
五十嵐健人(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻博士後期課程)

【発表雑誌】
雑誌名:「PLOS ONE」(オンライン版公開:2017年1月20日)
論文タイトル:“An approach to elucidate NBS1 function in DNA repair using frequent nonsynonymous polymorphism in wild medaka (Oryzias latipes) populations.”
著者:Kento Igarashi, Junya Kobayashi, Takafumi Katsumura, Tomomi Watanabe-Asaka, Shoji Oda, Hiroki Oota and Hiroshi Mitani*
DOI番号: 10.1371/journal.pone.0170006
アブストラクトURL: http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0170006

問い合わせ先
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻
教授 三谷啓志
Tel: 04-7136-3670
E-mail: mitani[at]k.u-tokyo.ac.jp